幽霊電車

幽霊(麗)
松本沙希
田中香織
佐藤夏美
先生


電車の音
暗転のままアナウンスが始まる

アナウンス:まもなく三番線に電車が参ります。危険ですので白線の内側までお下がりください。

明転

真ん中に幽霊っぽい女の子が座っている
沙希、香織は少し離れた位置に立っている。

沙希:だから、都市伝説があるんだって。しかも全部本当だって噂なんだよ。
香織:都市伝説って……。あんた何歳よ。高校生にもなってそんなもの信じてるわけ。
沙希:信じてるとかじゃなくて、本当なんだってば。例えば、ここ、満員電車の都市伝説もあるんだよ。
香織:へー。
沙希:ちょっと、真面目にきいてよね。その都市伝説はね、電車に乗っている幽霊の話なの。
香織:ふーん、幽霊も公共交通機関使うんだね。
沙希:こんな満員電車の中、もちろん座席は全部埋まってるわけじゃない。でもね、なぜかたまに、座れるのに誰も座らない座席があるんだって。
香織:たまたまでしょ。
沙希:なぜ誰も座らない、いや座れないのか、実はその席には幽霊がすわっているからなんだって。
香織:そーなんだ。
沙希:その席に座ってしまった人は幽霊の怒りを買って祟られるんだって。ヤバくない?超怖くない?
香織:そんなの絶対デマでしょ。
沙希:そんなことないよ。だって満員電車なのに一つだけ席が空いてるって明らかに不自然でしょ。
香織:それはね、サポリボシー効果っていう現象なんだよ。
沙希:さぽり……。何?
香織:ぎゅうぎゅうの満員電車の中、突如空いた空席。でも自分が一人だけ座るのは罪悪感がある。そういった潜在的な罪悪感って、誰の心にもあるものなんだって。その罪悪感が共鳴した結果、一つの空席に誰も座らないという現象が起こる。それがサポリボシー効果。
沙希:え、そうだったの。すごい香織、博識だね。あったまいいー。
香織:まあね。
沙希:さっすが香織だよー。
香織:そうでしょ。
沙希:うんうん。



香織:まあ嘘だけどね。
沙希:嘘なの!?
香織:嘘だよ。
沙希:ええ、一瞬本気にしちゃったじゃん。
香織:沙希って騙されやすいよね。
沙希:いやいや、今のは誰だって騙されるってー。
香織:……そんなことないと思うけど。
沙希:え、じゃあその、なんとか効果っていうのが嘘なら、やっぱり都市伝説は実在するんだね。
香織:なんでそういう話になるかな。
沙希:だって空席がある理由を科学的に証明できないんでしょ?なら都市伝説がないって証明にもならないよね。
香織:チッ、沙希のくせに小癪なことを。
沙希:え、ちょっと、今沙希のくせにって言ったよね。それ私のこと馬鹿にしてない?
香織:え、してるよ?だって沙希馬鹿じゃん。
沙希:こんなに正面から堂々と馬鹿にされる人って世界で私ぐらいじゃないかな。
香織:そんなことないんじゃない? ほら、カバとかよく馬鹿にされるじゃん。ノロいって。
沙希:人間の話をしてるんだけど!? 私はカバと同列なの!?
香織:何言ってんの、沙希とカバが同列なんて、カバに失礼でしょ。
沙希:馬鹿にするなー! っていうか私より……カバの方が立場上なの!? あとカバと馬鹿ってなんか似てるね、言いにくい。
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