さよなら3月 また来て昨日

(さよならさんがつまたきてきのう)
初演日:2017/3 作者:穂村一彦
『さよなら3月 また来て昨日』

【登場人物】7名(男2女2不問3)
 1.桜井:女教師。優しい。二十代中盤。
 2.一条:男。高校三年生。優等生。堅苦しくてマジメ。一条トオル。
 3.後輩:女。一条(生徒会)の後輩。高校二年生。現生徒会長。気弱。
 4.不良:男女不問(この台本上では女)
      乱暴、木刀、長いスカート。古いタイプの不良。姫宮レイ。
 5.警察:男女不問(この台本上では女)
      未来警察。キビキビ動く。銀色全身タイツとか変な衣装。
 6.田中:男女不問(この台本上では女)
      教師。眠そう、適当、いいかげん。二十代後半。パジャマかジャージ。
 7.校長:男。中年。

【舞台】
 舞台は職員室。出ハケ口4か所。
 上手奥は倉庫(タイムトラベル装置)に続いている。
 下手奥は休憩室に続いている。
 上手手前、下手手前は廊下に続いている。

【上演時間】50〜55分

【あらすじ】
 今日は高校の卒業式!
 卒業前に好きな人へ告白したい生徒!
 留年回避して無事卒業したい不良!
 未来を変えるためタイムマシンでやってきた未来人!
 思い出を詰めたタイムカプセルをめぐり過去と未来が交差する!?
 タイムトラベルどたばたコメディ

【本編】

(BGM「仰げば尊し」が流れる)
(舞台上には桜井先生一人。そこへ校長が入場してくる)

校長「おはようございます」
桜井「あ、校長先生。おはようございます」
校長「ずいぶん早いですね」
桜井「早く目がさめちゃって」
校長「わかりますよ。私もです。特に先生は初めての担当クラスですからね」
桜井「はい」
校長「先生。3年間本当にお疲れ様でした」
桜井「いえ、こちらこそ!」
校長「ははは、大変だったでしょう。個性強い子が多くて」
桜井「いえそんな。本当にいい子たちばかりで……あれ?」
校長「どうしました?」
桜井「クラス写真知りません? いつも机の上に飾っていた……」
校長「あれなら、昨日タイムカプセルに入れてたじゃないですか」
桜井「あ……そうでした」
校長「クラス写真か……いいですね」
桜井「30年後に開けるときが楽しみです……校長先生は何を入れたんですか?」
校長「株券」
桜井「……え?」
校長「IT関係で成長しそうな株見つけまして。
   30年後すごく高値になってると思うんですよ」
桜井「生徒との思い出のカプセルを、財テクに使わないでください」

田中「ふあああああ〜(パジャマ姿でものかげから起き上ってくる)」
桜井「うわ! 田中先生! いたんですか?」
田中「ん……おはよう……」
桜井「なんで、そんなとこで。泊まるなら休憩室で寝てくださいよ」
田中「あー、それがドア開かなくて」
桜井「え?」
田中「なんか鍵かかってるみたい」
校長「ええ? あ、本当だ(下手奥。開けようとするが開かない)」
桜井「鍵持ってないですか?」
田中「ない」
校長「おかしいなー。ちょっと用務員さんに聞いてきます」(退場)
桜井「あ、はい、お願いします。
   って、田中先生、いつまでそんなかっこでいるんですか! 着替えは?」
田中「家にある」
桜井「ええ!? 卒業式始まっちゃいますよ!?」
田中「大丈夫、すぐそこだから。んじゃいってくる……」
桜井「ああ、もう! 急いで!(背中おして二人退場)」

(入れ違いに逆方向から一条と後輩が入場)

一条「失礼します! あれ、誰もいない」
後輩「どうしましょうか?」
一条「まぁ、待ってれば誰かしら戻ってくるよ。ちょっと待たせてもらおう」
後輩「はい」
一条「ああ、そうだ、生徒会長」
後輩「……」
一条「生徒会長」
後輩「……」
一条「生徒会長ってば」
後輩「あ、そうでした。私が生徒会長でした」
一条「大丈夫?」
後輩「すみません、いまだに慣れなくて……
   やっぱりずっと私にとって生徒会長は一条先輩だったから」
一条「ぼくはもう元生徒会長。そして明日からはもう元生徒。元高校生だよ」
後輩「……あの。生徒会長、じゃなくて、一条先輩。私本当に大丈夫でしょうか?」
一条「え?」
後輩「本当のこと言うと、もともと私会長とかそういうガラじゃないんです!
   それなのについ調子に乗って生徒会に入っていつの間にかこんな立場になって。
   先輩もいなくなって……本当にやっていけるんでしょうか?」
一条「大丈夫! 一緒に頑張ってきた二年間、きみは立派に成長した!
   おかげで何も思い残すことなく、僕は学校を去っていけるよ」
後輩「……本当に、何も思い残すことなくですか?」
一条「もちろん」
後輩「嘘です……!」
一条「そんなことないって」
後輩「だって、先輩、本当は……!」

