桃太郎
芥川龍之介「桃太郎」より
【桃太郎】βver.0.8

原作・芥川龍之介
脚色・白神貴士

桃太郎(肩に雉)…
犬       …
猿       …

鬼娘      …
鬼の若者    …
鬼酋長     …

語り手+鬼(酋長の)嫁…
鬼婆+伴奏     …
鬼酋長の声+伴奏  …
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語り手
「今宵、これより繰り広げられます『桃太郎』というお話は、かの文豪、芥川龍之介が
 大正13年7月のサンデー毎日夏季特別号に書き下ろした短編を基に脚色したものでございます。
 芥川龍之介という方は大層皮肉屋で人間に対して辛辣な意見を持った作家でしたので、
 原作の過激な表現はいささか丸め、お楽しみ頂ける様に変更を加えておりますが、
 お客様によってはお気に触る部分もあるやも知れません。これも一夜の座興でございます。
 何卒、寛大なお気持ちで御覧いただけますようお願い申し上げます。」

 音楽が流れ出す。

語り手
「鬼は熱帯的風景の中に琴を弾いたり踊りを踊ったり、古代の詩人の詩を歌ったり、
 すこぶる安穏に暮らしていた。そのまた鬼の妻や娘も機を織ったり、酒を醸したり、
 蘭の花束を拵らえたり、我々人間の妻や娘と少しも変らずに暮らしていた。
 殊にもう髪の白い、牙の脱けた鬼の婆はいつも孫の守りをしながら、
 我々人間の恐ろしさを話して聞かせなどしていたものである。」

鬼婆
「お前たちも悪戯いたずらをすると、人間の島へやってしまうよ。
 人間の島へやられた鬼はあの昔の酒顛童子のように、きっと殺されてしまうのだからね。
 え、人間というものかい? 人間というものは角の生えない、生白い顔や手足をした、
 何ともいわれず気味の悪いものだよ。男でも女でも同じように嘘はいうし、欲は深いし、
 焼餅は焼くし、己惚れは強いし、仲間同志殺し合うし、火はつけるし、泥棒はするし、
 手のつけようのない獣なのだよ……」

語り手
「そんなある夜、鬼が島の磯に巨大な桃が流れ着いているのを、
 逢引をしていた鬼のカップルが見つけ、盛大な宴会が開かれることになった…」

 宴の曲が流れる

 鬼たちが出てきて宴会を始める。
 やがてセクシーな鬼娘が登場、悩ましげに踊りながら舞台奥の幕を払うと巨大な桃。
 桃を怪しげに触り、挑発的に腰をくねらせる鬼娘、鬼の若者をからかって最後は酋長の膝へ。

鬼酋長
「やんや、やんや!流石は鬼娘!いつもながら素晴らしい踊りだ!
 お陰で酒が足りぬ…おーい、酒がないぞ!」

 と、桃の中から酒瓶(或いは瓢箪徳利)を掴んだ腕が出てくる。

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