神さまだってしらない
神さまだってしらない


天使役 
悪魔役 
人間 
ナレーター 
智ちゃん 



一(前説)

ナレーター どうも天界人見習いのみなさん。ようこそお越しくださいました。これからご覧いただくのは、我々の仕事の様子でございます。我々が何をしているのかをただしくお教えいたします。ただ、説明するより見ていただく方が早いので、模擬業務という形でご覧いただきたく存じます。ですがその前に、お願いしたいことがみっつございます。ひとつめ、ここは学内禁煙となっておりますのでおタバコは吸わないようお願いいたします。ただし、ここで定番のお願いである、飲食、に関しましては、本日も暑いですし、私共の不手際もあり、空調も効きません。なので、食、食べるほうですね、これは控えていただきたいのですが、飲、飲むほうは、こまめにしていただきたく思います。喉が渇いていると感じたときにはすでに手遅れ、なんて話も聞きますし、我慢なさらず飲んでくださいね。ではふたつめ、携帯電話や音の出る機器をお持ちの方は電源をお切りになるか、音の出ないような措置をお願いいたします。我々の世界には携帯電話などありませんし、それに、急に音がなるとびっくりするもので……、すみません。みっつめ、フラッシュを焚いての撮影はご遠慮下さい。これも社員一同びっくりしますし、あなた方の行動がこちら側へどのように干渉するか詳しく分かっておりませんので、身を守る意味でもどうかご配慮をおねがいします。
    申し遅れましたが我々、神を筆頭にしたれっきとした『天界人』でございます。これから何年何十年先、あなた方が天界人になられた際の先輩、というわけです。

        幕が開き始める・照明の変化等の転換動作。幕の中に人間、天使、悪魔
        天使と悪魔は会話をし、人間はニコニコしている。
智ちゃんが何かメモをつけている
   
ナレーター ところで皆さん、「センパイ」っていい響きですよね。かっこいい男の子に呼ばれてもよいしかわいい女の子に呼ばれてもよい。ああ、どうしてあんなに魅力的なワードなのか――
智ちゃん  はいはい無駄話はそこまでです。前説が終わったんならさっさと引っ込まないと、トイレだって行きづらいんですからねー!センパイ!

  智ちゃん、ナレーターを引きずりながら

ナレーター まって、ごめんって、悪かったから自分で歩くから――
        ナレーターの断末魔とともに智ちゃんが引きずってはけ

智ちゃん  だいたいね、何のために5分前にアナウンスしてると思ってるんですか。皆さんこれから50分、椅子に座ったまんまなんですよ!準備したいでしょ!その時間を前もって教えているんですよ!長々話をして、そのまま最終的に開演時間なんてなろうもんならもう愚の骨頂ですよ!そのあたりちゃんとわかってるんですか?わかってないですよね!わかってたらこんなことしませんもんね!なぁんでこうなるかなぁ。あなたの性格だとどう考えても校長先生の話が長すぎるからどうやったら合法的に短縮できるか、なんてことを考えて幼少期を送っててもおかしくないとは思いませんか?そうではないんですか?ねぇ、どうなんですかそこんとこ。あ、やっぱ返事はいいです。返事聞いたところでけむに巻くだけなんですもんね。意味ないですよね。そうやってなんとなくでずっとやり過ごしてきたんじゃないんですか?どうなんですか?覚えてないかもしれませんけどね、私たち相当苦労してるんですからね!あなたが突然今までと違うこと言いだしたり、ほかの神に対していきなり喧嘩売ったり、そうこうしているうちに最大勢力になってたり、嫌がる私をしーちゃんと一緒に副社長の座に押し込めたり!押し込めたといえば地味な嫌がらせとしてコメを圧縮に圧縮して食べても減らないおにぎりとか作って遊んだ挙句自分で食べずに私に食べさせたり、かと思えば私が楽しみにとっておいたコーヒーゼリーを勝手に食べただけでなく墨汁を固めたものと入れ替えたり、シャワー浴びてる間に服を女物と取り換えたり!まったくもう!まったくもう!なんなんですかあなた、子供ですが、ガキなんですか!いったい全体どうやったらこんな風に育っちゃうんですか!しかも権力持ったまま!しーちゃんもしーちゃんですよ!秘書のくせにやってることは私に意地悪をすることばっかり!子供のころから何も変わっちゃいない!あ、そう考えたらなんか気づきましたよ私。たまにあなた達共謀してたんじゃないですか?ねえ!二人で協力してわたしに嫌がらせしてたんじゃないですか?そうなんでしょ?そうなんですよね?だってよく考えたらいつも私がひどい目に合うときは二人いましたよね?わかりました。そっちがそうならこっちにだって考えがあります。これから先あなた方二人が何か企んでいそうな場面に出くわしたらその時点でお説教です!問答無用です!特にいたずらしようとたくらんでた証拠が出てきたら――
ナレーター すとーっぷ!智ちゃんストップ!そろそろ時間だから!あといろいろ危ないから!
智ちゃん  え、あ、あああああ!しまった!
ナレーター ね、だから私への説教は後にして早くスタンバって!                  
        ナレーター入りながら
二(本編)
ナレーター 全く。時間にも私にも厳しいって何なのまったく。っておっと、これは失礼。先ほどは見苦しいところをお見せしました。気を取り直していきましょう。定刻となりましたので、開始いたします!

        注目が3人に集まるような何か

ナレーター はてさて、この3人のうち、両脇が我が社の社員でございます。向かって右側は、良心に基づいて良いと思う方へ誘導します。いわば心の中の天使。逆に左側は、天使の言うことの逆、つまり悪いと思われる方向へと誘導します。要は心の中の悪魔。そしてその真ん中で揺れ動くのがあなたたちと同じ「人間」です。たとえば……

      智ちゃん、入ってきて彼らの前で物を落とす

人間     あ、あの人、(落としたものを言う)落としちゃってる!どうしよう……
天使役   大切なものだとあの人困っちゃうかも!早く拾ってあげないと!
悪魔役   べつに自分は困らないし、拾わなくたっていいじゃん。
人間    うーん、拾ってあげないと困っちゃうかも。すみませーん。これ落としましたよ。

       人間、拾って智ちゃんに渡す

智ちゃん  おや、ありがとうございます!危なかったーこれ落とすと大変なことになってましたよー

        智ちゃんハケ

ナレーター と、このように我が社の社員が行動の提案と理由づけを行います。二つの選択肢にそれぞれの理由。それだけで人間は楽になるみたいです。
人間   あの人に喜んでもらえてよかった。やっぱりお礼を言われるっていいね。

     
   

悪魔役   また俺の意見は却下かよー。わかっちゃいたけどさー。
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