桜井「あれ、二人ともどうしたの?」
一条「さ、桜井先生っ!」
桜井「おはよう」
後輩「おはよう」
桜井「ん?」
後輩「……ございます。桜井先生」
桜井「ん、よろしい。おはよう生徒会長。
   あ、一条君。今日卒業生代表の挨拶するんでしょ? 頑張ってね」
一条「は、は、はい! がっ、がんがり、ばんばり、ばんがりまっ、ばんばり……!」
桜井「お、落ち着いて、もっと自信もって、ね。大丈夫。
   あなたは三年間、立派に生徒会を勤め上げたんだから。私の自慢の生徒よ」
一条「あ、ありがとうございます!」
桜井「昨日もありがとうね。タイムカプセル運ぶの手伝ってくれて」
一条「いえ、あれくらい!」
桜井「そういえば、一条君はなにいれたの、昨日?」
一条「えっ、あ、ぼ、僕は手紙です」
桜井「へえ、30年後の自分への手紙?」
一条「いや、その! なんといいますか……!」
後輩「あの! じゃ、私たちそろそろ教室に戻りますんで」
桜井「あ、まって、生徒会長、ほら、えりが曲がってる」(えりを直してあげる)
後輩「え、あ、うん、ありがとう、ございます」
一条「……っ! んっ、んんっ!」(急いでえりをあける。わざとらしく咳払い)
桜井「これでよし、と……ん? 一条君、どうしたの?」
一条「あの、自分もえりが……」
桜井「えり?」
一条「……あああ! 申し訳ありません!」
桜井「ええ?」
一条「自分もえりを乱せば先生に直していただけるかもしれないと、
   ひわいなことを考えてしまいました!」
桜井「ひわい!?」
一条「反省文を書いてきます! 失礼しました!(退場)」
桜井「いや、別に……まったく一条くんはあいかわらずねえ」
後輩「…………やっぱり(手紙にぎりしめる)」
桜井「ん、どうしたの?」
後輩「あの! ちょっとだけここで待っててくれませんか?!
   もう一度一条先輩を連れてきますから!」
桜井「一条君を? なんで?」
後輩「いいから!」
桜井「まぁいいけど……」

(後輩退場しようとしたところに不良入場し鉢合わせる)

不良「おーっす」
桜井「まあ、なに、そのかっこは? ああ、もう卒業式だっていうのに!」
不良「うるせえなあ。これが私の正装なんだよ」
後輩「あ、姫宮先輩。もう大丈夫ですか?」
不良「え、あ、うん。大丈夫だけど?」
後輩「そうですか、良かったです。じゃあ、すぐに戻りますから!(退場)」
桜井「あ、うん。……あなた生徒会長と何かあったの?」
不良「いや、覚えてないけど……それよりよ、先生」
桜井「なに?」
不良「あのー、まー、あれだ、三年間、私、いろいろ迷惑かけたと思うけどよ。
   あの、まあ……ありがとう、な」
桜井「……どうしたの、あらたまっちゃって」
不良「う、うるせえな/// いいだろ、卒業式の日くらい!」
桜井「そうね。じゃあ、私からも。素敵な三年間をどうもありがとう」
不良「お、おう」
桜井「また来年もよろしくね!」
不良「……来年?」
桜井「うん、来年」
不良「来年って、何が?」
桜井「だから、あなた留年してもう一年三年生だから、よろしくって」
不良「はあああっ!? りゅ、留年!? あたし、留年したの!?」
桜井「うん。知らなかったの?」
不良「知らねえよ! 言えよ! 先に!」
桜井「言ったよ。この課題出さなきゃ本当に留年だよ!って。
   そしたらあなた『留年? ああ? 上等だ、コラ!』っていうから、
   あー、上等なのかーって」
不良「上等じゃねえよ! お前、教師だろ!? だったら、生徒の、そういう、
   思春期特有の素直になれないギザギザハートをくみとってくれよ!」
桜井「ギザギザハート?」
不良「ああ。わかっちゃくれとは言わないが、そんなに私が悪いのか!?」
桜井「チェッカーズ、好きなの?」
不良「卒業できないって……じゃあ、いったい、私は今日何しにきたんだよ!?」
桜井「うん。だから先生も、この子今日いったい何しに来たんだろうって不思議だった」
不良「なあ、なんとかならないのか!?」
桜井「そう言われても……試験も追試も補習もさぼって、課題も出してくれなかったし」
不良「か、課題……あ、ああ、あれね、やってある、やってあるよ、おう」
桜井「そうなの?」
不良「それもってきたら、卒業させてくれるか!?」
桜井「うーん、まぁ……」
不良「わかった! すぐに持ってくる!」

(不良退場。途中で入場してきた田中先生と肩がぶつかっていく)

不良「気をつけろ、この野郎!」(退場)
田中「んー、どうしたの、あのこ?」
桜井「卒業したいから、課題を持ってくるって」
田中「へぇ〜。もう一年のんびり学生やればいいのに〜」
桜井「先生はのんびりしすぎです! っていうか、なんでまだそのかっこなんですか!」
田中「あー家に入ろうと思ったらカギがなくてさー。あれーどこだー?」
桜井「どこに置いたんですか?」
田中「えーと、確か昨日家を出て、かぎしめて、コンビニ寄って……
   あー思い出した。ここに銀色の箱なかった? あれに入れておいたんだけど」
桜井「……え?」
田中「あれ〜? どこいったんだろ?」
桜井「せ、先生、あれに鍵入れちゃったんですか!」
田中「うん」

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