闇人と光人
『闇人と光人』

登場人物

闇人

光人




     全身を白でまとめた服を着た光人が仕事をしている
     全身を黒でまとめた服を着た闇人がやってくる
     フード付きの上着を着ている

闇人 (光人を指す)まず、彼は仕事ができます。とても有能です。与えられた仕事は
   素早くこなし、アフターフォローも完璧です。
   彼は、人望があります。いつも明るく、他人に対して文句を言いません。厄介な
   上司からの無茶な頼みも、嫌な顔ひとつ見せません。だから、彼の周りには、人
   が集まります。
   当然です。人は、自分に足りないものを持つ者に惹かれます。それが羨望であれ
   嫉妬であれ、惹かれてしまいます。
   彼は謙虚です。常に、相手を立てることを忘れません。男であれ女であれ、先輩
   であれ後輩であれ、その人の美点を見つけることが、とても上手いのです。
   爽やかです。優しいです。ジョークも上手い。意識も高い。

     闇人、呼吸を整えて光人を見る
     その表情には嫌悪が浮かぶ

闇人 まさに聖人君子です。彼は光を放ちます。私には、見ることすらかないません。
   わかりますか、彼は眩し過ぎるのです。時おり、危うさすら感じさせる程に。私
   が彼に近づけば、たちまち浄化されて死にます。冗談ではなく、本当です。彼と
   私は、人種が違います。人が手を伸ばしても決して天は掴めないように、彼とは
   絶対的な隔たりがあるんですね。
   私がなぜ、こんな表情を浮かべているのか、おわかりでしょうか。いいえ、私は
   決して彼が嫌いだとか、そういう感情はありません。ただ、怖いのです。光を放
   つ、彼の笑顔が。なぜなら、私は、彼とは対極の存在だからです。

     光人、仕事を終え、闇人の方へ近づく
     闇人、咄嗟にフードを被り、距離を取る

光人 (闇人を指す)あいつとは、同僚なんだけど、ちゃんと話したことがない。無口
   で、いつも一人でいる。時々、どこにいるかわからない時がある。
   なぜか、同僚からのあいつに対する評判は悪い。上司もそうだ。
   どうしてだろう。あいつは、ちゃんと仕事をしてる。何も、悪いことはしていな
   い。だから、俺はもっとあいつのことを知りたいと思っている。
   だけど、距離があるのだ。よくわからないけど、遠い距離がある。多分、お互い
   のことを知ることができれば、近づくことができるだろう。

     光人、闇人に近づく
     闇人、距離を取る

     光人、闇人に近づく
     闇人、距離を取る

光人 (近づくことを諦める)なあ、今度飲み会があるんだけど、お前も来ないか?

     闇人、びくりと体を震わせる
     周りを見渡し、「自分に言ってるの?」という仕草
     光人、首肯する
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