神無月は2度来ない
『神無月は2度来ない』          作・瀧澤豚琴
    CAST
         は づ き(高1:文芸部員) 
         メ   イ(高1:文芸部員)    
         や よ い(高1:水無月の妹)   
         水 無 月(高2男子:文芸部部長)  

第一場

   文化祭をまもなく迎えようとしている高校文芸部。教科準備室を部室として使っている。下手には廊下、上手側奥は実験室らしい。
   しばらく無人だがやがて、はづきとメイが両手に模造紙やマジック、セロテープやはさみなどの文房具を手に下手より入場。

はづき  ねえ、カンナ祭の作家紹介、誰にするか決めた?
メイ   ちょっと、今頃何言ってるの?
はづき  今頃って・・・・あれ、締切いつだっけ?
メイ   あのさ、今手に持ってるもの何?
はづき  う〜ん、模造紙と、マジック!
メイ   で? 今日これからすることは?
はづき  さあ、なんでしょう?
メイ   これからその作家紹介書くんでしょうが! そのための模造紙だよ、これ!
はずき  へぇ〜、そうだったんだ。
メイ   ・・・・・てことは、当然原稿できてないんだよね。
はづき  うん、どうしよう〜
メイ   どうしようって・・・・・、あんた、誰か好きな作家とか、好きな本とかないの?
はづき  ない!
メイ   言い切ったねぇ〜。はづき、あんた文芸部員だよね。
はづき  そうよ。悪い?
メイ   開き直るな。本ぐらい少しは読みなさいよ。
はづき  え〜、メンドイ。
メイ   メンドイって・・・・じゃ、なんで文芸部入ったわけ。
はづき  あれ、言ったと思うけどな。あたし、俳句がやりたかっただけだもん。
メイ   あ〜、ごめん、忘れてたわ。あんた、入り口お茶だっけね。
はづき  そうだよ。あの運命の日、なにげにペットのお茶飲んでてさ、出会っちゃったんだな〜、俳句に。
     あ、そうだ! 最近ねぇ、新しい出会いがあったんだ。
メイ   へ〜、何?
はづき  知らないかな、ほら、生命保険会社がやってるやつでぇ・・・、あの悲哀に満ちたお父さんたちの叫びが、何とも切ないんだよね〜。
メイ   ああ、サラリーマン川柳ね。
はづき  そう、サラ川!
メイ   俳句じゃねえし。
はづき  まあ、固いこと言わないで。
メイ   それはいいけどさ、で、どうすんの? これ。(と模造紙を示す。)
はづき  これって、ああ、作家紹介?・・・そういわれてもなぁ、あたし、誰も知らないし・・・
メイ   誰もって事はないっしょ。
はづき  まぁそうだけど・・・でも、紹介したい人ってなるとねぇ・・・・
メイ   それもそうか。・・・・じゃあさ、何か気に入った俳句を紹介するってのは?
はづき  え? いいの?
メイ   だってしょうがないじゃん。いいよ、あたしが許す。
はづき  本当? 助かった。メイちゃん、ありがと。
メイ   さ、そうと決まったら、作業に取り掛かろうか。
はづき  アイアイサー!

  二人それぞれにテーブルの場所を確保し、作業を始めようとする。
  やがて、しばらく空を睨んでいたはづきが口を開く。

はづき  ・・・って、あたし、そんなの暗記してるわけじゃないし。
メイ   今気付いた?
はづき  しょうがない、お茶買ってくるか。
メイ   って、どんだけ買う気だよ。
はづき  へへ〜、ま、行ってくるわ。

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