イブとイブとイブとイブ

(いぶといぶといぶといぶ)
初演日:2014/10 作者:永村閏
『(アダムと)イブとイブとイブとイブ』


【登場人物】
春花   案内スタッフ。ニューハーフ。
夏希   客。ノーマル。
秋奈   客。レズビアン。
冬美   客。バイセクシャル。
男    ゲスト。


          ※客入れ中、場内アナウンスが延々と流れている。
          アナウンス「本日はシェルター博覧会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。
                中央のイベントスペースにおきまして午後二時よりEDEN体験イベントが行われます。最新の民間用シェルターEDENの内部をご観覧いただけます。
                皆さまお誘い合わせのうえご参加くださいませ」

          開幕。
          長い列に並んでいる夏希、秋奈。
          二人のうしろに冬美が並んでいる。
          春花が場内整理を行っている。

秋奈   やばい、超興奮するんだけど。
夏希   テンション高いね。
秋奈   だって世界一のシェルターだよ!?その中に入れるなんてもう一生そんなチャンスないよ!
夏希   一個買えば?売ってるんでしょそれ?
秋奈   いくらすると思ってんの。
夏希   列進むの遅いなー。
秋奈   でももうすぐだよ。
夏希   今何時?
秋奈   二時…半、二時半三分前。
夏希   細かいな。もう三十分も並んでるじゃん。なんか回転悪くない?EDENって何人入れるんだっけ?
秋奈   四〜五人。一家族用だからね。…でも大家族はどうするんだろう。
夏希   もう一個買えば?
秋奈   いくらすると思ってんの。
春花   お次のお客様、何名様ですか?
秋奈   きたきたきた、二人です。
春花   二名様ですね。お客様は何名様ですか?
冬美   …一人です。
春花   一名様ですね。
秋奈   後ろの人一人だって。
夏希   一緒に入るかもね。
冬美   ……。
春花   (冬美の後ろの客にむかって)お客様は何名様ですか?…え、十名様…ですか。2グループに分かれてのご案内となりますがよろしいですか?
秋奈   後ろに大家族いる…!
夏希   シェルター二個買うのかなぁ。
秋奈   どう分かれるかで揉めてる。パパとママどっちについていくのって話になってる。
夏希   離婚かよ。
秋奈   圧倒的にママ。ママ大勝利。パパ人望ないなー。一番上のお姉ちゃん?っぽい子が一人だけだよ。それも同情っぽいよ。
夏希   ちょっとあんまり見ちゃ悪いよ。
春花   お待たせいたしました。二名様どうぞ。
夏希   あ、はーい。行くよ。
秋奈   あぁ大家族の行く末が気になる。
夏希   秋奈がシェルター見たいって言ったんでしょ。早く。
秋奈   はーい。
春花   お次の一名様もどうぞ。
冬美   …はい。
春花   では入口のドアを閉めさせていただきます。一瞬暗闇になりますが、すぐに明かりがつきますのでご安心ください。

          暗転。

秋奈   うわー!きゃー!
夏希   うるさい。
秋奈   凄いー!凄くない?凄いー!

          明転。

秋奈   うわーこれがEDEN!
春花   皆さまEDEN体験イベントへようこそいらっしゃいました。ご覧いただいていますように、内部は二部屋の構造になっております。
     こちらのスペースはいわゆるリビングです。あちらに食糧や寝具一式を保管してありまして、このシェルターを制御するコンピュータもあちらの部屋に組み込んであります。
秋奈   やばいやばいやばい、うちら今EDENの中にいるー!
夏希   ちょっとうるさい。説明全然聞こえない。
秋奈   静かにして!
全員   ……。
秋奈   外の音なんにも聞こえないよ。
夏希   一番うるさいの秋奈だからね。
秋奈   お姉さん質問いいですか。
夏希   あんた自由すぎ。
春花   はい、どうぞ。
秋奈   今、核爆弾落とされても私達生き残れるんですか?
春花   そうですね。このシェルターは特殊な合金でつくられておりますので、例え今外で大爆発が起こったとしてもこのなかは安全ですし音も衝撃も届きません。
秋奈   凄―い!
春花   空調の循環システム、飲料の精製システム等は国際宇宙ステーションと同等のものを採用しております。
秋奈   やばーい!
春花   生存に必要な設備はすべて完備されております。この中で最低十年は生命活動をおこなえる計算です。
秋奈   長―い!
春花   つまり今世界が滅んでも皆さんは生きていけます。
秋奈   死にそう…!(興奮して)
夏希   元も子もないわ。
春花   それでは、御退出をお願いします。
秋奈   え、もう終わり!?
夏希   この後どうする?カラオケ行く?
秋奈   やだ、メッセージ探してない。
夏希   メッセージ?
秋奈   三好さんのメッセージ!
夏希   誰?
秋奈   三好さん知らないの?
夏希   もしかして、うちの三軒隣の三好さん?
秋奈   違うよ、誰よそれ。
夏希   知り合いの三好さんそれしかいないもん。
秋奈   EDENプロジェクトの責任者の三好さんだよ。
夏希   知らないよ。
秋奈   三好さんがね、EDEN作ってる時に目立たないところにメッセージを刻んだんだって。
夏希   そんなことしていいの、三好さん。
秋奈   隠しコマンドだよ。ちょっとなっちゃん一緒に探して。
夏希   でももう出なきゃ。
秋奈   あっちの部屋かも。
夏希   秋奈。

