Fairytale Daydreamer

(フェアリーテイル デイドリーマー)
初演日:2008/4 作者:玄崎 尭
「Fairytale Daydreamer(フェアリーテイル デイドリーマー)」
作 玄崎 尭(げんざき ぎょう)

◇主な登場人物
・百井(ももい)……童話作家。一応かつてベストセラーを出したことがある。
・磯(いそ)  ……百井の担当編集者。ただ今百井をカンヅメ中。
・関(せき)  ……イラストレーター。百井の童話の挿絵を描いている。
          百井とは昔からの付き合い。

◇その他の登場人物
・語り手
・女の子A
・女の子B
・花子さん
・ガリバー
・王様達(複数)
・ババロア侍
・クリーム隠密
・エクレア禅尼(ぜんに)
・マドレーヌ大名(声のみ)


        スポットつく。語り手が本を開き、朗読をはじめる。

語り手  さあ、いこう。
     レモネードの川をさかのぼり、
     まんなかわけの森をぬけ、
     けわしいアテロームの山をこえて、
     オソレナガラの滝と
     オヨバズナガラの滝をくぐったところに、
     遠いむかし、涙といっしょにこぼれ落ちてしまったはずの、
     大切な宝があるという。
     見つけにいこう。
     テントと水とパンと、
     それから、旅を書きとめるノートと鉛筆をもって……。

        スポット消える。
        間……。

百井 (声のみ)……出来ねえ!

        明かりつく。ホテル(または旅館)の一室。
        テーブル(もしくはちゃぶ台)のそばに、
        作家百井と編集者磯がいる。

百井 ダメだ…、書けない。

磯  なんですかいきなり。

百井 書けないんだよ。

磯  そんな、弱音吐かれても。

百井 いや磯さん、聞いてよ。
   やっぱり僕なんてやつには童話書くなんて無理だったんだよ。

磯  10年近く童話書き続けてベストセラーまで出した人が今更何言ってるんですか。
   また今回もどおーんといきましょうよ、どおーんと。

百井 ベストセラーって、「ハリ、ボテと昆布のだし(※1)」のこと言ってんの?

磯  ええ。おととしの発売以来今も売れてますよ、あれ。
百井 いや…、あれもどうして売れたんだか。

磯  そんなこと言ったって、実際売れてるんですから。

百井 それがわからんというに。正直言って、あれって結構テキトーだったんだよ?

磯  あれのどこがテキトーなんですか?
   「ハリ、ボテ」と呼ばれていじめられていた少年が、ひょんなことで
   上野発の夜行列車の切符を手に入れたことから冒険の旅が始まって。

百井 そう、それで導かれるように辿り着いた仙台の老舗料亭で丁稚奉公する
   ことになって、その地で伝説と呼ばれていた幻の「昆布のだし」を発見し、
   苦難の末それを手に入れるわけだよ。

磯  ええ、そしてそれに至るまでの道のりが、実にスリルたっぷりでテンポよく
   書かれていたじゃないですか。
   さし絵以外のシーンも目に浮かぶようでしたよ。

百井 ちなみに、魔法全くもって関係なし!

磯  どうしてそこで魔法が出てくるんですか。

百井 北欧の雰囲気とて一切なし!

磯  ヨーロッパ関係ないでしょう。「昆布のだし」なんですから。

百井 そうね。

磯  …百井さん、さっきから一体何を言ってるんですか?

百井 いや、こっちのことだから気にしないで。

磯  まあ、いいですけど。それよりも早く冒頭の続きを書いてくださいよ。
   みんな先生の新作を待ってるんですよ?

百井 いや…、それなんだけど、磯さん、おそらく僕はもともと童話を書くなんて
   星のもとには生まれてないんだよ。

磯  何運命っぽくキレイに言おうとしてるんですか。ダメですよ、
   みんな待ってるんですから。

百井 じゃあ言わせてもらうけどさぁ、童話っていったって、今更一体何を
   書けっていうんだよ?

磯  何をって…。あなたが想い描く世界をそのまま書いてもらえれば
   それでいいんですよ。

百井 限度があるよ。自分がこう、気持ちが安らぐようなところにいてさ、
   あっいいなこれ、ってそのとき思ったあやふやな感覚みたいなものを
   なんとかして文章に書き起こしていくんだから。

磯  じゃあそれをやってくださいよ。

百井 簡単に言うなよ。それですぐ書けたらいつまでもこんな部屋にカンヅメに
   なんかなってないって。

磯  じゃあ頑張って一刻も早くここから出ましょうよ。

百井 だから簡単に言うなって。
   いい? 今までね、いいものを見て、聞いて、それを何とか自分の
   ものにして書いてきたんだよ。書くだけで何も吸収しないんじゃ、
   出ていく一方で引き出しもストックも空になっちゃうの!
   今そんな状態なのに何を書けって言うんだよ?

磯  そう言われてもなぁ…。

        そこへ画家(兼イラストレーター)関が登場。

関  おう、書き上がったか?

百井 あっ関ぃ、聞いてくれよ、僕が全然何も思い浮かびやしないって言う
   のに、この人書け書けってうるさいんだよぅ。

関  書き上がってないわけか。

磯  そうなんですよ。印刷所の都合もあるのに。

関  でもこいつ、やるときはやるけどあんまり追い詰めると、逃げるよ?

磯  そうなりかねませんね。今だって、今更自分は童話作家には向いてない
   なんて言い出して、完全に悲観的になっちゃってるんですよ。

関  ヒステリック=ブルー以上にヒステリックなわけか。

百井 そうかもしんない。

磯  言ってることがよくわからないんですけど。

関  大丈夫。言った俺は痛くも痒くもない。

磯  痛くも痒くもって…。まぁいいや。とりあえずそういうことです。

関  あぁ、でもなんとかなるんじゃない?夏休みの宿題いつも8月31日まで
   ためこんで泣き言言ってんだけど、提出期限までには何とかしてたもん、
   こいつ。

磯  周りで見てるほうはたまったもんじゃないですね。

関  そうね。こいつのおふくろさん、夏休みの終わり頃になってくると、明らかに
   落ち着きを失い始めるんだよ。毎年のことながら端から見てて気の毒だったわ。

磯  関さんは、百井さんとは長い付き合いでしたね。

関  そうだよ、高校からの腐れ縁。

百井 腐れ縁とは非道いなぁ。おそらく君と僕は、見えない糸か何かで
   つながってるんだよ。

関  まあ間違いなくそりゃ真っ黒い糸だな。そういうのを腐れ縁っていうんだよ。

百井 うーん、そこまではっきりと言われちゃうとなぁ。

関  …で、書き上がってないんじゃ、俺はいつこの話のイラストを描けばいいんだ?

磯  まだ先になりそうですよ。

関  参ったな…。おい百井、本当に何も浮かばないのか?

百井 うん……、今まで書いてきたようなものを書こうとすると、すぐ手が
   止まっちゃうんだ。

関  本当に問題だな。

百井 それにぶっちゃけた話、もともと僕子ども嫌いだしさぁ。

磯  …え?

百井 いや、今だからこんな童話とか書いてそれが仕事になってるけどさ、
   学生の時なんてこんなことありえなかったもん、ねえ関。

関  そうだなあ、ありえなかったな。

磯  どういうことなんですか?

関  百井は昔から小さい子相手に情け容赦ない態度とってたんだよ。

百井 うん。だって嫌いなんだもん。聞き分けがなくってさ。

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