バック・トゥ・ザ・ムービー

(ばっく・とぅ・ざ・むーびー)
初演日:0/0 作者:柴山侑豊
バック・トゥ・ザ・ムービー  柴山侑豊


・時枝ゆき 21歳。映画オタクの女子大生。映画の趣味があまりよくない。友達いない。ヒッキー体質。シンディに憧れている。
・シンディ(神童) 26歳くらい。映画「Cyndi2」の主人公。クールで孤独な女殺し屋。完璧な仕事ぶりに定評がある。
・ユウ(宗田優) 25歳くらい。「Cyndi2」の登場人物。フリーの殺し屋。殺し屋とは思えないほど人当たりのいい好青年。シンディと組んで行動しようとする。
・白石千絵 21歳。時松あいのほぼ唯一の親友。映画好き。親切な性格で友達も多い。ゆきには少しきつく当たることもあるが、心配もしている。
・冨樫 45歳くらい。あいの行きつけの映画館、「浪漫座」に突如現れた受付人。黒いスーツに黒いハットの怪しい男。映画の神様みたいなもの。
・江戸樹 41歳。「Cyndi2」を作った映画監督。この年になるまで鳴かず飛ばず。ヘタレ。自分より弱いと思ったものにはでかい態度。
・西原邦弘 36歳くらい。「Cyndi2」の登場人物。ヤクザ。シンディとユウに依頼を持ち掛ける。ユウとは過去の一件から因縁がある。
・エキストラA 「Cyndi」シリーズにちょこちょこでてくるエキストラ。
・エキストラB 右に同じ。
・エキストラC 右に同じ。

☆予想ランタイム90〜100分。
☆エキストラ役は増員可能。
☆舞台は様々なシチュエーションに対応できるように、素舞台に近いものになると思われる。


シーン1 映画へGO!?

 幕が上がるとそこは時枝ゆきの部屋。家のテレビで、いつものように映画を見ているゆき。そこにピンポーンとインターホンの音が鳴る。玄関に出るゆき。友達の千絵をつれてくる。

ゆき   急にごめんね。
千絵   なんとなく予想はついてるけどさ。
ゆき   え、わかる?
千絵   どうせまた私を映画に連れて行くんでしょ?あんたの悪趣味な映画鑑賞に私が付き合えってことでしょ?
ゆき   すごい。さすがわが友だ、ただ悪趣味だというのは解せない。
千絵   あんたさぁ、もっと今時の女の子が見るような映画観なって。「陽だまりの彼女」みたいなああいうキュンとするやつ。
ゆき   あんな甘ったるいのには全くそそられないの。あれは松潤が彼氏だったらどうイチャコラしたいかを妄想して楽しむためだけの映画。
千絵   ゆき・・・あんたほんとに一生彼氏できないよ?
ゆき   もうあきらめてるわよ。現実の男なんてつまんないのばっかだもん。
千絵   あんたねぇ。
ゆき   もっとこう、さ、「ラストアクションヒーロー」のジャック・スレイターとか、「レオン」のレオンみたいな人がいいのよ。ああー、ジャックの太い腕で抱かれたい!レオンに後ろから銃で狙われたい!
千絵   シュワルツェネッガーもジャン・レノも結婚してるし。
ゆき   もー、ほんとに夢ないよね千絵は。もっとさ、映画の中に入りたい!とか映画の登場人物に合いたい!とかこのヒロインになりたい!みたいなそういう夢はないわけ?
千絵   あんたは夢あるっていうより現実逃避してるだけじゃん。
ゆき   うおお、グサッとくるヒトコト・・・
千絵   ゆき、あんたね、もっとおしゃれとかに気を遣って、ちゃんと女子大生しなよ。顔だって全然悪くないし、磨けば光る子なんだからさ。
ゆき   めんどくさいじゃん。大体なんで私が頑張らなきゃいけないわけ。映画だって別に私の趣味ジャン?私が見たいのを見てるだけなのにさ、なーんで変な奴って思われなきゃいけないわけ?私が悪いんじゃないこんな私を理解しない世間が悪いいいいい。
千絵   友達に超おすすめの映画があるって言っておいて「ムカデ人間2」のDVDを押し付けておいてまだそんなこと言える?(DVDを出す)。
ゆき   なんで!面白いでしょ!
千絵   なわけ!これ見た後しばらくご飯食べられなかったんだからね。あの主役の気持ち悪―い男が夢に出てくるし。こう「シシシッ」って笑ってくるのよ、怖いでしょ?
ゆき   そ、それはごめん。
千絵   まぁ、べつにいいけどさ。それで、何の映画観るわけ?
ゆき   あぁ、あのね(DVDをもってくる)これ。
千絵   んー。「Cyndi」?なにこれ聞いたことない。
ゆき   まぁB級だしあんまり有名じゃないから。
千絵   でもなんでこれを?
ゆき   私最近これにドはまりしててさー。ヒロインがすっごいかっこいいの。
千絵   アクション映画?
ゆき   まぁアクションバイオレンスSFコメディヒューマンドラマ殺し屋映画ってかんじ?
千絵   どれよ。
ゆき   SFの要素はないかな。いや、ヒューマンドラマでもないかな。んでさ、明日コレの2作目が公開されるの!
千絵   んでその2作目を私に一緒に見に行ってほしいらまず1作目を見て予習しろと。そういう魂胆なんでしょ?
ゆき   そういうことです。
千絵   だと思ったよ。でも、この「Cyndi」て映画が公開される―みたいな話聞いたことないけど。うちの近くのシネコンにもなかったきがするし、テレビCMもネットにも乗ってなかった気がする。
ゆき   だからあんまり有名じゃないんだって。知る人ぞ知るB級カルトムービーって感じの。私もびっくりしたよ。知らない間に2作目が作られて、もう明日封切なんだから。
千絵   へぇ。面白いの?それ。
ゆき   まぁまぁまずは見てみてよ。

