ぬすっとHOUSE

(ぬすっとはうす)
初演日:2016/7 作者:前原 R 僚太
「ぬすっとHOUSE」
脚本*前原R僚太

□Cast
龍之介
しずく
タロウ
仁美
源三郎


明転。
舞台は黒田家リビング。テーブルや座布団。TVにCDデッキ。本棚。本棚の上には家族写真。脱ぎっぱなしの靴下などが落ちてる。季節は夏。蝉の鳴き声が響いており、扇風機が回っている。ベランダに制服姿の仁美。手には洗濯物かご。家の中に入り、かごを置き扇風機の前に。

仁美 「あー。」

扇風機の首振りに合わせて、仁美も動く。

仁美 「あー。あ、止めればいいんだ。止まれっ。」

扇風機の首振りを止める仁美。再び

仁美 「あー。涼しいよー。もーずっとこうしていたいよー。扇風機―。」

キッチンの方から「チンッ」。すっと立ち上がる仁美。

仁美 「あ、焼けた。ごめんね。涼しさもパンには勝てない。」

キッチンにの方にはけ、パンと牛乳をもって入ってくる仁美。席につきパンを食べる仁美。
席と扇風機が離れた場所にあり暑いようで、襟元をパタパタさせたりしている仁美。扇風機相手に手招きしてみるが観念して扇風機を自分の近くに引き寄せる。席に戻り牛乳をぐいっと一気飲み。

仁美 「ぷはーっ」

口元の白いひげを拭き取り、再びパンをかじる仁美。階段を下りる音。源三郎登場。

源三郎 「おはよう。」
仁美  「おはよう。お父さんの分キッチンあるよ。コーヒーも沸いてる」
源三郎 「お。ありがとう」

源三郎キッチンの方へはける

仁美  「今日休みなんだ?」
源三郎 「うん」

源三郎、パンとコーヒー、ヨーグルトを持って戻ってくる。

仁美  「どっか行くの?」
源三郎 「ん?」
仁美  「いやお父さんにしてはお洒落してるから」

源三郎席につきパンを食べ始める。

源三郎 「そう?お父さんいっつもこれくらいだよ。」
仁美  「んーん。いつもはもっとダサい」
源三郎 「あ、今日のも一応ダサイはダサいんだ」
仁美  「これとかこれとかさー。どういうセンス」

洗濯物かごから、源三郎の服を取り出し見せる仁美

源三郎 「それは部屋着だし。あ、てゆーか洗濯物やってくれたんだ。ありがとう」
仁美  「それはいいけど、脱ぎっぱなしにするのやめてよ」
源三郎 「いやーついね。」
仁美  「臭いんだから。やめて。」
源三郎 「はい。あとで洗濯機にもっていっとく」
仁美  「はぁ。で?」
源三郎 「ん?」
仁美  「どこ行くのー?」
源三郎 「あ、そういう話だっけ。映画だよ映画。」
仁美  「映画?その恰好で?」
源三郎 「あ、お父さんにしてはお洒落だけど。映画を見に行くには不適切な恰好なんだ?これそんなにダサいんだ?」
仁美  「コーヒー。お代わり入れてくるね。」

仁美、源三郎のカップを持ってはける。

源三郎 「あ、うんありがとう。」

源三郎、扇風機を自分の近くに移動させ、ヨーグルトを食べ始める。仁美コーヒーをもって戻ってくる。

仁美 「おまたせ。」
源三郎「ありがとう。」
仁美 「あ。」
源三郎「あ、やっぱだめだった扇風機。ちょっとお父さんも暑くてさ。」

源三郎、扇風機の位置を戻す

源三郎「夏って感じだよね」
仁美 「いやそれじゃなくて」
源三郎「せめて首振りはしていいかな」
仁美 「それはいいけど」
源三郎「よかったー」

源三郎、扇風機を首振りモードにする。

仁美 「それ」
源三郎「あ、ヨーグルト」
仁美 「食べたんだ。それ」
源三郎「食べちゃまずかった?」
仁美 「食べて不味くなかった?」
源三郎「え?」
仁美 「それ昨日一日外にあったやつなんだよね。牛乳屋さんが持ってきてくれてそのまま」
源三郎「言われてみたら、なんか変な味だったかも」
仁美 「一応保冷材ついてたから大丈夫かなって気もしたんだけど、やっぱダメかなーって。夏だし。」

