ロアー・ダーク
Roar From The Dark
「ロアー・ダーク 〜Roar From The Dark〜」


  舞台は我々の現実とは少し異なる世界。
  登場人物たちが存在する国は、大国列強と肩を並べるために、百年前の敗戦を教訓に作られ不戦を掲げた平和憲法を破棄し、世界各地で頻発する紛争において同盟国の支援として軍隊を派遣する体制を整えている最中である。その一環として五年前、国は、既存の自衛組織の中から独立させた軍事用組織「特別国家支援隊(特支隊)」を発足した。国は国民の反発を招かぬようマスメディアを操作しながら、この特支隊の海外戦闘地域への派遣を進めていた。
  しかし、国の方針に異を唱える人々が結束し抗議活動を始める。若者を中心とした抗議団体「ロアーズ」がデモ活動を展開。次第に国は、国民の言動にも規制をかけ、抗議運動を行う組織や人々の弾圧を行っていた。

【登場人物】
シード(男) ロアーズのリーダーと間違えられて捕縛された売れないミュージシャン。
カレン(女) 特支隊の隊員。カイトの双子の姉。
カイト(男) 特支隊の隊員。カレンの双子の弟。
ゴトウ(男) 特支隊の大佐。カレンとカイトの上官であり養父。
イトイ(男) ゴトウの部下。
セナ (男) ゴトウの部下。
クスノキ(男)ノンフィクション作家。ロアーズのデモを取材中に一斉捕縛に巻き込まれた。
ナツキ(女) ロアーズのメンバー。
ユノ     ロアーズのメンバー。
サナエ(女) 息子が特支隊として海外派遣されている。詩を心の拠り所にしている。
マツバ(男) サナエの夫。サナエとともに、ロアーズのデモに参加していた。
ハク     ロアーズのリーダー。



◆シーン0:闇より

  暗闇に足音が聞こえる。
  だんだん力強くなり、数が増える足音。
  真っ暗な地の底から鳴るそれは、行軍の地響きのようでもある。
  大きくなる、大きくなる、足音。
  近づいてくる、近づいてくる、行軍。
  真っ暗闇が迫ってくる。
  ひたすら真っ暗な闇の底が口を開け、世界を飲み込んでゆく。続く続く足音。響く響く行軍。



◆シーン1:咆哮(モノローグ)

  シードとカレンが立っている。二人が感じているものは同じだが、二人は別々の空間にいる。

シード (ギターをがむしゃらに掻き鳴らす)迫ってくる! 迫ってくる!
カレン 真っ暗な闇。漆黒の闇。
シード 俺は走る! 闇に向かって走る! 走る!
カレン 私は走る。走る。暗闇が追いかけてくる。
シード 俺は叫ぶ! こいつを掻き鳴らして叫ぶ! 俺の声は闇を切り裂く!
カレン 私は叫ぶ。悲鳴。悪夢に苛まれる悲鳴。
シード (ギターをがむしゃらに掻き鳴らす)叫びたいんだ! 叫びたいんだ!
カレン 私は叫ぶ。何かを。何を。
シード なんでもいい! 青い空! 灰色の街! 腐った風! 空虚! 希望!
カレン 青い空。灰色の街。閉塞感。轟く銃声。消える命。命。命。
シード 叫びたいんだ! 叫びたいんだ! ただひたすらに!
カレン 何を。
シード 何かを! 叫べ!
二人  叫べ!

  二人の独白の後ろから足音が迫ってくる。行軍のような足音。



◆ シーン2:地底の牢

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