気がつくと、僕はサバクの上にいた。

And I miss you babe...

(きがつくと、ぼくはさばくのうえにいた。)
初演日:2000/6 作者:いしどおたいち
『気がつくと、僕はサバクの上にいた And I miss you babe...』
  
  オオトモ    男性
  カモメ     女性
  ミユキ     女性
  シバザキ    男性
  アユミ     女性
  テヅカ     男性
  ハラダ     初演時女性
  イマイ     初演時女性
  
              舞台はメインとなる大きなスペースと、主人公オオトモの部屋
              である小さなスペースの二面で構成されている。
              特に注記の無い場合は全てメインのスペースを指す。
              メインのスペースの舞台は1993年である。
              小さなスペースは、1993年に紛れ込んでしまった2000年の
              アパートの一室である。
  
              開幕
              オオトモが走っている。
              いい歳して会社に遅刻しそうなのである。
  
  オオトモ    あー! どうして毎朝こうなんだ。どうしてだ? 思い出せ、思い出せ、夕べのことを思い出せ。オレ目覚ましかけたのか? 夕べはどこで飲んだんだ? って言うか、ホントに飲んだのか? 飲んだ飲んだ、飲んだ気がする。考えろ、考えろ。いや、考えるな、走れ、走れ。そうだ、走れ、走るんだ、オレ。頑張れ、オレ、頑張れ、オレ。
       ああ、なんだか気持ち良くなってきたぞ。走るって気持ちいいなあ。煙る朝もや心地よい風。そうだ。今オレは風。風になる一歩手前だ。あと一歩。あと一歩で風になるんだ。
       まて! 風になってる場合か! オレはオレだ。何でもいいから走るんだ。うー、気持ちわるい。座っちゃおうかな、座っちゃおうかな。座っちゃったら動けないだろうな。動かないだろうな、オレ。えーい、座っちゃえ。ぺたん。
       ふう。一服。一度座っちゃうともう立てないもんね。なんで走ってたんだ、オレ。ばかばかしいなあ。大体そんなに急ぐ必要ないんだよ、人生なんて。急いだところで…
       だから! 会議に出るんだろ、オレ! 走れ、オレ! あー! どうして毎朝こうなんだ。思い出せ、思い出せ。夕べはどこで飲んだんだ? そうそう夕べはゲンちゃんが…。
  
              オオトモ、立ち止まり
  
  オオトモ    違うぞ。夕べは…
  
              カモメ、走ってくる。
  
  カモメ     オオトモ!
  オオトモ    え?
  カモメ     え? じゃないだろ。また遅刻かよ。ぼーっとしてると遅れるぞ。
  オオトモ    あ、カモメさん! 久しぶりじゃないですか!!
  カモメ     あ? そうか? 久しぶりか?
  オオトモ    久しぶりですよ。どうしたんですか!
  カモメ     どうしたんですかじゃないだろ。会社行くんだろ。
  オオトモ    そりゃ、僕はそうですけど。
  カモメ     バカだね。あたしだってそうだよ。
  オオトモ    カモメさんも行くんですか?
  カモメ     決まってるだろ! あんた、何言ってんの?
  オオトモ    あ、まあ、いいんですけど。
  カモメ     変なやつだね。ほら、急ぐよ。
  オオトモ    カモメさん、変わってないですね。
  カモメ     なにが?
  オオトモ    口調が。
  カモメ     うるさいね。そう簡単に変わらないよ。
  オオトモ    まあ、そうなんでしょうけど、少しくらい。
  
              二人、会社に到着。
  
  二人      セーフ!
  
              課長、ハラダが入ってきて、
  
  ハラダ     ちょっと遅いんじゃないの?
  カモメ     すみませ〜ん。
  
              ハラダとカモメのやり取りを見て、
  
  オオトモ    あれ? なんだこりゃ。
  
              転換。
              全員入る。
              タイトルコール
  
  声       「TaroonShop's Seventh Heaven!」
  全員      「気が付くと」
  オオトモ    僕はサバクの上にいた…。
  
              ダンス入れたい。
              その合間に芝居は入らない…か。
  
              ミユキ(2000)とオオトモ
  
  オオトモ    え? なに? もう一回。
  ミユキ     えー。何で二回も言わせるのよ。
  オオトモ    ゴメン。もう一回だけ。
  ミユキ     もう! だから、いいよって。
  オオトモ    え?
  ミユキ     一回だけでしょ。
  オオトモ    あ、そうか。え、でも、本当に?
  ミユキ     そう。本当に。
  オオトモ    だって、ケッコンだよ?
  ミユキ     なによ。嫌なの?
  オオトモ    まさか! 嬉しいよ! めちゃくちゃ嬉しいよ!
  ミユキ     よし。じゃ、もう一回ね。
  オオトモ    あ、ああ。『ミユキ。オレの味噌汁、作ってくれないか』
  ミユキ     いいよ。任せとけ。
  
              転換。
              カモメとオオトモ
  
  カモメ     で?
  オオトモ    と、言うわけなんです。
  カモメ     ふーん。いい週末だったね?
  オオトモ    だけど! 今朝慌てて会社に来たらカモメさんがいて…
  カモメ     まだ寝ぼけてるんじゃないの? 彼女がいたなんて、聞いたこと無いよ。
  オオトモ    前に紹介したじゃないですか!
  カモメ     知らないよ。で、どこで見つけたんだよ、そんな娘。
  オオトモ    いや、3年くらい前から付きあってるんですよ。後輩です。
  カモメ     大学のか?
  オオトモ    いや、会社のです。
  カモメ     バカだね。あんたの下に後輩なんていないだろ。
  オオトモ    …。そうなんですか?
  カモメ     そうだろ。で、何に困ってるのさ。
  オオトモ    いや、さっきから彼女に電話してるんですけれどね、
  
              オオトモ、電話を出す
  
  カモメ     おぉ、なんだそりゃ! 高そうだなあ! あんた、何でそんなの持ってるのさ。
  オオトモ    いや、安いですよ。先月買い替えたんです。メール読めたほうが便利だと思って。
  
              カモメ、携帯を取り上げ、
  
  カモメ     メール?
  オオトモ    ショートメールじゃない方。彼女がポケボー使ってるから。
  カモメ     なんだそりゃ。
  オオトモ    ポケットボード。だから、e-mail使えたほうが便利なんですよ。
  カモメ     ニフティの着信通知か。
  オオトモ    なんでニフティなんですか。貸して下さい。
  
              オオトモ、携帯を受け取り、
  
  オオトモ    まだ繋がらないや。おかしいなあ。会社で圏外になること無いんだけど。
  カモメ     なんだよ、使えないのか。やっぱり繋がりにくいんだな、携帯電話。
  オオトモ    cdmaOneなんですけどねえ。
  カモメ     なんだそれ。で、なに? 電話自慢しようと思ってたのか?
  オオトモ    まさか、違いますよ。
  
              オオトモ、カモメにも朝から感じてる違和感を
              同様に感じて相談することを諦め、
  
  オオトモ    イヤ、良いです。大したことじゃないんですよ。…それよりカモメさん、最近どうしてたんですか?
  カモメ     なにが?
  オオトモ    だって、しばらくぶりじゃないですか。
  カモメ     毎日あってるじゃないか。
  オオトモ    は?
  カモメ     なんだよ。金曜、飲みに連れてってやっただろ。
  オオトモ    いや、行ってないですよ。
  カモメ     なんだと、この野郎。
  オオトモ    ちょ、ちょっと待って下さい。…カモメさん、今日はどうして会社へ?
  カモメ     は? 来ちゃいけないのかよ。
  オオトモ    そういうことじゃなくて。やっぱり、やっぱりなんか変なんですよ。
  カモメ     変なのはお前の方だよ。寝ぼけてないか?
  オオトモ    寝ぼけてないですよ。カモメさん、ちょっと電話貸してもらえませんか?
  カモメ     電話?
  オオトモ    ケータイ。持ってないですか?
  カモメ     持ってるわけないだろ。
  オオトモ    …もしかして、ベル持ってます?
  カモメ     持ってるよ?
  
              オオトモ、ポケットベルを受け取り、
  
  オオトモ    東京テレメッセージ。
  カモメ     中見るなよ。
  オオトモ    6月21日。月曜。
  カモメ     見るなって言ってるだろ。
  
              カモメ、ベルを取り上げる。
  
  オオトモ    …カモメさん、プレステ2買いました?
  カモメ     なに2?
  オオトモ    プレステ2。ソニーの。
  カモメ     持ってないよ?
  オオトモ    トイストーリー2見ましたか?
  カモメ     なに2だって?
  オオトモ    トイストーリー2。
  カモメ     知らないよ。なんだって?
  オオトモ    キン肉マンII世読んでますか?
  カモメ     何なんだよ! ふざけるなよ。
  オオトモ    カモメさん。…今年、何年になったんでしたっけ?
  カモメ     は? 9…3年だろ? 平成5年。
  オオトモ    93年…?
  カモメ     違ったっけ?
  
              転換
  
  オオトモ    朝から感じてた違和感はこれだった。気が付くと、僕は1993年。6月21日にいた。
              ミユキ(2000)入る。
  
  ミユキ     よし。じゃあ、もう一回ね。
  オオトモ    え? あ、ああ。もう一回。
  ミユキ     そう。もう一回。
  オオトモ    『ミユキ。オレの味噌汁、作ってくれないか』
  ミユキ     いいよ。任せとけ。
  オオトモ    うん。任せた。任せたよ。あ、味噌汁だけじゃないよね?
  ミユキ     あとなに?
  オオトモ    え、海老フライとか…牡蛎フライとか…コロッケとか。
  ミユキ     いいよ。それも任せとけ。
  オオトモ    あ、あのさ。新婚旅行はどこに行きたい?
  ミユキ     え? そうだなあ。
  オオトモ    その前に結婚式だ。どこでやろうか? その後は、そうか。子供。何人欲しい? たくさんはやだけど、一人っ子もやだよね。名前どうしよう? でも、子供がいるといろいろ大変だよね。そう言えば授業参観ってどんなカッコしていけばいいんだろう? スーツじゃ変かな? でも、あんまりラフなのも変だよね? ねえ、どうしたら良いかな?
  ミユキ     待って。そんなに慌てないでよ。これからゆっくり考えましょ。時間は、たくさん有るんだから。
  オオトモ    あ、ああ、そうだね。時間はたくさん…
  カモメ     オオトモ?
  
              オオトモ、カモメを見て、電話を見て、
  
  オオトモ    もちろん、彼女への電話は繋がらない。
  
              転換。
              電話の音。
              シバザキ、入ってくる。
              シバザキ、電話を取る。
  
  シバザキ    はい、シバザキ不動産…ああ、安藤さん。どうし…え? ちょっと待ってくれ。わかってる。あんたがたの事情もわかってるが、こっちだって不景気なんだよ。おい、聞いてるのか? おい、おい!
  
              テヅカ、入ってくる。
  
  テヅカ     シバザキさん。ちょっとやばいですよ。
  シバザキ    テヅカ君、今何時だ。
  テヅカ     立川の駅前。安藤さんのところが手を引くって言ってきたっすよ。
  シバザキ    今何時だ。
  テヅカ     10時すぎです。で、安藤さんが
  シバザキ    いま聞いた。
  テヅカ     どうしますか? あの土地浮いちゃったら大赤字っすよ。
  シバザキ    うるせえ。そんなことはわかってるんだ。
  テヅカ     浮かなくても結構な赤字っすけど。
  シバザキ    黙ってろ。
  
              ミユキ(1993)、入ってくる。
  
  ミユキ     あの、お茶入れました。
  シバザキ    あ? ああ、ありがと。誰?
  テヅカ     今日から来てもらうことになったカワグチさんっす。
  ミユキ     カワグチミユキです。
  テヅカ     ミユキちゃん。こちら、シバザキ社長。
  ミユキ     よろしくお願いします。
  シバザキ    テヅカ君。
  テヅカ     大学2年生だそうです。
  シバザキ    テヅカ君、あのな。
  テヅカ     ハタチになったばかりだそうです。
  シバザキ    大赤字だって言ってるだろ!
  テヅカ     事務の子ひとり欲しいって言ってたじゃないですか。
  シバザキ    欲しいとは言ったけどな、雇えるかどうかは別だろ。
  ミユキ     あの、すみません。
  シバザキ    お茶、そこに置いとけ。
  
              シバザキ、去る。
  
  テヅカ     気にしないでいいよ。社長、いつもあんなだからサ。大丈夫、大丈夫。
  ミユキ     でもぉ。
  テヅカ     大丈夫大丈夫。不動産屋なんて、もう儲かっちゃって仕方ないんだから。
  ミユキ     そうなんですかぁ?
  テヅカ     (社長の椅子でえばりながら)そうなんですよぉ。
  
              そこにアユミ、入る。
  
  アユミ     パパ、いる?
  テヅカ     あ、アユミさん。今、ちょうど出ていったところで。
  アユミ     テヅカ。あんた、何パパの椅子に座ってるのよ。
  テヅカ     いや、たまたまっすよ。
  アユミ     嘘つけ。
  
              アユミ、ミユキ(1993)と視線が合う。
  
  二人      こんにちは。
  アユミ     誰?
  ミユキ     あ、カワグチミユキです。
  アユミ     バイト?
  テヅカ     事務の子。
  アユミ     ふーん。儲かってんの? ヨユーあんじゃん。
  
              シバザキ戻る。
  
  シバザキ    ねえよ。どうしたアユミ。
  アユミ     あ、パパ。(テヅカに)いるじゃん。
  テヅカ     どうしたんすか? 社長。
  シバザキ    忘れもんだよ。
  
              シバザキ、ミユキ(1993)からお茶を受け取り、
  
  シバザキ    (アユミに)金か?
  アユミ     そう。
  シバザキ    ほら。
  
              シバザキ、金を渡す。
  
  アユミ     サンキュー、パパ。
  
              アユミ、去る。
  
  テヅカ     いいんすか?あんなに渡して。
  シバザキ    その姉ちゃんの給料ぐらい払えるさ。
  テヅカ     いや、そういう意味じゃなくて。
  シバザキ    お前が心配するな。金が欲しくて悪いことするよりましだろ。あー…
  ミユキ     カワグチミユキです。
  
              シバザキ、お茶を飲み干し、
  
  シバザキ    ミユキちゃん。ご馳走さん。
  ミユキ     あ、いえ。
  シバザキ    次からは紅茶にしてくれ。アールグレーだ。
  ミユキ     あ、すみません。わかりました。
  シバザキ    今何時だ?
  テヅカ     10時半です。
  
              シバザキ、去る。
  
  テヅカ     社長は紅茶派だから。
  ミユキ     そういうことは先に言って下さいよ。
  テヅカ     僕はコーラね。
  ミユキ     は? コーラですか?
  テヅカ     そう。ペプシはダメね。ジョルトね、ジョルト。
  ミユキ     ジョルト。
  テヅカ     そ。 よし。そんじゃ、仕事教えるね。まず、これが出金伝票ね。あ、適当で良いからね。で、あれが入金伝票ね。あ、適当で良いからね。
  ミユキ     あ、はい。なるほど。
  テヅカ     あ、忘れてた。タイムカードはこっちね。これも適当で良いよ。
  ミユキ     なるほど、なるほど。
  テヅカ     あ、こっちに社長の車の鍵入ってるから。適当に乗り回していいよ。
  ミユキ     なんか、ほとんど適当で良いんですねえ。
  テヅカ     あ、これ、お弁当屋さんのメニューね。これは適当ダメだよ。社長は弁当食わないけど、君は好きなもの適当に頼んでいいよ。
  ミユキ     なんか、さっきから随分大ざっぱな感じがするんですけど。
  テヅカ     そういうもんなのよ、不動産屋なんてのは。どかー!っと土地買い占めて、どかー!っとうっぱらうと、がばーって儲かっちゃうんだから。がっはっは。
  ミユキ     本当ですかあ?
  テヅカ     ホントホント。いいよ〜、不動産屋は。ミユキちゃんも、不動産屋の男と付き合うと良いね。もう、がばーっと儲かっちゃうんだから。
  ミユキ     はあ。でも、友達はみんな学生だし。
  テヅカ     オレ、オレ。
  ミユキ     確かに、同い年くらいの人はみんな幼く見えるって言うか、年上の人の方がいいなあって思うこともあるんですけどね。
  テヅカ     いや、だからオレオレ。
  ミユキ     なにがですか?
  テヅカ     年上で不動産屋の男。
  ミユキ     (笑いながら)ああ。そうですねえ。考えておきます。
  テヅカ     いや、考えること無いって。もうどがー!って土地買い占めて、どがーっ!とうっぱらって、がばがばーって儲かっちゃうんだから。がっはっは。車欲しい?車。いらない?
  ミユキ     はぁ。いや、ちょっと。
  テヅカ     遠慮しなくて良いのに。何だったらマンションも用意しちゃうよ。ホントにオレの女になるならさあ。
  ミユキ     いや、考えておきます。
  テヅカ     そんなこと言わないでさあ。
  
              アユミ、立ち聞きしていた様子で入ってくる。
  
  アユミ     そんなお金無いくせに、何いっちょ前にバイト口説いてンのよ。
  テヅカ     あ、アユミさん。まだいたんすか! そんなことないっすよ。金ならありますよー!
  アユミ     まだいたのよ。悪い? 土地下がっちゃって、抱えたまま売れないのが山ほどあるんでしょ? 私だって新聞くらい読むんだから。
  テヅカ     何言ってるんですか、そりゃ一時に比べりゃ厳しくもなってますけどね。でも、まだまだ大丈夫ですよ。土地は絶対って言うでしょ。
  アユミ     わかったわかった。あなた、気をつけたほうが良いよ。こんなのに喰われたら安くなっちゃうよ。
  ミユキ     あ、いえ、そんな。
  テヅカ     アユミさん、なんてこと言うんですか。
  アユミ     私ね、シバザキアユミ。社長令嬢ね。
  
              アユミ、ミユキ(1993)に名刺を渡す。
  
  アユミ     よろしく。なんかあったらベル入れていいよ。大学生?
  ミユキ     え? ええ。
  アユミ     じゃあさ、合コン呼んでよ。いつでも良いから絶対ベル入れて。
  ミユキ     あ、はい。わかりました。機会があったら。
  アユミ     もう。敬語使わないでいいよお。ミユキちゃんの方が年上じゃん。タメ語で良いよぉ。
  ミユキ     あ、はい。
  アユミ     あ、私が敬語使わなきゃなのか。ま、いいか。
  ミユキ     え、あ、ええ。
  アユミ     そんじゃあね。バイバイ、ミユキちゃん。
  
              アユミ、立ち去る。
  
  テヅカ     ごめんねえ。アユミさん、いつもあんなで。
  ミユキ     いや、別に。面白い子だなあって。
  テヅカ     アユミさんみたいの、コギャルって言うんだって。
  ミユキ     コ? あー、なるほど。
  テヅカ     そ。
  ミユキ     で、なんの話でしたっけ。タイムカードが、
  テヅカ     違うよ! オレの女にならないか、って話でしょ!!
  ミユキ     あ。ああ、それはその、考えておきます。
  テヅカ     あー、もう。考えることないのになあ。なに? 彼氏いるの?
  ミユキ     いや、居ませんけど。
  テヅカ     いないの? いないの? それじゃ、ちょっと繋ぎでさあ。
  ミユキ     あ、そろそろわたし、学校行かなくちゃ。明日、紅茶買ってから来ますね。
  テヅカ     あらら。ちょっと待ってって。
  
              二人、去る。
              転換。
              入れ替わりイマイが入る。
              何かを探している。
              そこに、オオトモとカモメが入る。
  
  カモメ     全くバカなこと言ってるんじゃないよ。
  オオトモ    本当なんですってば。
  カモメ     じゃあ、なにかい。あんたは21世紀からやって来た猫型ロボットってなわけかい。
  オオトモ    2000年はまだ20世紀です。それにドラえもんは22世紀からですよ。
  カモメ     何世紀でもいいよ。じゃ、タイムマシンを見せてみろって。引き出しか? 引き出しに隠してるのか!
  オオトモ    そんなもの無いですよ。どうしてこうなったかわかんないんですってば。
  カモメ     どこでもドア出せ。ウチに置いておくから。
  オオトモ    だからドラえもんじゃないんですよ。
  カモメ     そんなこと言って、いきなり2000年から来ましたなんて言われて信じられると思うか、バカ。
  オオトモ    僕だって、いきなり93年とか言われても信じられないですよ。
  イマイ     オオトモ君。何やってるのかしら?
  オオトモ    あ! イマイさん。お久しぶり。
  イマイ     は? あんた、朝から行方不明とはいい度胸なんじゃないの?
  オオトモ    え?
  イマイ     お客さん来てたわよ。立川の駐車場、オオトモ君の担当でしょ。
  オオトモ    駐車場?
  イマイ     いいわよ。私がきちんと対応しておいたから。
  カモメ     なんだよ。仕事あったのか、お前。
  オオトモ    え、立川の…?
  イマイ     そう。地主さん来てたわよ。
  オオトモ    なんだっけ? それ。立川の駐車場?
  イマイ     なに言ってるのよ。私が対応しておいたから。お昼の定食ぐらいおごりなさいよ。
  オオトモ    あ、うん。…。わかった。どうもありがとう。
  イマイ     こっちの条件で構わないって。
  オオトモ    何が?
  イマイ     だから! 駐車場でしょ! 土地代下がっちゃったから、こっちの条件通りでしょうがないって顔してたわよ。
  オオトモ    あ。ああ、なるほど。わかったよ。ありがとう。
  イマイ     それから。
  オオトモ    まだあるの?
  イマイ     まだあるの。課長も探してたわよ。
  オオトモ    なにを?
  イマイ     あんたをよ。早く行きなさい。怒ると怖いよ、課長。
  オオトモ    ああ、わかったよ。後で。
  イマイ     後でじゃだめ。
  オオトモ    イヤ、ぼく今それどころじゃないんですよ。
  カモメ     良いから行っとけ。
  オオトモ    でも、
  カモメ     ほら、行った行った。話は後で聞いてやるから。
  オオトモ    わかりましたよ。じゃあ、ちょっと行ってきます。
  
