今宵のお酒は血のお味
「今宵のお酒は血のお味」
作:ガッショーブ

登場人物
サヤカ:それなりに普通の大学生。失恋した。
リュウト:ホスト。チャラいわりには良い奴。
マスター:バーの店主のわりには客に対する態度が悪い。アラサー。

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明転
つまらなそうな顔で淡々とグラスを拭くマスター
サヤカ、ひどく落ち込んだ様子で入店。

マスター 「いらっしゃいませー」

マスター、サヤカの顔をカウンターから訝し気に凝視する。

サヤカ  「あ、あの、私の顔に何かついてました?」
マスター 「いいや別に。空いてる席へどうぞ。」

サヤカ着席。しばらくスマホを見るなどして間を空けた後、テーブルに突っ伏して号泣。
マスター、面倒くさそうに溜息。舌打ちでもしてみると良い。

サヤカ  「うわああああん、ひどいよおおお、こんなのってあんまりだよおおおお
      お!!ああああああああああん!!!!」
マスター 「あんまりなのはこっちだっての…」

マスター、さやかに歩み寄る

マスター 「ちょっと…」
サヤカ  「話聞いでぐれまず!?」

サヤカ、マスターが寄るや否やガバッと顔を上げる

マスター 「じゃあ聞いてあげましょう。ご注文は?」
サヤカ  「へ?」
マスター 「もう一度聞いてあげましょうか? ご注文は?」
サヤカ  「わ、私の話を聞いてくれるんじゃないんですか?」
マスター 「私が聞きたいのはあなたのオーダーだけです!!何も注文せずにピーピー泣
      かれるんじゃこっちとしても迷惑なんですよ!!」
サヤカ  「ひ、ひどいですよそんな言い方。こういうバーのマスターって落ち込んだ女
      性客が来たら優しく親身に慰めてくれるもんじゃないんですか!?」
マスター 「そうですね、ちゃんと注文してくださったお客さんにはそういう対応も
      考えますね!! あんたは、まだ何も頼んでないから、まだ私の客じゃな
      い!!」

マスターに気圧されるサヤカ、渋々応じる。

サヤカ  「わ、分かりましたよ…注文すればいいんでしょ…!?じゃあ…この『いっそ
      涙の海に沈みたい、失恋のモスコミュール』ください…」
マスター 「かしこまりました」(嫌味っぽく)

気怠そうにカクテルを作るマスター。あからさまに変なものまで投入してシェイクする。

サヤカ  「今、何か入れましたよね…?」
マスター 「いいえ何も?」

随分とアグレッシブなシェイクも終わり、グラスをサヤカに差し出す。

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