サンシャインズガーデン

〜流星☆忍者ギャラクシーエース〜

(さんしゃいんずがーでん りゅうせいにんじゃ ぎゃらくしーえーす)
初演日:1997/3 作者:いしどおたいち
『サンシャインズガーデン 流星忍者 ギャラクシーエース』


男1   サカマキ
女1   ペンギン
男2   ネズミ/フクハラ
女2   カオリ
男3   トンボ
女3   ミツバチ/キヨミ

        幕が開く。
        舞台は、東京の地下深くにある、誰も知らない町。
        下水道の中にある町。
        暗い地下深く。下水道の世界。
        じめじめと薄暗く、明りはほとんどない。
        聞こえるのは、絶えることなく下水を流れる水の音と地下鉄の音。
        元気なのはネズミや昆虫くらい。そこに住む人々は、息をひそめ、
        いつも何かに怯え、這いずり廻りながら暮らしている。

        暗闇の中、声が聞こえる。
        それは王の声。
        この町を支配する王の声。
        やがて杖をついた王の姿が見えてくる。
        地下の世界の王はネズミの王。
        横に、女を一人立たせている。
        しかし二人の顔を見る事は出来ない。

男2   やあ皆さん。今日も元気でなによりです。子供は元気が一番です。下水道の中を這いずり廻り、僅かな食べ物を漁る立派な大人になるために、毎日の健康には特に気を配らなければなりません。良く思い出してください。あなたたちが何を成すべきなのか。あなたたちはこの下水管を這いずりまわり、食べ物を漁り、貪るように食らう。そして子供を産み、食べ物の漁り方を教え、そして死んで行くのです。それが大事なことなのです。皆さん、お体だけはお大事に。
        そして一日でも早く立派な大人になるのです。

        王の演説を聞く沢山の人々がいる。

男2   さあ、大人になりましょう! この国のために、皆さんのために、私のために!

        ゆっくり暗くなる。
        薄暗闇の中、子供の声。

男3   待ってよ、もう走れないよ。
女1   なにやってるの、早く! 早くしないと!

        女1と男3が現れる。

女1   あそこを登れば地上に出るはずよ! さあ、早く!
男3   ペンギン! あいつらだ! 追いかけて来た!
女1   上へ登っちゃえば追いかけて来れないわ。登るのよ!
男3   地上には、本当に彼はいるの?
女1   探すのよ! 必ずいるわ。そして私達を助けてくれる!
男3   絶対に?
女1   絶対よ。捕まって大人にされたいの? 早く、早く行こう!

        女1、男3、退場。
        再び暗くなりはじめ、あたりは闇に包まれる。
        暗闇の中、再び声。

男2   さあ、大人になりましょう! この国のために、皆さんのために、私のために!

        それをかき消すように、テレビのノイズ、チャンネルを合わす音。
        やがてチャンネルが合う。
        テレビ番組、「流星★忍者ギャラクシーエース」のテーマ曲が流れ始める。

声   流星忍者ギャラクシーエース。

        明りが入ると、そこはアメリカ西部の片田舎。
        男1(サカマキ)と男2(フクハラ)が対峙している。
        男1は杖をついている。

男1   こっちから来てやったぜ? 正義の保安官、クリストファー! 俺様が牛4頭をぺろりと平らげる、泣く子も黙る大悪党、赤目のジョー様だ。ぐわっはっはっは!
男2   貴様は、赤目のジョー!
男1   そのとおり! 西で弱ってるじじいがいれば、走って行って撃ち殺した後で金目のものを漁る! 東に凍える女が居れば、手荒くあっためてやった後で金目のものを奪う! そんなイカシた大悪党さ!!
男2   良く来たなジョー。決着を着けようか。貴様を逮捕する。
男1   ずいぶん偉そうな口が聞けるようになったな、クリストファー!  まだくまさんのぬいぐるみがないと眠れないのか? ああ?
男2   .....抵抗するなら、この場で射殺する!
男1   やれるものならやってみろ!
男2   勝負だ!  バン!
男1   ぐわ。
男2   ジョー! なぜ、なぜ撃たなかった! なぜ撃たなかったんだあ!
....さらばだ、ジョー。お前の事は一生忘れはしまい!

        立ち去ろうとするクリストファー。
        しかし、ジョーは立ち上がる。

男1   待て、クリストファー。
男2   ジョー?
男1   ぐわっはっはっは! 赤目のジョーは、宇宙からやってきた不死身のエイリアンだったのだ!
男2   なんてこった、バンババン。
男1   ぐわっはっはっは。効かないなあ。ありゃ、ビーム!
男2   うぎゃあ、痛い!
男1   絶体絶命の大ピンチだなあ、正義の保安官!
男2   絶体絶命の大ピンチだぞ、正義の保安官!
....しかし! その刹那! 一条の光が雲の切れ間から!
男1   ぐああ! なんだ、何事だ!
男2   暗い銀河の片隅に 明るく光る星一つ
つらい浮世の徒然に 醜く蔓延る鬼を討つ
男1   お、お前は!
男2   そうさ、そのとおりさ! この世に悪が蔓延る時に、強く輝く星一つ! 正義に輝く
星一つ!! 流れる星は正義のしるし、変身! 流星忍者、ギャラクシーエース!!
        .......カット。

        二人の緊張が一気に解ける。

男1   どうでした、フクハラさん?
うにゃららら(と、宇宙からやって来たエイリアンの芝居をする) 僕のエイリアン。よかったですか?
男2   よくねえよ。お前何だよ、さっきのは。何なんだよ、くまさんの縫いぐるみって言うのはよ。勝手にセリフ変えるんじゃねえよ。
男1   すみません。悪気はないんです。でも、その方がなんて言うか、キャラクターが活きるような気がしまして、
男2   いいんだよ、別に活かさなくてもさ。こりゃぁ、俺の番組なんだから。俺だけ活きてりゃそれでいいの。
男1   すみません。でもですね、やっぱり、敵役のキャラクターが立ってた方が、主役も生き生きすると思うんですよね。それでですね、俺、考えたんですよ。赤目のジョーはクリストファーの育ての親なんですよ。しかしクリストファーが小さい時にですね、
男2   ちょっと待てよ。サカマキ、お前なんか勘違いしてないか? 蒲田行進曲やってるわけじゃないんだぞ?
男1   は?
男2   俺たちは別に、命掛けて映画撮ってるわけじゃないんだよ。ギャラクシーエースだぜ? お子様向けの娯楽番組だぜ? 深いストーリーだとか生き生きしたキャラクターだとか、必要だと思うのか? 子供にゃそんなものいらないだろう? 悪い奴でてきて、それを俺がやっつけりゃ、子供はみんな玩具(おもちゃ)買ってくれるんだよ。
それでいいんだよ。
男1   でもですね、
男2   でもですね、っておまえ、なんか文句あんの? そういう事はね、自分で番組持てるようになってから言いなさいな。赤目のジョーだって、お前が仕事がないって言うからわざわざ探してきてやったんだろうが。ちょっとは感謝しろ。今度勝手にセリフ変えたりしたら二度と仕事回してやらないからな。それともまた駅の地下道に戻るか? 地下道座り込んで、ラッセンやらヒロヤマガタの絵、売って暮らすか?
男1   .....すみませんでした。
男2   わかりゃいいんだよ、わかりゃ。これから気をつけろよ。

        女3入る。

女3   失礼。
男1   あ、キヨミさん。お久しぶりです。
女3   (男1には眼もくれず)サトル、まだ? もう終わったんでしょ?
男2   ああ。今終わったところだ。ちょっと待っててくれよ、今着替えるから。
女3   約束忘れてたんじゃなくて?
男2   そんなわけないだろう。さて、じゃ、俺上がるからさ。後よろしくな、ギャラクシーエース。
男1   あ、ハイ。
男2   もうたいしたシーンねえからよ、頼んだぜ。あと、スタントも少しあるからな。お前がしょぼいと俺までしょぼく見えるんだからな。
男1   任せておいてください。
男2   全くどこまで信じていいんだか。(去りかけて)あ、そうだ。
男1   なんですか?
男2   お前のエイリアンの芝居な、
男1   うにゃららら
男2   それ、グッ!
男1   そ、そうですか! うにゃららら
男2   うん。グッ!

        男2、女3、揚々と去る。
        後には男1が残される。
        やがて男1、ギャラクシーエースのポーズを研究し始める。
        そこに、女2 (カオリ) 入ってくる。
        舞台はサカマキの記憶の中。
        半年ほどさかのぼる。

男1   うりゃ、変身!
女2   サカマキ。
男1   カオリ。
女2   なにをやってるの?
男1   研究だよ、役作り。
女2   あら、何か役もらったの?
男1   ああ。フクハラさんのおかげでね。秋からの新番組。
女2   ホント? よかったじゃない。どんな役なの?
男1   へへへ。じゃあ、ちょっと見てよ。
暗い銀河の片隅に 明るく光る星一つ
つらい浮世の徒然に 醜く蔓延る鬼を討つ
この世に悪が蔓延る時に、強く輝く星一つ!
正義に輝く星一つ!!
女2   主演?
男1   流れる星は正義のしるし、変身! 流星忍者、ギャラクシーエース!!
.....の、えーっと、スタントマン。
女2   でも主役じゃない! すごいわ!
男1   まあね。

        男1、鼻歌混じりにギャラクシーエースの衣装を着て見せる。

男1   どう?
女2   よく似合う。
男1   そうか?
女2   夢叶ったって訳ね。
男1   夢?
女2   あら、子供のヒーローになるのが夢だって言ってたじゃないの。
男1   まだだよ。…スタントだけだぜ?
女2   ヒーローには違いないわ。お祝いしなくちゃ。
男1   バカ、大げさだよ。
女2   大げさなものですか。今日はゆっくり出来るの?
男1   ああ。まあね。
女2   じゃ、わたしなんか食べるもの買ってくるわ。ここにいてね。
男1   わかった。

        女2、去りかけて、

女2   ねえ、サカマキ? ショートケーキ?
男1   え?
女2   ケーキよ。お祝いなんだから、ケーキいるでしょ。チーズケーキ?
男1   誕生日じゃないんだから。
女2   なに言ってるのよ、お祝いにはケーキなの。チョコレートにしよっか、ねえ、
サカマキ。
男1   お前の好きなようにしろよ。任せるから。
女2   じゃあ、チョコレートシフォンにしよっかな。
(振り返り).....ねえ、サカマキ。約束覚えてる?
男1   僕の夢が叶ったら?
女2   なんだ、覚えてるんだ。なんでもない。

        女2、去る。
        それはサカマキの思い出の中の情景。
        思い出に酔う男1に女3が声をかける。

女3   ねえ、サカマキ。
男1   忘れるわけないだろ。でも、まだだよ。僕の夢ってのはさ、
女3   ねえ、サカマキ。
男1   なんだよ、カオリ。あ、キヨミさん。
女3   キヨミさんよ。なにボーっとしてるのよ。仕事しなさい、仕事。
もうスタンバイ出来てるみたいよ。あなた待ち。
男1   あ、すみません。今行くところです。
女3   早く行かないと、首だって言ってるわよ。
男1   わあ、今行くって言ってください。
女3   (からかいながら)サカマキ、今週の敵はね、超電磁誘導怪獣ギャメゴンよ。強いわよ。気をつけなさいね。
男1   ギャメゴンですか?
女3   先々週の怪獣の色、塗り替えた奴だって。
男1   何色ですか?
女3   今週のはオレンジ。強いわよ。骨ぐらい折れた方がいい画が撮れるって。
男1   ハイ、死ぬ気で頑張ります。

        女3、去ろうとして、

女3   あなた、まだカオリちゃんのこと考えてんの?
男1   いえ、そんなことはないです。
女3   そう。なら、いいけど。何で別れたんだっけ?
男1   さあ。忘れちゃいました。
女3   きっと才能ないの、気づかれちゃったのね。
男1   ......。
女3   あんたも早く気がつけば?
男1   .......キヨミさん!
女3   ん?
男1   うにゃららら
女3   なにそれ。

        女3、去る。
        男1、あわてて支度をし、行こうとする。
        そこに女1が駆け込んでくる。

女1   見つけた!
男1   ?
女1   やっとみつけたよ! 散々探したんだから!
男1   き、君、どこから入ってきたの?
女1   (取り乱し)どこからだっていいでしょ! お願い、助けてよ!
男1   ちょっと落ち着きなさい。君、名前は?
女1   (深呼吸して落ち着いて)私はペンギン。
男1   は?
女1   だから私はペンギン。名前はって聞いたでしょ。
男1   ペンギンて名前なのか?
女1   そうよ。私はペンギン。
男1   南極にいるペンギン?
女1   そう。そのペンギン。夜空いっぱいにペンギン座が輝く夜に産まれたからペンギン
男1   ペンギン座? 聞いたことないな。最近出来たのか?
女1   昔からあるわよ。寒い寒い冬と暑い暑い夏の間にホンの少しだけ輝くの。
男1   やっぱり聞いたことないぞ。
女1   聞いたことないの? 非常識な人ね。ねえ、あなた、ギャラクシーエースでしょ。
男1   は? (自分の格好を見て照れくさそうに)あ、ああ。まあ、そうだよ。それでペンギンさん、こんな所で何をしてるのかな? お母さんはどこに行ったの?
女1   (からかうように)お母さんはずっと前からいないわ...。
男1   (真に受けて)あ、ご、ごめんよ、
女1   嘘ピョン。
男1   .....。
女1   私ね、ギャラクシーエースを探しに来たの。
男1   ギャラクシーエースを?
女1   そう。あなたに助けて欲しいことがあるの。
男1   なんで僕に。
女1   あなたギャラクシーエースでしょ。
男1   え? まあ、えっと、実はそうなんだけど、

        そこに男3が入ってくる。

男3   ペンギン!
女1   トンボ、遅いよ!
男3   だってペンギン、どんどん行っちゃうんだもの!
男1   (遠くに向かって)あ、はい! 今行きます! (向き直り) なあ君達、
男3   あー!! ギャ、ギャ、ギャラクシィィエースだぁ!!
男1   そうだよ。ギャラクシーエースだ。なあ、君達、
男3   (さえぎり)僕、トンボです。よ、よろしくな、エース。
男1   ああ。よろしく。君はトンボ座生まれなのか。
女1   トンボ座? なにそれ?
男1   違うのか?
女1   そんなの聞いたことないわよ。(男3に)ねえ。
男3   うん。
女1   この子はすぐに眼を廻しちゃうからトンボ。

        女1、男3の眼の前で指を廻すと、男3、あっと言う間に眼を廻す。

女1   ほら。
男1   なるほど、よくわかったよ。それでね、君達。僕は今、ちょっと忙しいんだ。早く行かないと、監督が怒って、僕のことをくびにしてしまうかもしれないからね。
男3   (飛び起きて)くび?
男1   いや、こっちの話。とにかく、今日はギャラクシーエースは忙しいんだよ。
男3   お願いだよ、ギャラクシーエース!
男1   なんのお願いだい? 悪いんだけどホントに時間が
男3   (突然)流れる星は正義のしるし!
男1   流星忍者! ギャラクシィィエェェッス!!
男3   お願いだよお。
男1   いや、ホントに時間が。
女1   (突然)正義の怒りを受けてみろ!
男1   ギャラクシィィィキィィィック!
女1   ノリノリじゃないのぉ。
男1   いや、本当に時間ないんだから。
男3   かっこいいなあ、ギャラクシーエース.....。
男1   え? そう? まあ、毎日研究してるからな。

        女1と男3の期待に満ちた眼。

男1   え、えっと、ギャラクシーパァァンチィ!
女1   うひょぉ!
男1   ギャラクシーアタック!!
男3   あひぃ!
男1   ギャラクシィィスーパーアタァァックゥ!
女1・男3 すばらしぃぃ!
男1   えへへ、そう?
女1   お願い、ギャラクシーエース。助けて欲しいの。本当にあなたが必要なの。
男1   ......。じゃあ、ホンの少しだけ。5分だけだよ。

        女1と男3、顔を見合わせ、

女1・男3 そして一時間後!
男1   ちょっと待てよ!
女1   なによ。
男1   何でいきなり一時間も経っちゃうんだよ! 時間無いって言ってるだろ!
女1   そんな事言ったって、もう一時間経っちゃったんだからしょうがないでしょ。
男3   過ぎ去った若い日は二度と帰らないからね。
男1   過ぎてないだろ、まだ! いくらなんでも、そして一時間後はあんまりだろう。お客さんだってついて来れなくなっちゃうぞ。
女1   そんなこと無いわよ、ここは舞台の上なんだから。ここで誰かが一時間経ったって言ったら経っちゃうの。
男1   そんな無茶な。
男3   無茶じゃないよ。
女1   そして五時間後!
男1   今夜は星が綺麗だなぁ、ってこら。
男3   そして三日後!
男1   やめろって、時間無いんだから。
女1   無駄よ。もう三日も経っちゃったんだから。きっともうクビになっちゃったわ。
男1   この野郎。
男3   さあ、行こうよギャラクシーエース。
男1   負けるもんか。しかし三日前!
男3   あ!
男1   どうだい?
男3   や、やっぱり三日後!
男1   しかし三日前!
女1   そして一年後!
男1   君達も大きくなったな。......。その一年前!
男3   そして十年後!
女1   の、70年後。
男3   今年ももうすぐ春ですねえ、ばあさん。
女1   そうですねえ。

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