          秋奈、夏希、隣の部屋へ。

春花   あれ。開かない。あれ。なんで。うーん!あれ?
冬美   あの。
春花   すみません、お客さま、ちょっとドアがかたくて。少々お待ちくださいね。……ふぬぁ〜〜〜〜っ!!!…あれ?
冬美   なんか表示されてますよ。
春花   え?3…じゃない、E…アルファベットのEですね。
冬美   エラー…ですか?
春花   確か…(取説的なものを見て)『E…エマージェンシーモード。
     内部に人がいる状況でシェルター外が生物の生存に適さない環境下におかれた場合、EDENコンピュータが自動で判断しドアをロックします』え!?
冬美   って、どういうこと?
春花   この外が危険だとEDENが判断したということです。
冬美   それって、例えば放射能汚染されたとか?
二人   ……。
春花   まさか。
冬美   まさかね。
春花   おそらくシステムの誤作動かと。
冬美   そうよね。
春花   ロックの解除方法は…安全が確保されたというEDENの自己判断によるものか、外部からの操作で解除…。すぐに外のスタッフが対応してくれると思います。
冬美   これも貴重な体験だと思うことにするわ。
春花   申し訳ありません。あれ、そういえばもうお二方…。

          夏希、秋奈、戻ってきて。

秋奈   あの、むこうのコンピュータが一斉に動き出したんですけど。
春花   そんなはずは。
夏希   秋奈なんか触ったんじゃないの?
秋奈   触ってないよ、まだ。
春花   制御モードになっているはずなのに動き出すなんて。
冬美   また誤作動ですか?
夏希   またってどういうことですか?
冬美   入口のドアが開かなくなってるの。
春花   EDENの判断で自動ロックされています。
秋奈   それってまさかエマージェンシーモード?
春花   ご存知ですか。
夏希   なにそれ?どういうこと?
冬美   貴女詳しいの?
秋奈   EDENのことなら少しは。でも確かドアロックとメインコンピュータの回路は別じゃ?
春花   そうなんです。
冬美   それ本当?そうだとしたらおかしいわね。
夏希   ねぇ、それってどういうこと?
冬美   どちらも誤作動ということは?
春花   確率的に考えられません。
秋奈   仮に第一コンピュータが異常を起こしても、第二第三第四がカバーするように設定されているんでしょ。
春花   えぇ。ただちに自動修復がかけられます。それがおこらないということは。
冬美   結構時間もたってるのに、外から開けてくれる様子もないし。
秋奈   この状況から見て、考えられる結論はひとつ。
春花   はい。EDENの判断は事実の可能性が高いです。
夏希   ……つまり、どういうこと?
秋奈   なっちゃん、世界、滅びちゃったみたい。

          暗転。
          明転。
          四人でババ抜きをしている。

全員   ……。
冬美   あがり。
秋奈   また!?ふゆちゃん強すぎ。
春花   あ、私もあがりです。
秋奈   よーし、なっちゃん、正々堂々勝負だよ。ここであったが百年目。決着をつけようじゃないか。
夏希   ……。
秋奈   だんまりとは、おのれ心理戦か。ポーカーフェイスで情報を撹乱するつもりだな。
冬美   あーそっちかー。
春花   あらら、それはそれは。
秋奈   くっ!3人がかりとは卑怯なり!負けてなるものか。かくなるうえは、己を信じるのみ!とりゃあああ!
冬美   はい、ババ。
秋奈   無念…!

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム