なぜイナズマは売れたのか?

(なぜいなずまはうれたのか)
初演日:2016/6 作者:火乃あたる
なぜイナズマは売れたのか?


登場人物

鈴木・・・コンビニ店員その1。

田中・・・コンビニ店員その2。

店長・・・コンビニ店長。

ママ・・・スナック「赤みそ」のママ(オカマ)。田中が好き。

中島・・・若い刑事。指名手配犯「黒手のゲン」を追っている。

マユミ・・・田中お気に入りのキャバクラ嬢。

おじさん・・・コンビニ常連のおじさん。

ナレーション・・・冒頭のみ。


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ナレーション「週末の夜、人であふれる繁華街。ここにはスナックや居酒屋とともに、無数のコンビニが軒を連ねていた。
       これは、そんなコンビニのひとつで働く男たちの、熱き戦いの物語である!」

 舞台に明かり。客は1人だけ。店内には新商品の飲料「イナズマ」が
 山積みにされている。レジに店員が二人。

田中「ヒマじゃね!?」
鈴木「なんだ急に」
田中「いやだってあんまりだろ、一人も客来ないじゃん」
鈴木「いつものことだろ。」
田中「そうだけど、今日金曜!ここ居酒屋のまん前!普通来るだろぉサラリーマンだの店員だの」
鈴木「まあね。でもいいじゃん、楽だし。」
田中「楽だけどさー。あ、なあなあアレ売れた?」

 田中、山積みのイナズマを指差す。

田中「イナズマ。」
鈴木「んなわけないだろ。おまえツイッター見た?」
田中「あー見た見た。『マズすぎてつぶやきが思いつかない』『飲み物なのに飲み込む前にゲロが先に出た』
  『ラムネ入れて遊ぼうとしたらラムネがよけた』とか、他にもいろいろ。」
鈴木「そんなヤバイもんをさあ、よく発注ミスしたよね、店長。」
田中「試しに3箱くらいつってたのに、間違えて30箱とっちゃった!ってな。」
鈴木「廃棄になったら赤字で店が危ないけど、まあなんとかなるでしょー、てな。」
田中「アイツを廃棄にしてやろうかと思ったわ」
鈴木「こわいよ。なんにしても売らなきゃ俺たちもまずいしなー。」
田中「そもそも客が来ねえんだからどうしようもないだろ。はーヒマ!ヒマの極み!」
鈴木「はいはい。じゃ飲み物の補充でもしてきたら?」
田中「そうするかー。絶対ないと思うけど、混んできたら呼んで。」
鈴木「はーい。」

 田中、店の奥へ。

鈴木「閉店かなー。次のバイト探さないとなー。めんど。」

 入店音。おじさんが入ってくる。

鈴木「いらっしゃいま・・・あ、どうも」
おじさん「よお、相変わらず静かだねえ」
鈴木「今日のお客さん、おじさんがはじめてっすよ」
おじさん「ほんとに?よく閉まらないな」
鈴木「マジ不思議ですよね。今日もお酒っすか?」
おじさん「おう、なにかよさげなのを2、3本・・・お、これ知ってるよ。やっぱり売れてないみたいだね。」

 おじさん、酒を取った後、イナズマを手に取る。

鈴木「マズイマズイって言われてるのに買う人はいないっすよ」
おじさん「それもそうか。でも大丈夫なのかい?」
鈴木「正直大丈夫じゃないっす。どうすか、試しに1本?」
おじさん「そうだねー。よし、お兄さんの頼みだ。」

 おじさん、酒2缶とイナズマ2本を持ってレジへ。
 会計しながら会話。

鈴木「え、マジでいいんですか?しかも2本」
おじさん「いいさいいさ」
鈴木「ありがとうございます、助かりますよ」
おじさん「そのかわり」

 おじさん、イナズマの1つを鈴木に。

鈴木「なんです?」
おじさん「これはお兄さんへのプレゼント。」
鈴木「えっ」
おじさん「男なら、一気にグイッと!ね。それじゃ」
鈴木「いや、ちょっと!」

 おじさん、店を出る。

鈴木「ありがとう、ございました。マジか・・・」

 田中、戻ってくる。

田中「ただいま」
鈴木「おかえり。はやくない?」
田中「何で早いか教えてやろーか?こんなにヒマなおかげでなあ、補充するほど商品が売れてねえのさあ!!」
鈴木「超ウケるー。」
田中「真顔で言うな!ったくどうすんだよやる事もねえし。このまま朝までココで立ちっぱなんてゴメンだぞ」
鈴木「あ、じゃあコレ。」
田中「なに?」
鈴木「イナズマ。さっきいつもの、お酒のおじさんが来て、買ってくれたんだ」
田中「あーあのおじさん。で、それをどうすんの?」
鈴木「なんかゲームして負けた方が飲む。」
田中「勘弁してください」
鈴木「もう遅い、やろう」
田中「マジでやんのかー?」

 鈴木、田中レジを出て店内へ

田中「で何すんの?」
鈴木「んー。笑ったり、声出したら負けってのは?」
田中「いいねえ、俺自信あるし」
鈴木「じゃ決まりな」
田中「オッケー、ぜってー負けねえからな」

 お互い、深呼吸など準備。

鈴木「じゃいくか」
田中「おう。レディーゴッ!」

 田中、鈴木を笑わせようといろいろ試す中、
 近づいてきた鈴木、田中をビンタする

田中「痛ッ!え、お前マジか」
鈴木「はい喋った。俺の勝ちー」
田中「えー・・・何か、あったじゃん。二人の間で。暗黙の。触るのナシみたいな。」
鈴木「負けは負け、はいどうぞ」

 鈴木、田中にイナズマを手渡す。

田中「ふー・・・こええ!」
鈴木「とりあえず一口」
田中「わかった。」

 田中、イナズマを飲む。

田中「オエッ!オォエッ!」
鈴木「お、吐く?吐く?」
田中「オォォエ!」
鈴木「レジ袋あるから」
田中「オォエ!あっ!」
鈴木「えっ?」
田中「オォエ!!」
鈴木「なんだよ」
田中「はあ、はあ。」
鈴木「おいしかった?」
田中「聞く、それ?」

 田中、その場にくず折れる

田中「だめだ、なんかもう働ける気がしない」
鈴木「そんなにまずいのか」
田中「こう、世界中の体に良くないものを集めて、ちょうど死なない量ずつ混ぜたような」
鈴木「よくわかんねえな」

 田中、入り口を見て驚く

田中「あッ!」
鈴木「今度は何だよ」
田中「やっべ、アイツだ」

 鈴木、入り口を見る。
 田中、レジ下に隠れる。

鈴木「え?ああ」
田中「うまく誤魔化せよ!頼むぞ」
鈴木「いや、裏に行けよ」
田中「追ってこられたら逃げ場なくなるだろ!」
鈴木「ホラー映画か。」
ママ「たっくーん?」
田中「うおお、頼んだからな!」

 ママ、入店する。

鈴木「いらっしゃいませ、どもども」
ママ「あらー鈴木ちゃんこんばんわ。今日もクールね」
鈴木「はあ、どうも」
ママ「そういうところもかわいいわよ。でも私はたっくんにフォーリンラブだから、ごめんね」
鈴木「だいじょうぶっす」

 ママ、店を見回す
 
ママ「で、たっくんは?」
鈴木「あー・・・えー、今日は休みなんすよ、予定があるとか」

ママ「そうなの?じゃあ今日一人?」
鈴木「ええまあ、ヒマなんで何とかなりますよ」
ママ「うちの店もヒマなのよー。おいしいお酒もこんな美人のママもいるのに、不思議よねー」
鈴木「あ、はい、そっすね」
ママ「でもそっかーたっくんいないの。かわいい匂いがしたと思ったんだけど」
鈴木「かわいい匂い?」
ママ「じゃしょうがないわね」
鈴木「ママさんがよろしく言ってたって伝えときま・・・」
ママ「お互いヒマで時間もあるみたいだし、ワタシは別に鈴木ちゃんでも構わないのよ?」

 ママのウィンク。一瞬の間。

鈴木「こんなところに田中くん!」

 鈴木、隣でしゃがんでいた田中の襟首を掴んで持ち上げる。

田中「おい!」
ママ「たっくぅーん♪」

 ママ、レジ台越しに田中を抱き締める。

田中「うおお!」
ママ「会いたかったわー、嘘ついて隠れるなんてひどいじゃない!」
田中「あーいや、それは」
鈴木「サプライズで驚かせたかったんですって」
田中「何ガッツリ寝返ってんだよ!」
ママ「かーわーいー!」

 再び抱きつくママ。

田中「ぐええ」
鈴木「感動の再会っすね。」
田中「やかましいわ!」
ママ「あっそうだ、今日は買い物にも来てるんだった」
田中「にもって」
鈴木「何か探してるんすか?」
ママ「そうなのよー、今手袋がほしくてね」
鈴木「手袋?」
ママ「歳をとったせいか、最近手が冷たいのよ。いつかたっくんの手を握ったとき、冷たかったらイヤでしょ?」
田中「ああ、イヤですねーいろんな意味で」
鈴木「手袋ありますよ、取ってきます」
ママ「あら、ありがと」

 鈴木、レジを出ようとする
 田中、鈴木の服を引っ張る
 ママはバッグの中から財布を探す

田中「おい一人にすんなよ」
鈴木「一瞬だから」
田中「殺されたら恨むからな」
鈴木「なんで死んでんだよ」

 鈴木、レジを出る

鈴木「何色がいいですかー?」
ママ「黒があればバッチグーよ!」
田中「古いな」
ママ「あら?あらあら?」

 ママ、バッグをくまなく探す
 鈴木、手袋を手に戻ってくる。

田中「ど、どうしたんすか?」
ママ「財布忘れちゃった、取りに戻らなきゃ」

 ママ、田中の顔を見る

ママ「・・・たっくん一緒に」
田中「仕事中なんで!」
ママ「マジメねえー♪」

 また抱きつく。

田中「結局!結局か!」
鈴木「じゃあ、手袋はレジで取っときますから」
ママ「あら、ありがとう。それじゃまた後でねたっくん」
田中「はーい・・・」

 ママ、店を出る。

田中「バケモン相手の特別手当がほしい」
鈴木「誰かに好かれるのは、いいことだよ」
田中「代わろうか?」
鈴木「だいじょうぶです。あ、いい事思いついた。お前ママにお願いしてイナズマ買い占めてもらえよ」
田中「見返りが怖いからやだ」
鈴木「お前だってこの店なくなったら困るだろ?」
田中「もっと大事なものがなくなる気がする。」
鈴木「あれ、お客さんかな」
田中「話聞けよ」

 田中、鈴木に続いて入り口を見る

田中「あ、ホントだ」

 中島、入店。

鈴木・田中「いらっしゃいませ」

 中島、一直線にレジへ  

中島「お仕事中すみません。私こういうものなんですが。」

 中島、警察手帳を見せる。

田中「えっ、警察?」
中島「シーッ、あまり大きな声では」
鈴木「大丈夫ですよ、他に客いないんで」

 中島、店内を見渡す。

中島「そのようですね、てっきりお忙しいと思ったんですけど」
田中「うちは、まあ。なんででしょうね」
鈴木「それで、何かあったんですか?」
中島「ああ、そうでした。」

 中島、指名手配の紙を取り出す

中島「実は今、この男を追っていまして」
鈴木「あおき、げんじろう?」
田中「指名手配?」
中島「ええ。この男、青木源次郎はスリ、強盗、殺人を行う凶悪犯でして。通称『黒手のゲン』。
   最近この近辺で目撃されたらしく、よろしければ防犯カメラを確認させていただきたいんです。」
田中「はー、なるほど」
鈴木「申し訳ないんですけど、今店長がいないもので。僕たちじゃカメラの操作方法がわからないんですよ」
中島「そうでしたか・・・いえ、こんな時間にたずねてしまったこちらの落ち度です。申し訳ない。」
田中「どんな奴なんですか?もし見かけたら通報できますし教えてください。」
中島「ありがとうございます。そうですね・・・年齢は40代前半、ただ整形および性転換をしている可能性があって、この写真どおりの顔とは限りません。」
田中「それはわからないかもな・・・」
鈴木「他に特徴とかありますか?」
中島「ええ、今は自営業を営んでいて、スナックや居酒屋の可能性が高い。腕っ節が強く、前に一度つかまりかけた際に警官5人を振り払って逃走しています」
田中「バケモンじゃん・・・ん、バケモン?」
鈴木「スナック?」
中島「そして最大の特徴は、自らの指紋を残さないために犯行の際黒い手袋を必ず着用するということです。コレが『黒手のゲン』の由来でもある。」
鈴木「黒い・・・」
田中「手袋?」

 鈴木と田中、レジ上に取り置きしていた手袋を見つめる。
 中島、それに気づいて手袋を手に取る。

中島「あ、そうそう。ちょうどこんな感じです」


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