尽生

(じんせい)
初演日:2013/8 作者:空色こうもり
登場人物
   女子高生
   中年男性
   ニート
   天使
   助手(妻・母・綾)(♀)
 
 
   ― 幕 ―
 
   舞台は壁などで三つに分けられている。(ただし、間を行き来できるようにはなっている)舞台中央、中年男性がいる。何故ここにいるのか分からない様子。
   上手側より女子高生が登場
 
  女子高生「すいませーん……。あのー……。誰かいませんかー……?」
  中年男性「あ!あの」
  女「うわっ!えと……、誰か、いるの?」
  中「あ…はい。あー、とりあえずそっちに行ってみましょう」
 
   中年男性、声のした方に向かおうとする。
 
  女「ちょ、ちょっと待ってよ!」
  中「?どうしました?」
  女「あんた、誰?」
  中「は?僕は…」
  女「私をこんな所に連れてきて、どうするつもり?」
  中「はあ!?」
  女「言っとくけど、誘拐してうちに身代金せびろうたって思っても無駄だから」
  中「誘拐!?」
  女「私父親とすごく仲が悪いの!あいつがお金出すとかありえないから!」
  中「ちょっと待ってくれよ。誘拐って何のこと?」
  女「大体、なんなの?ここ…。無駄に広いし…。何も無いし…。そのわりに、人工的というか…」
  中「お、おい!とりあえず落ち着けって…!」
  女「動かないで!」
  中「…」
  女「いい?その壁からちょっとでも出たら許さないから」
  中「なんなんだよ…」
 
    呆れ返る中年男性。下手側よりニート登場
 
  ニート「えっと…。すみません」
  女「何!?誰!?…仲間!?」
  二「は?」
  中「悪いんだけど、彼女を説得するのを手伝ってもらっていいかな」
  二「…説得?」
  女「口車に乗せて連れて行こうとしたって無駄だからね。私そんなにバカじゃないから」
  二「…何言ってるんですか?」
  中「さっきからずっとこの調子なんだよ」
  二「………バカ?」
  女「バカって言うな!」
  中「まあ、彼女は置いとくとして…。君はここがどこだか分かる?」
  二「さあ…」
  中「えっと……とりあえず、そっちに行ってもいいかな」
  二「はあ……」
  女「ああああああ!!!ちょっ…」
  中「なんだよ、うるさいなあ」
  女「分かったわ。あんた、そこの人も誘拐するつもりなんでしょ!」
  中「はあ!?」
  女「そこの人と仲間じゃないって言うなら、それしか無いじゃない」
  二「そうなんですか!?」
  中「は?」
  二「あの…、俺を誘拐しても何の価値も無いから止めといた方が良いと思いますけど…」
  女「そ、そうよ!こんなことしたって何もならないわよ!」
  二「多分身代金とか、払わないだろうし…」
  女「あ、それ分かる」
  中「共感するところ違うだろ!」
  女「うるさいわね!とりあえず黙って私達を家に帰して、警察に自首しなさい!」
  二「あの、俺…、自分の部屋じゃないと落ち着かないんで、帰っていいですか」
  中「……どうしろっていうんだよこのダブルバカ…」
  女「(同時に)バカじゃない!!」
  二「(同時に)バカじゃありません」
  中「………。よし、分かった。こうしよう。僕はとりあえずここから動かない。だから、君たちもギャーギャー騒ぐな」
  女「そんなの信用できるわけ……」
  中「僕だって!!!…ここがどこだか分からなくてイライラしてるんだ。訳の分からないこと言ってる暇があるなら早く帰りたいんだよ」
  2人「………」
  女「……分かったわ。でも!絶対怪しい動きとかしないでよ」
  中「…分かった」
 
   間。
 
  二「……あの」
  女「何よ」
  二「……早く帰りたいんですけど」
 
  2人ずっこける。
 
  中「知るか!!僕だって帰れるものならさっさと帰ってるよ!!」
  女「私だってそうよ!!………学校だってあるし」
  中「学校??え、君、もしかして学生なの?」
  女「えっ?違うの?」
  中「僕は高校生の子供ならいるけど。今年で46歳だよ」
  女「……おじさん、やっぱり誘拐犯なんじゃないの?」
  中「なんでそうなるんだよ!!」
  女「そっちの人も?おじさんなの?やっぱり誘拐犯?」
  二「…俺は21です」
  女「誘拐h…」
  二「誘拐犯でもおじさんでもありません」
  中「もういい加減、誘拐云々は忘れないか?」
  女「何いってんのよ。絶対騙されないからね」
  二「…もうあの人はほっといて良いと思いますけど」
  中「ああ、そうするよ…」
  女「ちょっ…。それどういう…」
  中「(遮るように)ところで!君は21歳って事は、大学生?それとも働いてるのか?」
  二「…別に」
  中「別に!?えっと…どういうこと?」
  女「えー?おじさん分かんないのー?」
  中「(無視)じゃあ今は何してるの?」
  女「ちょっと!無視しないでよ!」
  二「何もしてないですけど」
  中「え?」
  二「俺、人付き合いとか、苦手なんで」
  女「私だって苦手よ!」
  中「(……じゃあ、普段は何してるの?」
  二「ゲームとか…」
  女「ねえ!ちょっと!!」
  二「まあ、そんな感じです」
  中「それって…つまり引き…」
  女「ああああああ!!!もう!ちょっと!無視しないでよ!私、無視されるのすっっっごく嫌いなの!」
  中「はぁ…。僕の言ったことをずっと無視してたのは君だろう」
  女「はあ?」
  中「なんっかワケの分からないことばっかり言ってさあ」
  女「何イライラしてんの?」
  中「だからさっきからイライラしてるって言ってるだろ!ワケ分かんないやつらとワケ分かんない場所にいてワケわかんない疑いかけられて!イライラしないわけが無いだろ!」
  女「ちょっと。私たちに八つ当たりしないでよね」
  中「うるせえな!八つ当たりも何もそもそも元凶はお前なんだよ」
  女「へえー…え。おじさん、本当はそーゆー性格なんだねー」
  中「そうだよ。人が下手に出てりゃ調子のりやがってガキのくせに」
  女「うっわー。性格わっる―。人が自分より年下って分かった途端それなんだ」
  中「お前こそ、年上にもっと敬意ってもんを払ったらどうだ?」
  女「はあ?そういうの押し付けるのってどうなの?あんた、絶対友達いないでしょー」
  中「へえー。そういうこと言ってくるって事は、お前友達いないんだな」
  女「…変な事いってこないでよね」
  中「正論だろ?小学生…もしくは幼稚園児?」
  女「私は高校生よ」
  中「へー、高校生なんだー。あんまりバカだから、小学生かと思っちゃったー」
  女「何この人、めちゃくちゃムカつくんだけど」
  中「俺はずっと前からムカついてるけどな」
  女「…ちょっと、黙ってないであんたも何か言ってやりなさいよ」
  二「(無視)」
  女「ねえ!!聞いてるの!!!」
  二「(めんどくさそうに)……なんですか。俺を巻き込まないで下さい」
  女「私達が年下だからってこんな風に威張られて、ムカつくでしょ!」
  二「めんどくさいんで」
  女「めんどくさいってねぇ…。……ムカつくのよ!すぐめんどくさいとか苦手だとか言って何もしないやつ!」
  中「ああ、それは同感だな。人付き合い苦手―。めんどくさいから働かないー。とかさ。今の若者はそんなんばっかだよ」
  女「ちょっと!私も一緒にしないでよ」
  二「……出来るやつはそんな事がいえるんだ…」
  女「はあ?」
  二「…自分の部屋にしか居場所が無い人だっているんだ…」
  女「…ムカつく。私の周りにもいるのよあんたみたいなやつ!やろうともしないで出来ないとか!無責任に逃げるやつ!!」
  二「うるさいな!!お前らに、お前らに俺の気持ちは分からない!!」
  女「分からないわよ!!他の人の気持ちなんて何も気にせず逃げられる人の気持ちなんてね!!」
  二「うるさい!!すぐ人の事見下しやがって…!!」
  女「私をこんなおじさんと一緒にしないで」
  中「ああ?お前だって見下してんだろうが!」
  天使「そうですねぇ。いや、全くその通りですよ」
 
   いつの間にか天使がいる。
 
  天「立場が変れば人はいつだって悩みも変わりますからねぇ。人の気持ちと言うのは全くどうして分からないものなのですよ」
  女「だだだ、誰!?誘拐犯!?」
  天「誘拐犯?はて、なんのことで……」
  中「だから言っただろ俺は犯人じゃないって」
  女「このいかにも怪しいやつとおじさんが仲間じゃないなんて誰にも分らないでしょ」
  天「いやあの」
  中「ほんとむかつくクソガキだな。じゃあ言わせてもらうけど、そうやって言ってくるお前が犯人なんじゃねえの?」
  女「はあ?あんたみたいな性格悪いおっさん誘拐して何になるっていうのよ。大体か弱い女の子が男二人を誘拐対象に選ぶわけないでしょ。頭悪いんじゃないの?」
  天「おーい」
  中「頭悪いのはお前だろ。仲間呼んでる時点で女男がどうとかいうもんだいいじゃねえんだよ」
  二「もうどうでもいいんで早く家に帰りたいんですけど」
  天「すーみーまーせーーん!!!あのー、こういうこと言うのもあれなんですけど、せっかく登場したので、もう少し私に興味を示してもらってもいいですか?」
  中「うるせえな、何だよ?」
  天「はーいはーい!!ご注目ありがとうございまーす!ではでは気を取り直しまして。自己紹介が遅れましたね。私は…」
  中「おい、どうしたんだ?」
 
   懐から紙(カンペ用紙)を取り出す
 
  天「…あれ?なんだっけ?…あーーそうだそうだ。『皆さん初めまして。私は、ここの案内人をしております。本日は、皆さんに有意義な時間を過ごしていただけるよう、僭越ながら私、全力でサポートさせていただきます。ちなみに、ここの案内人は通称『天使』と呼ばれておりますので、皆さんもどうぞそのようにお呼びください』」
  女「信用ならない文章ね…」
  天「長いんだよこのマニュアル…寝起きの頭にはつらいっての…」
  女「何?誘拐犯のくせに寝坊?ダサッ」
  天「なっ…!!私は寝坊などしておりません!!私が遅れたのは…」
  中「遅れたのか」
  天「…………。コホン。私が遅れたのは……(間)……皆さんを観察していたからです」
  中「今、変な間があったぞ」
  女「絶対寝坊したのよ」
  天「ち、違いますよ!!」
  二「……あの」
  天「はい。……やっと私に興味を…」
  二「寝癖ついてますよ」
  天「うわああああ!えっ!嘘!どこ!!…あ、いや、これはあの!決して寝癖などでは…」
  二「嘘です」
  天「…………………」
  女「やっぱり寝坊だったのね」
  二「…そんなことより、早く帰りたいんですけど」
  中「そうだよ。ここどこなんだよ。お前がここに連れてきたんだろ」
  天「…ああ、はい。そうですね」
  女「明らかにテンション下がってるわよ」
  中「っていうか、俺の疑いは晴れたんだろ?とりあえず、みんな集まった方が分かりやすくないか?」
  女「まあ、そうね。そういえばお互いの顔もまだ知らないんだっけ」
  天「ちょちょちょちょ!!!!勝手に動かれたら困るんです!!」
  中「はあ?」
  女「何でよ」
  天「あの……ここの規則で、ここに来ていただいた人たちには、お互いの顔を見せてはいけないようになっているのですよ、ハイ」
  女「はあ?意味わかんない」
  天「まあまあまあ、落ち着いてください」
  二「あの…」
  天「はい?」
  二「顔見なくていいんで、早く帰り…」

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