合言葉

三陸高校合唱部シリーズ第3章

(あいことば)
初演日:0/0 作者:月舘 壽晃
          

      『 合 言 葉 』
                2012・1 作

  具象的なセットはない。簡単な置き台などがあればよい。
  はじめ舞台では『ちゃんと伝えて』

  さっき何て言ったの 風が強くて聞こえなかったよ
  きっと大事なことだから ちゃんと伝えてよ
  だから内緒にしてね 潮風がそう囁いた
  遠くで手を振る君に 告げた言葉を
  だから秘密にしてね 潮騒にそう呟いた
  少しざわめいた胸に 問いかけろ想いを
  あの白い灯台まで駆け出せば
  日に焼けた頬をすりぬける予感
  やっと追いついたのに 素知らぬ素振りはないじゃない
  きっと追いつけない言葉 準備してたのに 
  ふたつ並んだ足跡はどこまで
  波が消さぬように続いてゆくのね
  さっき何て言ったの 風が強くて聞こえなかったよ
  きっと大事なことだから ちゃんと伝えてよ

  歌い終えて全員退場。
          
      スライド 「7月23日 三陸高校にて」         
ナレーション 中田由香里。三陸高校3年、合唱部部長。と言っても、私たち3年はこの夏休みが明けると、引退して後輩たちに、その道を譲ることになる。今日はその引継ぎをする日だ。伝統あるこの合唱部。全国大会出場を夢見て励んできたが、とうとう果たすことは出来なかった。

梢   由香里部長。音楽室、ブラバンが使っています。
沙耶香 (甘ったれて)由香里部長。今日は合唱部のローテですよね、何とか言って下さいよ。
由香里 あ、ゴメン。今日はここでやるから。だからいいんだ。
沙耶香 ええ、ブラバンに文句言っちゃった。今日は合唱部のローテだぞって。
由香里 梢、沙耶香、ゴメン、ゴメン。
沙耶香 何考えてんだって言っちゃった。恥かいた。
由香里 そりゃ、悪いことした。今日は練習じゃないから、音楽室じゃなくても良かったんだよ。悪りい!
沙耶香 はーい。分かりました。(退室)
由香里 皆にも言っといて、ここに集まるようにって。
      ナレーション 後輩は可愛いもんだ。私は一人っ子だったせいか、何か妹みたいな気さえしてくる。
香織  (沙耶香のまね)由香里部長。
由香里 はーい。(振り返り)って、何だ香織か。沙耶香かと思った、何だよ。
香織  (まねて)もう大変ですう!
由香里 だから、それやめてよ、まぎらわしい。お前たちホントそっくりだね。
香織  冗談。
由香里 (A4をとって)これコピー人数分お願い、みんなに渡すヤツ。
香織  (見て)下期のスケジュールね、OK。マネージャーとしての仕事がコピーか。(退室)
美里  おう!由香里。
遥   どう?
由香里 どう?って何が。
遥   引退間近の気分よ。
彩   なんか力抜けるね。
由香里 私たちも5人だけになっちゃったんだね。
美里  入部した時は何人だったっけ?結構いたよな。
遥   ・・・14人。
美里  そんなにいたっけ。
香織  それが、この5人だけになったんだ。
彩   だってさあ、大会で負けるたびに人数が減っていくんだもん。
遥   遠征目当てで入部した子もいたもん。
香織  何考えてんだか。
美里  アタシは違ったな。
遥   え?
美里  勝った負けたよりも、いやむしろ負けたことで、ヨシってファイトが沸いてきたけどな。
由香里 まあ、なんだかんだで残ったのは、しぶとい奴らと言おうか。
彩   諦めの悪い奴らと言おうか。
遥   そう言うこと。(一同笑い)
由香里 そうだね。・・・そうだったね。
       富田と後輩たちが続々はいってくる、ジャージ姿
香織  (由香里に)はい、コピー。任務完了、これにてマネージャとしての任務を全て完了いたしました、由香里部長殿。
遥   ご苦労であった、下がってヨシ!
香織  ハッ!
由香里 (あきれて、コピーをくばりながら)このアホなマネージャーは誰が引き継ぐのかな?      
美里  そりゃあ、沙耶香しかいねえだろ。お前たち、そっくりだもん。
沙耶香 え!アタシ?
一同  そうそう。
富田  そうか、次のマネージャーは沙耶香か。
沙耶香 え、そんな急に。
富田  そのプリントよく見てくれ、下期のスケジュールだ。いよいよ9月から高唱連のコンクールの予選会が始まる。上期は残念な結果に終わってしまったが、その分頑張っていこう。
一同  はい。
富田  ここにいる3年は、夏休みが明けると、次の進路へ向けての活動に本格的に取り組まなければならない。残った皆で、好成績を残せるように気を引き締めて取り組んでもらいたい。
美里  そうだぞ、頼むぞ。
彩   私たちの分も頼むわよ。
由香里 別にプレッシャー感じなくてもいいよ。三陸高校合唱部でよかったって思えるように悔いなくやればいいんだから、ね。
一同  はい。
富田  ただし、あくまでもコンクールだ。1年だから2年だからって言うハンディはないんだからな。ビシビシいくぞ。
一同  はーい・・・。
彩   休み明けには引退式か。
遥   何かあっと言う間だね。
由香里 ホントね。
富田  それまでに、これからの体制をどうするか決めておこう。・・・お前たちもよく頑張ったけどな。大きな大会に進めなかったのは残念だったが・・・私も今まで何年もやって来たが、結構充実したメンバーだと思ったんだが。スマンな、結果を与えてやれなくて。
由香里  いいえ、そんなことは・・・。
富田   (気を取り直して)それから、自由曲をどうするかも考えなきゃな。遥に負けない作曲力を発揮しなきゃなあ、大変だぞ。
沙耶香 ええ!誰が書く?
梢   それ次第で結果が決まっちゃうよねえ。
沙耶香 先生、それ心配。
富田  おいおい、別れを惜しむより、そっちが問題か、え?
梢   遥先輩。遥先輩が最後に作曲して置いて行くってのはダメですか。
遥   ええ!
一同  お願いします!
遥   (見渡して)別に、いいけど。
一同  やった!
富田  おいおい、それはお前たちが・・・。
遥   ヨシ、わかった。任せろ!
由香里 遥。
美里  いいのか、安請け合いして。
遥   後輩にこんなに言われて、無下に断るほど、遥さんは薄情じゃあないですよ。彩、詩は頼んだぞ。
彩   え?アタシ?
遥   決まってんだろ。
彩   ええ・・・。
遥   ええじゃない!
彩   (皆の視線の中、勢いで)ッシャー。
遥   まあ、任せとけ、後世に残る名曲を残していってやるから。その代わり、頼むぞオイ!

  『サクラ散る』を歌い終えて退場。
  
  通いなれた坂道に 3度目の春が来て
  肩にとまる花びらが 迫る時を告げる
  華やぐ季節の中で 失くした大事なもの
  何度も何度も振り返り 探し続けている
  ノートのすみに描いた 似ていない似顔絵
  最後まで消せずに いるのは知ってるけど
  伝えたいこと ひとつあるんだ その言葉どうしても探せない
  サクラ散る道で立ち止まるけど サヨナラとしか言えない

  道に積もる花吹雪 ふたつの足跡も
  思い出さえも消し去って 何も見えなくなる
  あの日涙に暮れた時 その手をふりほどいて
  ムリしてはしゃいだ声で 君にウソをついた
  夕陽染める校庭 渡り廊下の陰

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム