あとの祭のまえ

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(あとのまつりのまえ)
初演日:2016/6 作者:松本隆志(:Aqua mode planning:)
◆ 寝坊だ! 急いで学校に! 行ってきます! 重い! 起きたばかりは体が重い! 石
  田さんちの前を通り過ぎる。絶対に犬が吠える。黒くて大きいやつ。名前は知らない。工
  場の脇を抜けて国道に出る。後は真っ直ぐ。左手に更地が見える。噂ではコンビニが出来
  る。走る。走る。ひたすら走る。ミートセンターの川を越える。ミートセンターは豚を肉
  に加工する工場で、辺りは酷い臭いがする。川には豚の血が垂れ流されて真っ赤っか。近
  所の子達は呪われるって言いながら、どこまで近寄れるか度胸試しするのが好きだ。坂を
  上る。ここがいつもきついんだ。あぁ、僕の体を乳酸が支配する。信号が赤。はぁはぁ。
  絶対寿命が縮んでる。青! NTTの社宅を過ぎる。ここには同級生がたくさん住んでい
  る。左に曲がる。もう少し! 学校が見えた! こっちは正門じゃないから先生はいな
  い。教室に滑り込む! おはようございます! え、宿題…? えー…。
 
■■■
◆ っていう夢! 寝坊だ! 急いで会社に! 行ってきます! 重い! 起きたばかりは体
  が重い! 昔より更に重い! 乗ります! 乗りまーす! この時間の電車は地獄だ。
  …今日もあの人がいる。隣に住んでたサエコ姉ちゃんに似てるんだよな。カブトムシが苦
  手なのにザリガニは平気で触ってた。足に小さく火傷の跡があった。…姉ちゃん、良い匂
  いがしたな。姉ちゃんも上京したんだっけ…? 俺は何故働いているのか。生活の為? 
  でも生きる為ではない気がする。それなら…。降ります! 降りまーす! 自分のデスク
  に滑り込む! おはようございます! え、企画書…? えー…。
 
■■■
◆ 何年も離れていた地元に戻りたくなったのは、人の多い都会から逃げ出したかったから、
  だろう。他人の気持ち以上に、自分の気持ちが分からない。そういう時に限って、年に一
  度の祭の夜。静かには、過ごせない。我先に会場を目指して走り去っていく子供の背中。
  いつかの自分も、大人の目にはこう映っていたのか。
 
   間。
 
○ お?
◆ …?
○ ともくん? …菅谷、ともゆきさん、では? 
◆ …はい。
○ やっぱり! 私サエコ! 久しぶり! …ごめんなさい。覚えてない?
◆ 覚えてる。あ、覚えてます…。
○ え、敬語? 私フランク過ぎた? こんな感じで接してた気がするんだけど…。

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