7月のマリン・ブーケ

(しちがつのまりんぶーけ)
初演日:2013/7 作者:ながみねひとみ
第6ボタンドラマ×ダイニングゲキウマvol.3+@
リーディング公演企画「7月のマリン・ブーケ」作・ながみねひとみ

吉田   …医療機器メーカーで働くサラリーマン
田中   …吉田の同期。大学のサークルも同じ。
千夏   …吉田の彼女。ユカリの友人でもある。
ユカリ   …田中の彼女。ユカリの友人でもある。大学のサークルで吉田とも知り合い。

他、看護士



























    吉田がストーリーテラーなので本を読みながら話を進めていく。

■健康診断

    ―オープニング曲―
    吉田の一人語り。

吉田   長いものには巻かれろ…。大きいものにはたてつくな…。生きていくためには
    仕方がない。男はそういう諦めというか…切り替えがわりとうまいのではない
    かと思う。が…しかし。相変わらず下っ端には何おりてこない会社なんだと
    つくづく感じる。医療器械を扱う小さな会社。小さいながらも医療系ということ
    もあり、定期的な健康診断とかは、割としっかりやる。
    
    場面、健康診断。看護士に呼ばれる吉田。
    
看護   吉田さん。
吉田   はい。
看護   どうぞ。はい、じゃあ、座って。小指だしてください。
吉田   はぁ。
看護   じゃあ、こちらの絵を見ていただいて。
吉田   はぁ。
看護   何が見えてますか?
吉田   犬ですね。
看護   次、どうぞ。
吉田   猫ですね。
看護   次、どうぞ。
吉田   ペンギンですかね。
看護   次どうぞ。
吉田   題名はわからないですけど、なんか美術館においてある風な絵です。
看護   はい。もう、いいですよ。

    吉田、一人語りに戻る。

吉田   これは、初体験。これは初体験…。何が何を図る機械なのかというのは職業柄、
    予想はつくのだが…この検査は何なのか、この機械は何なのか
    全然わからない…。新商品のサンプルが出来ると健康診断という名目で
    会社の社員でいろいろデータを収集している。外部で検査とかすると
    金かかるからって…そこをケチって身内でなんとかしようとしている。
    入社当時からうすうす感づいてはいるが…。でも誰もそれを口外しない。
    そういうのも数年前。うっすら疑問に思っていることを口に出したやつがいて。
    次の日。そいつの机はきれいに片づけられていた…なんていう背筋も凍る
    怪奇現象が起こったせい…。それから、こまめに行われる謎の健康診断は
    暗黙の了解になった。上の人間と開発担当者もずっと黙っているし。
俺みたいな下っ端は「ま。いっか。」の精神で何も疑問に思わず従うしかない…。だが、ささやかな反発を試みるときもある。

■新商品

    ―SE―オフィス
    場面、吉田が務める会社のオフィスに。吉田が田中の席に。

吉田   健康診断うけた?
田中   受けたよ。
吉田   なんかさ、小指に巻いてピピピーみたいのやった?
田中   うん。やった、やった。
吉田   あれ?何?うちの会社のやつ?なんか小指に巻かれて、変な絵とか
    見せられたけど、なんの検査か全然わかんなかった。
田中   あー。あれね。
吉田   田中がつくったやつ?新商品のサンプル?
田中   まだ未発表だから言えない。
吉田   なんで?上にプレゼンしてよかったから、オレらの検査に使ってるわけでしょ?田中 本当、勇気あるね。誰も聞いてこないよ。
吉田   田中君と俺の仲じゃないですか。
田中   そんな仲良かったっけぇ〜?
吉田   お前の結婚式の余興台無しにするぞ。
田中   え!ごめん、ごめん!嘘〜嘘だから〜。
吉田   じゃあ、教えて。
田中   …誰もいないよな?
吉田   いないよ。大丈夫だって。
田中   まぁ…簡単に言えば脳波の検査かな。
吉田   脳波の検査だぁ?
田中   頭の中で考えてることをさ。言葉とか絵とかで説明できなくて困る時ない?
吉田   毎日ですね。そんなことは。
田中   そんな悩みを解消してくれる商品になるかと。
吉田   ほぉ。
田中   これを自分の小指につけて、こっちはパソコンとか、人とか、情報処理の
    能力がある媒体につなげる。
吉田   うん。
田中   頭の中で考えてることが画面に映ったり、人に直接的に伝わったり…。
    あと、言葉以外に気持ちの情報交換できるから、ペットの考えていることも
    わかったり…なんていう機械。
吉田   すげぇいいじゃん。これ。
田中   でも、危ないんだよねぇ。パソコンとかから逆に脳に情報流すこともできるから
    さ。悪用されたら終わり。脳内ドラッグとか、洗脳とかね。
吉田   洗脳?
田中   廃人にボタン操作ひとつで出来ちゃうよ。
吉田   怖いこと、さらっというのね。
田中   だって、こういうこともう8年近くやってますからね。慣れですよ。
吉田   じゃあ、会社の陰謀で俺もさっきの検査で洗脳されたかもしれないなっ!
田中   調べてやろうか?
吉田   調べて、調べて。
田中   では、質問です。会社のことは好きですか?
吉田   大嫌いです。
田中   正常。異常な〜し!
吉田   そんなんでいいのか?
田中   気にしすぎ。大丈夫だから。
吉田   そっか…。ところでさ。
田中   ん?
吉田   なんで小指?脳波の検査用でしょ?

    吉田、田中が開発したであろう商品を小指に巻いて遊んでいる。

田中   …。
吉田   どうした?
田中   ラットで実験したのよ。
吉田   まぁ、最初はね。
田中   脳が溶けたって言われてさ…。
吉田   やばい、やばい、やばい、やばい!

    慌てて小指に巻いてあるものを取ろうとする。

田中   ばかばかばか!丁寧に扱えよ!あと!今の絶対にひみつだからな!
吉田   おぉ、わ、わかりました…。
田中   脳の近くじゃなく、心臓の近くでもなくって考えると小指が一番よかったんだよ。
    ただ、それが偶然の産物だから…なんでそうなるのか原因究明しないと
    商品化出来ないんだ。
吉田   まぁ…当たり前だよな。
田中   あぁ…きょう帰れない。
吉田   新婚なのに。
田中   新婚なのに…。
吉田   きょう何徹目?(徹夜)
田中   …3日目かな。2時間は寝た。
吉田   げー…。
田中   もう、最近、式のことで大げんかばっかり。
吉田   あぁ…やだやだ。だから結婚なんてしなきゃいいのに。お付き合い程度で
    十分ですよ。
田中   そのときはまだ気持ちに余裕があったんだって…。
吉田   こんなの開発しちゃうから。ユカリ。かわいそ〜。
田中   マジ、結婚式でみてろよ。


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