              オオトモ、去ろうとして、
  
  オオトモ    カモメさん。
  カモメ     おう? なんだ?
  オオトモ    さっきのこと、内緒にしておいてください。
  
              オオトモ、去る。
  
  イマイ     なんですか? 内緒って。
  カモメ     ああ。あいつなあ、ドラえもんになったんだそうだ。
  イマイ     なんですか、それ?
  カモメ     いや、良くわからないんだけどな。おお、コーラ、120円になるらしいぞ。
  イマイ     え? いつですか?
  カモメ     21世紀。
  イマイ     は? なんですか、それ。
  カモメ     なんだか良くわからないんだけどな。
  
              ハラダ、入る。
  
  ハラダ     あらあら。楽しそうね。
  カモメ     あ、課長。ちーっす。
  イマイ     あれ? オオトモ君行きませんでした?
  ハラダ     はい。オオトモ君には罰として漢字の書き取りをやらせています。
  イマイ     なんなんですか、それ。
  ハラダ     罰です。
  カモメ     嫌な罰だなあ。
  イマイ     課長。オオトモ君、仕事あるんですよ。立川の駅前の土地。
  ハラダ     駐車場?
  イマイ     そうですよ。漢字の書き取りやらせてる場合じゃないですよ。
  ハラダ     でも、罰は罰だから。
  カモメ     どうせ大した仕事じゃないんだろ?
  ハラダ     あら。そうでもないんですよ。
  イマイ     競合してる不動産屋があるんですよ。のんびりしてられないんです。
  カモメ     ふーん。じゃ、あたしがかわりに行ってくるよ。その地主に挨拶行って、そのあと競合相手覗いてくればいいんだろ?
  ハラダ     あら。カモメさんもこっち。
  
    ハラダ、ノートを渡し、
  
  ハラダ     いっしょにさぼってたでしょ? あなたも書き取りね。小学4年生から、常用漢字。
  カモメ     わかりました!
  
              受け取ったノートをすばやくイマイに渡し、
  
  カモメ     頼んだよ。
  
              さっさと去る。
  
  イマイ     あ。先輩ずるい!
  
              イマイ、困ったようにハラダを見る。
              ハラダ、にっこり笑って、
  
  ハラダ     じゃ、頼んだわよ。
  
              ハラダ、うきうきと立ち去る。
  
  イマイ     なんでだ?
  
              イマイ、諦めたように漢字学習帳を開く。
              舞台にイマイを残したまま転換。
              アユミ入る。椅子に座って暇そうにぐるぐる回ったりしている。
              そこにテヅカ。
              イマイは書き取り中。
  
  テヅカ     学校行かなくて良いんですか。
  アユミ     わ。何よ。脅かさないでよ。パパかと思ったじゃん。
  テヅカ     お昼回りましたけど。学校。シバザキさん心配しますよ。
  アユミ     いやあ、別に心配しないでしょ。
  テヅカ     しますよ。
  アユミ     そかな?
  テヅカ     そうですよ。
  アユミ     ねえ。さっきの子、どうしたの? ミユキちゃん。
  テヅカ     学校行くって言って帰りました。

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