おなかが痛み出す源三郎。

源三郎 「ちょっとトイレいってくるね」
仁美  「待って。私が先はいる」
源三郎 「なんで?」
仁美  「だってお父さんのあと臭くて入れないじゃん。ちょっと我慢して」
源三郎 「えー」
仁美  「冗談だよ」
源三郎 「勘弁してよー」

トイレに駆け込む源三郎。

仁美 「ごめんごめん」

家族写真をチラッと見て、少し寂しそうな顔になる仁美。テーブルの上の食器類をきっちに下げる仁美。戻ってくる仁美。出かける準備を整える。「ジャー」トイレの水の音。源三郎戻ってくる。戻ってくるなり棚の方へ行き何かを探し出す。

仁美  「どうしたの?」
源三郎 「いやートイレでもう夏だなーって思ってたら、一つ大事なこと思い出してさ。」
仁美  「大事なこと?」
源三郎 「あ、上だっけな。」

源三郎、二階へ上がっていく。

仁美  「ねー。何探してるのー。私のほうが物の場所わかるよー。・・・もう。もう私行くからねー。戸締りしておいてよー。あと脱ぎっぱなしの服洗濯機もっていってね。いってきまーす。」

源三郎からの返事はない。仁美、家族写真のところへ行き

仁美  「行ってきます」

仁美はける。しばらくして源三郎降りてくる。手には箱。
源三郎 「あった。あった。やっぱ夏はこれがないとね。あれ、仁美?もう行っちゃった?まぁ、いっか。よいしょっと」

源三郎、箱から風鈴をを取り出し、ベランダのドアにつける。ドアを少し開け、目を閉じる源三郎。「チリーンチリーン」風鈴が鳴る。

源三郎 「夏だね」

しばらくそのまま風鈴を聞いている源三郎。ふいに携帯のアラームが鳴る。

源三郎 「あ、もういかなきゃ」

源三郎、ベランダのドアを閉め(鍵はかけず)行く準備を整え出かける。
するとベランダに龍之介が顔をのぞかせている。

龍之介 「もう行った?行ったよね?」

ベランダに姿を現す龍之介。

龍之介 「ったくさー。すごい上玉があったから目をつけていたのに、何で取り入れちゃうわけ。盗れないじゃん。」

ガラスに顔を押し当てて部屋の中を覗き込む龍之介

龍之介 「あーあ。宝物があんなところに。はぁ。帰るか。」

龍之介が帰ろうとしたとき、「チリーンチリーン」風鈴が鳴る

龍之介 「あれ、もしかして。・・・ちょっと開いてる?」

恐る恐る確かめる龍之介。風が入り、風鈴が鳴る。

龍之介 「開いてる。」

龍之介あたりを見回し、家の中に入る。

龍之介 「お邪魔しまーす」

龍之介、あたりを見回しながら部屋の中を歩く。途中で靴を履いていることに気づき脱ぐ。洗濯物かごの前までくると正座する。

龍之介 「じゃあ、いただきます」

龍之介、女性の下着は思い切り投げ飛ばし、男性下着のみポケットにつっこんでいく。

龍之介   「あ。あーっ。」

龍之介、脱ぎっぱなしの靴下をみつけ、取りに行くが臭いでむせ返る。

龍之介 「げほっごほっごほっ。ガス兵器かよ・・・素敵。」

龍之介、再び靴下を盗ろうとし、むせかえるを繰り返す。「ガチャっガチャっ」とSE

龍之介 「うそっ?帰ってきた。逃げないと。」

龍之介、ベランダから出ていこうとするが。

龍之介 「・・・ダメだ。ここで諦めたら男じゃない。」

入ってくる源三郎。素早く隠れる龍之介

源三郎 「危ない危ない。」

龍之介の隠れている場所のすぐ近くに財布を取りに行く源三郎。源三郎何か気配を感じて

源三郎   「ん?仁美帰ってきてたの?・・・あれ、おかしいな。」
龍之介 「・・・にゃごろろ〜ん♪」
源三郎   「なんだゴキブリか。」
龍之介 「マジで」
源三郎 「おおっと。急がないと」
 
源三郎はけていく。龍之介物陰から出てくる。

龍之介 「助かったー。あっぶなー。寿命縮むってば。・・・さてと。」

取り入れた洗濯物の中から男物のシャツを取り、ベランダまで行く。ドアを少し開け思い切り深呼吸。息を止めシャツで口元を抑え、靴下を取りに行く。靴下を取ったところで、例の「ガチャっガチャっ」龍之介、思わず口元の抑えを外してしまいむせかえる。その拍子に靴下は地面へ。

龍之介 「あー。ふざけんなよー。おれの汗と涙返してー。くそ。お預けのままで誰が逃げるか」

入ってくるしずく。龍之介隠れる。物音をたててしまう龍之介。しずく、びっくりして物陰に隠れる。

しずく   「誰?」
龍之介 「・・・にゃごろろ〜ん♪」
しずく 「なんやゴキブリか。」
龍之介 「あの。ゴキブリって本当ににゃごろろーんって鳴くの?」

龍之介、思わず姿を現してしまう。

しずく 「ううん」
龍之介 「よかったー。ゴキブリが鳴かない世界でよかったー。ものすごく怖かった。」
しずく 「ニュルフフーンって鳴く」
龍之介 「えー。」
しずく 「まぁ嘘やけど」
龍之介 「(ほっとする)」
しずく 「あのアンタ・・・」
龍之介 「あ、やっちゃった」
しずく 「アンタ。ここの家の人、やんね?」
龍之介 「・・・え?」
しずく 「この時間は誰もおれへんはずなんやけどな(手帳を見ながら)」
龍之介 「そう。そうです。おれここの家の人です。」
しずく 「そ、そうやんね。大変失礼しました」
龍之介 「いやいやそんな」



しずく 「・・・何も聞かへんの?」
龍之介 「なにが?」
しずく 「いやいくら絶世の美女やゆうても見知らぬ人が家ン中入ってきたら怪しむんちゃうかなって」
龍之介 「あ。そっか」
しずく 「あ、そっか?」
龍之介 「怪しんでる。怪しんでるよ。うーわー怪しいなー。自分の家に見知らぬ人が入ってきて怪しいなー。どちら様ですかー」
しずく 「はい。私は治安局のものでして、お宅に怪しい人が忍び込んでいるとの通報をうけまして、勝手ながら扉が開いていたものですから無断で侵入してしまいました。申し訳ございません。(一息でまるで練習してきているかのように)」



しずく 「・・・何か」
龍之介 「いや急に早口になったから」
しずく 「そ、そう?別に早口になんてなってへんよ?」



しずく 「・・・何か」
龍之介 「いや。何も」
しずく 「・・・趣味」
龍之介 「は?」
しずく 「はっ早口言葉が趣味やねん。だからさっきのは決してパニックになったとかじゃない。」
龍之介 「何その趣味。じゃぁ東京特許許可局3回」
しずく 「東京特許きょきゃきょく東京特許きょきゃきょく東京特許きょきゃきょく」
龍之介 「・・・なんでどや顔してんの」 
しずく 「とにかく私は怪しいもんちゃいます。治安局のものなんでです。ピッキングが得意なただの治安局の人間なんです。」
龍之介 「・・・ピッキングが得意な人はただの治安局の人間じゃないと思うけど」
しずく 「ピッキングが得意な治安局の人間がおったって別にええやんか。」

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