若者たち
かんから館 第三十四回公演

若者たち

作  川村  武郎


  〈登場人物〉

   須藤賢作(老人)
   片山栄二(老人)
   木山英子(老人)
   神谷和代(老人)
   田中美和(介護士)
   高村光太郎(介護士)
   島瑞穂(介護士)
   川崎雅之(所長)





    ある老人介護施設。
    二人の男(須藤と片山)がイスに座って雑談している。

須藤   なんだかんだ言ってもね、やっぱり、結局、つまるところ、要するに、バストなんだよね。
片山   バスト?
須藤   そう、バスト。おっぱい、おちち、乳房。やっぱり、女は畢竟バストなんだよ。
片山   そうかなあ?
須藤   当然だろ? それも、やっぱり巨乳がいいよね。巨乳、ボインちゃん。Fカップ、Gカップ、Eカップ、Hカップ、ああ、想像するだけでワクワクするよねぇ。綾瀬はるかなんかのボインを眺めてたりすると、もうね、劣情を喚起せしむるって言うか、むしろ荘厳な気分にさえなったりさえする。
片山   イマドキ、ボインちゃんなんて言わないだろ? それに、キミは綾瀬はるかのを実際に見たこととかないだろ?
須藤   当たり前だろ。写真だよ、写真。水着写真のあの下に隠されたものを想像力をたくましくしてだね‥‥
片山   かなあ? オレ、でかすぎるのはあんまり好きじゃないなあ。
須藤   え? どうして?
片山   どうしてって、なんか牛みたいじゃん。
須藤   牛? なんだよ、それ?
片山   ほら、北海道のホルスタインなんかの乳しぼりの風景? ああいうのと完全にダブっちゃってさ、なんかそのワクワクとかできない。
須藤   人間と牛は違うだろ?
片山   似たようなもんだよ。乳房だけ見てたら。それも、FとかGなんかになったら、それこそホルスタインそっくりだよ。
須藤   え? 欲情とかしないわけ?
片山   しないしない。むしろ萎える。
須藤   それって、おっぱいのでかさの話じゃなくって、単にあっちの方の問題じゃないの?
片山   失敬なことを言うな。オレはまだまだ、全然現役だよ。
須藤   マジで?
片山   マジマジ。大マジだよ。
須藤   無理してかっこつけなくてもいいよ?
片山   つけてない!
須藤   へぇー。‥‥まあ、そういうことにしておいてやるよ。武士の情けだ。
片山   何が武士の情けだ?
須藤   じゃさ、巨乳が嫌いだとすると、ひょっとして貧乳とかが好みなわけ?
片山   だから、オレはバストで女を見たりしないから。
須藤   何フェミニストぶってかっこつけてるの?
片山   だから、つけてないって!
須藤   じゃさ、どういう女がお好みなわけよ? 具体的にさ?
片山   それはさ‥‥ケースバイケースだよ。
須藤   だから、例えば、女優とかタレントで言うと?
片山   最近の女優は知らんからなあ。
須藤   最近じゃなくてもいいからさ。
片山   うーん。例えば‥‥
須藤   例えば?
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