 ゆき、千絵を座らせる。DVDを起動するようなマイム。アップテンポなBGMが流れ、照明の雰囲気
も変わる。

ゆき   主人公はクールな女殺し屋シンディ。彼女はその完璧かつ華麗な仕事ぶりから裏社会のドンを筆頭に様々な依頼を受けるのだ。拳銃、機関銃、ナイフ、どんな武器でもお手の物!例えどれ程危険な依頼でも彼女は完璧にこなした!

 エキストラA、B、Cが登場。銃やナイフと言った武器を持っている。

A    くそ!ヤツはどこだ!
B    そう遠くへは行ってないはずだ!探せ!見つけ次第射殺せよ!
C    後ろをとられるな!暗闇はヤツの特得意なフィールドだ!

 シンディを警戒する三人。と、そこに覆面で顔を隠し黒いスーツとロングコートに身をまとったシン
ディが忍び寄る。シンディはAのもとに近寄り、拳銃で撃つ。

A    ぐわあああああああああ!!!!
B    大丈夫か!
C    ちくしょう!シンディ、ぶっ殺してやるからな!!

 C、拳銃を乱射する。しかし暗闇に紛れたシンディに照準が合わず全く当たらない。Cの背後をとるシ
ンディ。ナイフでCの首をカッ切る。

C    ぎゃあああああああああ!!!!
B    なんだと!?くそ、どこだ!出てこい!

 恐怖のあまり、ワーワーと喚いているB。するとその口の中に銃口が。ピタッと鳴き止むB。

シンディ さようなら。

 銃声。倒れるB。

ゆき   ナイスショット!闇に紛れ暗躍するシンディ!依頼人に合うときもその覆面は外さない!シンディの素顔を見たものは誰もいないのである!

 A、登場。先ほどとは違うお偉いさんの雰囲気。大きなトランクを抱えている。

A    シンディ、今回の仕事も見事だった。これ。
シンディ (無言で受け取る)。
A    それと、シンディ。君のその華麗な仕事ぶりを、遠くからではあるが少し見せてもらった。本当に見事だった。少し話を聞きたい、これから食事でも、

 シンディ、Aに銃口を向ける。

シンディ それ以上喋ったら、そのカニ味噌以下の脳みそを吹っ飛ばすから。

 シンディ、去っていく。

ゆき   超クール!仕事に余計な干渉はさせない、それが彼女のポリシー!誰とも組まず、一人孤独に仕事を請け負う闇の掃除人。仕事の時はいつも覆面、その素顔を見たものは誰もいなかった。それがシンディ!私の憧れのヒロインなのだ!私はシンディのような超クールで超カッコいいヒロインになりたかった!シンディは私の理想像なのだ!!

