その時、光る海があった

三陸高校合唱部シリーズ第1章

(そのときひかるうみがあった)
初演日:0/0 作者:月舘 壽晃
      
          『その時、光る海があった』
                   2013・2 作

      具体的な舞台装置はないが、腰掛けたり駆け上がったりできる平台などが、いくつかあればよい。

          第 1 景

      嵐の夜、強い風の音。
      誠二とその父、修造が座っているが、イライラした様子。
      ずぶ濡れのカッパを着ている。
      気象情報を伝える声が流れる。
誠二  (どうにもいたたまれず立ち上がる)ああ!オレが行って来る。
修造  (立ち上がって制して)行ってどうする!
誠二  こうして待ってて、どうにかなるのか。
修造  落ち着け、誠二。
誠二  落ち着け?(睨み返す)
修造  ああ、落ち着け。海上保安庁の巡視艇が向かってる。
誠二  むやみに遅いじゃないか、こうしている間にも・・・。
修造  下手に動くな。
誠二  だけど!
修造  行ってどうなる、この嵐じゃ、手も足も出ねえ。
誠二  だからって!(立ち上がって)やっぱりオレが行って来る。澄夫兄さん、見殺しになんか出来るもんか。
修造  (しばらく睨み)海上保安庁に任せろ、澄夫を信じろ。
      頭を抱える誠二。
      天を睨む修造。
      激しい風雨と気象情報の声に時計の音が重なる。
      程なく海保隊員が駆け込んで来る。
隊員  (ピタリと止まり大きく首を振る)スイマセン。
      ふたり、力なく立ち上がる。
隊員  急いで向かったんですが・・・外海には出られません。
修造  どういうことだ。
誠二  だって、現場へむかったんじゃ・・・。
隊員  現場へは、とうてい・・・。
      続いて山崎が入って来る。
修造  (駆け寄り)澄夫は、澄夫は。
山崎  救出できる様な状況ではありません。
誠二  (放心して)じゃあ、何しに行ったんだよ。
山崎  視界が全く。横波くらって、こっちも危うく・・・。
隊員  港から一歩も出られないんです。
誠二  それで、オメオメと戻って来たって言うのか。
隊員  いや・・・。
誠二  この程度の波が怖いってか。
修造  誠二!
誠二  それでも海上保安庁か、レスキューか、何のための巡視艇だよ。こんな波くらいで。・・・ヘリはどうした、ヘリは?
隊員  無理ですよ・・・無理ですよこの天候じゃ。
誠二  せめて、せめて船の居場所だけでも。なあ、無線の切れた場所まで行って、状況確認だけでも、なあ。
      ふたり、顔を見合わせて息をつく。
隊員  スイマセン。
誠二  もう頼まねえ。オレが行く(修造に)見ろ、もっと早くにオレが行ってりゃ。
山崎  よせ、無理だって。
修造  落ち着け、誠二。
誠二  へん!こんな波、怖がってちゃあ、漁師が務まるかってんだ。浜衆は波とケンカしてなんぼだ。
修造  このバカタレが!海とケンカして勝てるか!
誠二  勝てるか勝てねえか、男なら勝負だろ。嵐だろうが、何だろうが・・・。
修造  (ビンタして)甘く見るんじゃねえ。
誠二  (隊員の胸倉を掴んで)行って来いよ、この腰抜けが!(崩れ落ちる)急がなきゃ、間に合わねえだろ。
山崎  (引き離し)無理だ、どうにもならん。
誠二  何!
山崎が諭すように大きく首を振る。
誠二  (弱く)どうにもなんねえことぐらい・・・(絶叫)わかってるよ!
修造  誠二。
隊員  もうすぐ峠は越えそうです。そしたらすぐにでも。
誠二  当たり前だ。
修造  頼みます。(腕を掴んで)頼みます。
隊員  はい。
誠二  兄さん。
山崎  諦めるな。オレたちだって・・・(キッとして)諦めたわけじゃない、誠二。
      敬礼をして、ふたり出て行く。
誠二  兄さん。
      暗転


        第 2 景

      一転して穏やかな天候。
      誠二は口笛を吹きながら海を見ている。
      そこへ、学校帰りの由香里たち。
彩   (誠二に気づき)あ、またいる。
美里  何?
彩   シッ!知らん顔して。きっと、ちょっとおかしい人だから。この間なんかさあ・・・。
誠二  お!今お帰りかい?しっかり、お勉強してきたかな?
彩   あっちゃあ!
誠二  (通り過ぎようとしたので)ちょっと待てい!シカトはないだろシカトは、ええ。・・・ん?今日はいつもよりちょっと早いんじゃないの?
美里  試験週間なので。
彩   (小声で)ちょっと美里!
誠二  あ、そうかそうか。それでか、部活も休みか、それで早いんか。
彩   ええ、まあ・・・。
誠二  よかったねえ、部活休みで。それに特にキツイからねえ合唱部の部活は。
美里  ええ?
誠二  ありゃあ、運動部だね。いやそれよりキツイ、格闘技だね。
彩   何で、私たちが合唱部だって知ってるわけ?
美里  あんたが、ぺろっと言ったんじゃないの?
彩   違うって。
誠二  そうか試験週間か。帰ってしっかり勉強しろよ由香里。
彩   ええ!何で由香里・・・あんたたち前からの知り合い?
由香里 さあ・・・。
美里  だって、名前・・・彼氏?
由香里 誰が!
誠二  あんたたち、由香里のお友だちかい?まあ、仲良くしてやってくれよ。青春っていいよね。由香里、友だち大事にしろ、絶対裏切ったりすんじゃねえぞ、ん?。
美里  あのう・・・由香里とどういう・・・。
誠二  妹。
二人  えええ!
美里  そうなの?
彩   このへんてこと?

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム