失恋クエスト
失恋クエスト

勇者:名前はロン。剣と鎧で武装した勇者
少女:名前はソニア。魔法使い。勇者の仲間。黒い三角帽子と木の杖を装備
魔王:世界征服をたくらむ魔族の王。黒いマント。頭にツノ

公演時間:8分


魔王「よく来たな、勇者よ」
勇者「魔王! おまえを倒して世界に平和を取り戻す!」(剣を構える)
魔王「まぁ、待て。戦う前に言っておきたいことがある」
  「余の仲間になれ。世界の半分をやろう」
少女「はっ、バカバカしい! 勇者がそんな誘いにのるはずないでしょう? ねぇ、勇者?」
勇者「半分か……」
少女「え?」
勇者「(剣をおさめる)ちょっと……考えさせてくれるか?」
少女「ええええっ?」(勇者の肩につかみかかり、激しくゆすりながら)
  「ちょっ、ちょっと! あんた、何考えてんのよ! 大丈夫? 正気?」
勇者「ま、待て! 落ち着け!」
少女「その言葉、そっくりそのままあんたに返すわよ!」
  「どういうことなの? なんで、あんな悪の誘惑にひっかかるのよ!」
勇者「ひっかかってねえよ、まだ!」
少女「まだ? まだって何! これから、ひっかかるってこと?」
勇者「もちろん断るって! ただちょっと、ゆっくり考えたいかなぁと……」
少女「断るんなら考える必要ないでしょうが!」
魔王「フハハハハ! 嬉しいぞ、勇者よ! 余の仲間になるというのだな」
勇者「いや、だから決めたわけじゃ……」
少女「勇者、どういうことよ? あんたは馬鹿で単純だけど、正義感だけは人一倍だったはずなのに。そのあんたが……」
勇者「ああ……でも俺もこの旅でいろいろあって……」
少女「そっか……僧侶のことを気にしてるのね。確かにショックを受けるのも分かる。あいつが実は魔王軍から送り込まれていたスパイだったなんて。でも……」
勇者「いや、関係ないよ」
少女「え? じゃ、じゃあ、勇者のお父様のことね! あたしは信じてる。お父様は必ずどこかで生きてるはずよ。火山に落ちたくらいで、あの人が死ぬはずが……」
勇者「いや、それも関係ない」
少女「天才占い師ネロが『どんな道を歩もうと死と破滅は避けられない』って言ってたこと?」
勇者「あんま気にしてない」
少女「龍神王シャイザードが『人間はきわめて愚かで迷惑で、この星にとっての害虫である』って言ってたこと?」
勇者「あれは難しくてよく分かんなかったな」
少女「え〜っと、それじゃあ」
勇者「実はさ…………」
  「俺……好きな娘にふられたんだよ」
少女「……え? それだけ?」
勇者「それだけとは何だよ!」
少女「あ、うん、ごめんなさい。で、相手は誰よ?」
勇者「王女様」
少女「あー、あたしたちに魔王討伐を命じた王女様? あんたあの人のこと好きだったんだ。」
勇者「ああ。で、ここに来る前に王女様に会いにいったんだよ。もしかしたら最後になるかもしれないし。そしたら王女の部屋から男と話してる声が聞こえてきて……」
少女「へ〜! で、どうしたの?」
勇者「鍵穴から覗いてみた」
少女「勇者がそんなことするな!」
勇者「……すいません。」
少女「で、誰がいたのよ」
勇者「……商人と抱き合ってた」
少女「商人? あたしたちの仲間の?」
勇者「そう! その!」
少女「えー! あの二人って付き合ってたんだ!」
勇者「だろ! ありえねえだろ?」
少女「へえぇ〜」
魔王「あー、ちょっと待ってくれるか」
  「話が見えぬのだが……その、商人とやらは何者なのだ?」
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