 部屋の照明に戻る。千絵、寝ている。

千絵   んごおおおおおおおおおお(いびき)。
ゆき   わああああやっぱええわぁ。シンディマジかっこええわぁ。もうあの三人組をこう、シュタタタタッて仕留めていくところ、とかもう最高にクールだわぁ・・・ってちょっと何寝てんのよ!ってかいびきうるさ!
千絵   ん?あぁよく寝た。
ゆき   よく寝た、じゃないでしょ!折角の映画が。
千絵   いや、だってこれ、控えめに言って全然面白くないよ。
ゆき   え、うそ。
千絵   だって、中身ないじゃん。殺し屋が依頼受けて殺すのだけしか映ってないもん。
ゆき   ま、まぁ確かにストーリー性は、ほんのちょっと薄いかもしんないけど、ヒロインはかっこよかったでしょ?ほら、殺し屋シンディ。
千絵   まぁ見た目はカッコいいけど、セリフとかもうちょっとどうにかなんないの?カニ味噌とか言ってたでしょ。ダサすぎ。
ゆき   え!あれが一番カッコいいのに!
千絵   とにかく!1作目がこのクオリティじゃ2作目もどうせ期待できないでしょ。見る価値なしなし。
ゆき   いやいや面白いって!
千絵   あんたこの映画のどこがそんなに好きなのよ?
ゆき   そ、そりゃ、まぁ・・・シンディがこう華麗に仕事をしていく感じとか、あの見た目とか、かっこいいなぁって。
千絵   あんたは映画どうこうより、シンディっていうキャラが好きなだけでしょ。
ゆき   う。
千絵   悪いけど、あんたほど感情移入できないから、楽しめなかったわ。じゃ、もう帰るね。DVDは返すから。
ゆき   まって!まって!お願い!明日2作目一緒に見に行って!それだけ付き合って!
千絵   もういいーつまんない映画に付き合わされるほど暇じゃないー。
ゆき   お願い!私だってたまには誰かと一緒に映画が見たいの!
千絵   今日見たでしょ!
ゆき   お願い!ケーキおごるから!
千絵   それなら話は別よ。
ゆき   じゃあ明日11時に浪漫座の前でね。
千絵   浪漫座?それってあんたの、
ゆき   そう。私のいきつけ。前に一回一緒に行ったじゃん。
千絵   あー、あのだいぶ古いところだよね。昔の映画とかやってる。すごいレトロなポスターばっかり貼ってあった。
ゆき   そうそう、あのレトロな感じがいいのよねー。やっぱ映画は大きなシネコンより寂れた小さな映画館に限るわぁ。
千絵   あそこって新しい映画も上映してるんだ。
ゆき   B級の映画とかをよくやってくれるのよ。場所分かる?
千絵   まぁ、多分行けるとは思う。
ゆき   じゃ、明日11時に、浪漫座でね。
千絵   あーもうわかったわかった。もう帰るよ私。
ゆき   うん、バイバイ。

 千絵、退場。所変わって浪漫座の前。時計をちらちらと確認している。

ゆき   ・・・遅い!遅すぎるぞ千絵!待ち合わせの時間からもう五分が過ぎている!このタイミングでバックレるなんて・・・さては、後から遅れてきてケーキだけ頂いて帰るって魂胆か?くそーなんて意地汚い女なんだああ!

 黒いスーツを纏った冨樫がやってくる。

ゆき   (ぶつぶつ文句を言っている)
冨樫   お嬢さん。
ゆき   え、あっはい!あのー何でしょう。
冨樫   映画を見に来たんだろう?「Cyndi2」。本日封切りの。
ゆき   あ、はいそうです!
冨樫   待望の2作目だ。前回のシンディ1は女殺し屋が華麗に殺していく様を描いただけの安いアクション映画だった。だが今回は違う。れっきとした人間ドラマだ。これまで誰とも組まず孤独に仕事をこなしていたシンディの、初めての共同作業が描かれている。
ゆき   え、そうなんですか?シンディが仲間を。
冨樫   そうだ。そしてその後その仲間と、
ゆき   あ、すみません、これ以上はちょっと。ネタバレ好きじゃないんで。
冨樫   おお、それはすまなかった。そろそろ劇場に入るといい。もう始まりの時間だ。
ゆき   あの、私友達を待ってるんです。今日一緒に映画を見る約束をしてて、ここで待ち合わせてるんです。もう時間なんですけど、まだ来てないから。
冨樫   映画は待ってくれない。人が映画を待つことはできるが、映画は人をまってくれない。
ゆき   え、え?
冨樫   今入らなければ、君の夢は叶わなくなるぞ。
ゆき   ゆ、夢?
冨樫   この先には夢のような時間が待っている。興奮、驚き、感動。全てが君のためにある。映画は現実にない世界、仮想現実を具現化してくれるモノ。夢も希望も愛も、何もかもが映画にはある。
ゆき   は、はぁ。
冨樫   それに今日の客は君一人だ。君が主役の世界が待っている。
ゆき   え、お客私だけ?いくら知名度低いって言っても、他にお客さんくらいいるんじゃあ。
冨樫   どうする。
ゆき   で、でも、友達と約束してるんで。もう少ししたら来ると思いますし、最悪途中からでもいいので。
冨樫   あいにく、今日の上映は途中入場できないのでね。
ゆき   えっ。
冨樫   今入らなければ、今日は上映中止だ。・・・明日まで待てるのか?楽しみにしていたのじゃないのかこの時を。君の憧れのヒロイン、シンディの活躍を、その目に焼き付けたくて来たんじゃないのか。
ゆき   ちょ、ちょっと待ってくださいよ。どうしてあなたがそんなことを。
冨樫   どうする。中に入るか。それとも待つか。
ゆき   ・・・・・
冨樫   映画は待ってくれないぞ。
ゆき   ・・・まぁ、また今度一緒に見ればいっか。うん、そうよね。時間になっても来ない奴が悪い!私はこの日に誰よりも早くこの映画を見たかったの!私、中に入ります。
冨樫   よし、じゃあこっちに来なさい。
ゆき   待ってください、チケット代は。
冨樫   そんなものはいらない、タダでいい。
ゆき   えっ・・・そうですか。ていうか、あなた誰ですか。
冨樫   浪漫座の受付人だ(舞台中央に歩いていく)。
ゆき   こんな人居たっけな?(冨樫について行く)。

 照明変わる。そこは浪漫座の劇場。

ゆき   すごい、本当に私だけなんだ。
冨樫   では早速上映をはじめよう。
ゆき   はい!お願いします。

 冨樫、退場。椅子に座るゆき。チキチキと映写機が回っているような音とともに照明が変化。BGMが
流れ始める。エキストラたちが登場する。映画の始まり。

A    例のブツは?
C    あ、あぁ。これだ。
B    さっさとよこしな。
C    待て、その前に金だ。

 A、手にしているトランクをCに渡す。

B    さぁ、渡してもらおうか。

 C、手にしているトランクをBに渡す。そしてC、受け取ったトランクを開け始める。

A    な、なにしている。

 Cがトランクを開けると本物の金はなく、偽物の紙切れがたくさん。

B    なに。
C    やっぱりな。

 と、その時銃声。Bの肩に当たる。

B    うわあああっ!
A    貴様!

 再び銃声。Aの肩をかすめる。Cが銃を構えている。

A    どういうことだ。
C    お前たちに金を払う気がないことくらい初めからわかっている。

 Cの背後からシンディ登場。機関銃を構えている。

B    お前は!
C    それ、開けてみろ。

 A、トランクを開ける。ホットケーキミックスが敷き詰められている。

A    騙したな!
C    お互い様だ!それでケーキでも焼いてなタコ野郎!

 C、発砲。それに次いで発砲するA、B。あたりを駆け回り弾丸をかわすシンディ。激化する銃撃戦。

ゆき   うわぁ、すごい。

 その時、Aがナイフを投げようとする。暗転。グサッと何かが刺さる音。
 照明つく。するとゆきの座っている座席にナイフが刺さっている(椅子を用意できない場合、カランと
何かが落ちる音がして、照明つくとゆきの足元にナイフが落ちている)。

ゆき   え。
B    うおおおおおおおおお。

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