Last Night, Good Night

(ラストナイト、グッドナイト)
初演日:0/0 作者:ひよこ大福
 
あらすじ
それは、言ってしまえば『眠りが深くなる』という病だった。
彼女が一度微睡みに沈んでしまうとまず数分で呼吸が止まる。次に心臓。
徐々に脳の機能が眠るように停止し、そうなれば再び目覚める事は二度と無い。
なんて事は無い、一度眠れば死に至るだけの、そんな病。
睡眠を奪われた彼女に唯一残された生きる手段は、シンプルなものだった。
ただひたすら起き続ける。
彼女は眠らない。現代医療の力に頼り、意識を覚醒させ続ける。
何時間も、何日も、何週間も、何ヶ月も。治療法が見つかるまで。
そうして3年が過ぎた。その生活にも、もう限界が迫っていた。


登場人物
ぼく 彼女の恋人。彼女の見舞いに来ている。
彼女 ぼくの恋人。睡眠障害で眠る事が出来ない。
先生 病院の医師 性別不問。
●  ト書き


Last Night, Good Night

舞台、放送等にてあらすじが表記できない場合、
冒頭に僕ナレーションであらすじを朗読

●夜の病室。しかしベッドだけが無い。
 ぼくは椅子にもたれかかって寝ている。
 彼女がおそるおそると意を決して声をかける。

彼女 っ、おはよう!
僕  ん……
彼女 ねえ起きて。おーい。
僕  ん、ん?
彼女 ……おはよ。
僕  うん、おはよ……ん、いま夜?
彼女 ふふ。なんて顔してるのよ(嬉しそうに)
僕  ……あれ、ごめん。ぼく……あれ?何してたんだっけ。
彼女 えっと。私のお見舞いにきて、そのまま寝ちゃったんだよ。
僕  あ……そっか。そうだったっけ…あぁ、ごめん。よりにもよって目の前で寝ちゃうなんて
彼女 本当だよ。わざわざ私の病室で、しかも私の目の前でよく寝れるね?呆れも通り越しちゃうよ。
僕  ほんと、悪かったよ。
彼女 反省してる?
僕  うん、してる。
彼女 本当かなぁ
僕  本当だって。ごめんなさい。
彼女 ん。なら許してあげる。疲れてたっぽかったしね。……ほら、ドーナツ食べる?おなかすかない?
僕  んー……
彼女 ……すいてない?
僕  残念ながら。
彼女 ……あーっそ。じゃあ私が食べよっかな。
僕  夜中に?太るよ?
彼女 怒るよ?
僕  すいません……あれ、食べないの?
彼女 うん。太るし。……なんてね、食欲あんまりないんだ。
僕  そっか……?(きょろきょろと周りを見渡す)
彼女 どうかした?
僕  いや……なんだろう。なにか忘れてるような気がして……(時計が目に入る)
僕  あっ、ごめん!面会時間すぎてるよね!?すぐ帰るよ!
彼女 おっと。まあまあいいじゃん。そんなに慌てなくても。
僕  いや、でも……まずいだろ?
彼女 もう時間は過ぎてるんだし。それに……どうせ誰にも分からないよ(呟くように)
僕  ……まぁいいか。
彼女 やった。暇つぶし相手確保。この時間帯っていーっつも退屈なんだよね。
僕  へぇ、いつもどうやって過ごしてるの?夜の、この時間はさ。
彼女 あれ、それ前に言わなかった?
僕  ……ごめん。そうだっけ?
彼女 もう……えっと、ふらっと出歩いて屋上で星とか、夜景を眺めたり、
   他の患者さん達とお話したり。ひたすらコーヒー飲んだり。
僕  へぇ。
彼女 あ、でも最近は本とかも読むかな。
僕  本?
彼女 え、なんで驚いたの?
僕  活字、苦手そうだから。
彼女 む、偏見ここに極まれりだね。
僕  冗談。眠くなりそうだな、と思って。
彼女 ううん。平気だよ。薬があるから……それにね、こう入院生活が長いといろいろ手を出してみたくなるの。
   意外と面白いんだ。最近はホラー小説とか……あ、なんか貸したげよっか?お化けとか得意だっけ?
僕  遠慮しとく。病院だと結構シャレにならないだろ、それ。
彼女 あはは、そうだよね。……本当に、そうだよ(含みがある様に)
僕  おーい。あからさまに意味深な反応はやめてくれよ。そういうのいいから。
彼女 ……まぁ病院だからお化けぐらいいてもおかしくは無いじゃない?夜になると足音がひとつ余計に、なんてね。
僕  やめてくれよ。結構マジでダメなんだって。
彼女 もう、情けないなぁ。ま、そういう所も……ん。ほーら、こっちきて甘えていいんだよ?
僕  あのなぁ、1人で帰るの結構怖いんだぞ?一緒について来て欲しいぐらいだよ。
彼女 一緒に、か。そうだね、2人で一緒に行けたらいいのにね。どこか、遠くに。
僕  あー……そうだなぁ。……うん、ならさ。デートしようよ。
彼女 デート?
僕  ほら、僕らってまだ一度も病院の外でデートした事、無いだろ?
彼女 うん。
僕  だから、この病気が……もしちゃんと僕らがおやすみって言って眠れる様になったらさ。デートしよう。どこか、遠くまで。
彼女 おやすみ、か……その言葉。もう3年ぐらい言ってないかな。
   ねぇ、いつか言える様になるかな。二人一緒に、おやすみなさい、また明日。って、
   毎日そう言って、ぐっすり眠れる様になるかな?なるといいなぁ。
僕  なるよ。きっと大丈夫。
彼女 お、言い切るね。その根拠は?
僕  ん、勘かな。
彼女 勘って……まぁ、でも君の勘は当たるしね。覚えてる?
   初めて病院で会った時さ、私の歳と好きな食べ物当てたの!その時も勘って言ってたよね。
僕  えー、そうだっけ?記憶薄いな……初めて会ったとき?
彼女 覚えてないの?(悲しそうに)
僕  お、覚えてる覚えてる!……勘だけど。
彼女 もう!……じゃあ、約束ね。いつか……デート(急に眠そうに)
僕  大丈夫?
彼女 ん……ちょっとごめんね。薬、飲まないと。
僕  それ、いつもの?
彼女 うん、頭に作用するお薬。凄いよ、眠気なんて一瞬でぶっ飛んじゃうんだから。
僕  大丈夫なの?……その、副作用とか。
彼女 それ、前も言わなかったっけ?
僕  ……そうだっけ。ごめん
彼女 忘れん坊だね。……うんん。たいした事ないよ。ちょっと体がだるくなるだけ。
僕  いろいろと危なそうだね。そう聞くと。
彼女 しょうがないよ。この薬のおかげで起きていられて、正気を保っていられるようなものだもん。
   これが無いと私、多分3時間も起きてられないんじゃないかな。
僕  …………
彼女 辛いよ。起き続けるのって。頭痛いし、物忘れも激しくなるし、
   自分が何してるか分からなくなるし、目乾くし。コーヒーなんて飲み過ぎて嫌いになっちゃった。
僕  ごめん。
彼女 ……? なんで謝るの?
僕  僕は……どれだけ傍にいてもその辛さを分かってあげられないから。

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