こんがらがっちゅれ〜しょんっ

(こんがらがっちゅれ〜しょんっ)
初演日:2012/3 作者:穂村一彦
こんがらがっちゅれーしょんっ


配役(男3女3)
・けん:新郎。気の優しい青年だが、記憶喪失後はちょっと怒りっぽく。
・友:吉田。あだ名はヨッシー。けんちゃんの友達。アホで子どもっぽい。
・係:結婚式場のビデオ撮影を担当している女性。お気楽でいいかげん。
・姉:係の姉にして、けんのストーカー。陰気で怖くて妄想が激しい。
・神父:怖がり。オランダ人で外人訛りがある。
・ちなつ:吉田の恋人。元気で活発。

上演時間:約90分

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<開幕>


けん(裏手から)「すいませーん!
 これ、ズボンの長さ合わないみたいなんですけど〜! 衣装さ〜ん!」
(けん下手から入場。足の長さの短いズボンをはいている)
けん「衣装さん? あれ、いない。え〜、なんだよ、これ、困ったな……」
(友人、上手から登場。手には荷物)
友「おっす、けんちゃん!」
けん「おお、ヨッシー! 来てくれたか!」(ハイタッチ)
友「そりゃ来るよ〜、大切な、親友の晴れ舞台だもんな」
けん「おう……お前にしては早かったな」
友「なんか俺まで緊張して寝付けなくてさ。式って12時からだっけ?」
けん「そう。あと3時間だな。ゆっくりしてってくれよ。なんか飲む?」
友「ん〜、なんでもいいよ。(荷物置いて、座る)」
けん「はい。じゃ、これ」
友「お、ありがとう。じゃあ、あらためて……けんちゃん! 結婚おめでとう〜! かんぱい!」
けん「ありがとう! かんぱい!」
友「ふぅ〜。しかし不思議な感じだな〜。あのけんちゃんが結婚か〜」
けん「まぁな……時間たつのって早いな……」
友「あ、そうだ。持ってきたものあったんだ。ほら、二次会で、着る衣装さ〜」
(友、後ろを向いて荷物をあさる。背中にはタグがついてる)
けん「おい。値札つきっぱなしだぞ」
友「え?」
けん「スーツにタグ。ほら。(とる)セール価格3980円……ずいぶん安いな」
友「やめろよ〜、読むなよ。いや、俺、こういうの持ってなかったから、慌てて買ってきてさ〜」
けん「あー、そういやお前のスーツ姿なんて初めて見たな」
友「うん、どう、これ? 似合う?」
けん「ああ、いいんじゃないの?」
友「けんちゃんもあれだよな。なんていうか……足がセクシーだな」
けん「違うよ、これ。寸法合ってないんだよ。リハーサルの時は大丈夫だったんだけど。
 近くに式場の係りの人いなかった? すぐ変えてもらわないと」
友「いや、いなかったけど」
けん「そっか、困ったな〜」
友「それよりさ、ほら、これ。二次会の衣装! これ、けんちゃんのな!」
けん「うわっ! メイド服! お前、これ本当にやるつもりだったの?」
友「そりゃそうだよ。絶対盛り上がるって! これ4980円もしたんだぞ」
けん「お前のスーツよりこっちのほうが高いのか」
友「あ、そうだ。けんちゃん。悪いんだけどさ……ちょっとお金貸してくれない?」
けん「お前、なにもこんなときに」
友「頼む! 今日じゃなきゃダメなんだよ」
けん「ん、いくら?」
友「3万円。必ず来月返すから!」
けん「ったく、しょうがねえな……ほら」
友「ありがとう! 助かった……じゃあ、これ」
けん「え? なに、いらないの?」
友「違う違う。けんちゃんにあげるんだよ。結婚のご祝儀」
けん「お前、俺へのご祝儀を俺に借金して払うの?」
友「うん! ほら、遠慮するなって!」
けん「お、おう……ありがとう……」
友「いいってことよ! 気にするな!」
けん「……何か釈然としないな」
友「いや〜、助かった。メイド服とナース服買ったら金なくなっちゃってさ」
けん「ナース服もあるのか?」
友「うん、ナース服は俺の。あ、ちょっと試しに着てきていい?」
けん「えー、式が終わってからでいいじゃん」
友「ちゃんと似合うか見てほしいんだよ」
けん「どうせ似合わないからいいよ」
友「まだ時間あるよな! じゃ奥の部屋貸して!(下手に退場)」
けん「おう、いいけど。……まったく。あいつは相変わらずだな」

(けんちゃんの携帯電話かかってくる)

けん「もしもし? ……え? あ、あんたは……! ちょっと! なんで俺の番号知ってるんですか?
 あのねぇ……何度も言いますけど、俺はあんたのこと知らないし、
 好きでも何でもないんです! あなたの一方的な妄想に俺を巻き込まないでください!

(姉、電話をもちながら、こっそりと入口から入ってくる。けんは気づかない)

姉「妄想だなんて……あなたが前世の記憶を思い出してくれればきっとわかってくれるわ」
けん「なんですか、前世って! 俺はちゃんと恋人いるし、もう今日結婚するんです!」
姉「ええ、知ってる……いま結婚式場にいるんでしょう?」
けん「そうですよ。もう準備万端。衣装も着て。あんたが出る幕はもうないんです!」
姉「あら……でも、その服サイズあってないみたいだけど」
けん「ああ、これは単に式場の人が間違えてて……
 え、ちょっと、なんで知ってるんですか? ……うわあ!
(いつの間にかすぐ後ろに立っている)
 びっくりしたぁ……ちょっ、ちょっと! なんでここにいるんですか!」
姉「私はずっとあなたのそばにいるわ。前世で約束したでしょう。ずっと、ずっと、ずっと……」
けん「ちくしょう、怖いな……えっと、いいですか?」
姉「なに? 聖騎士アウグスティヌス様」
けん「……それ、俺のこと? あのですね、もうそういう妄想はやめてください。
 俺は今日結婚するんですよ!」
姉「ええ。驚いたわ。あまりにも急な話だったから。
 でもうれしかった……ようやく私と結婚する決心がついてくれたのね」
けん「……はい?」
姉「ほら、見て。急な話だったからちゃんとした衣装用意できなかったけど、
家の中で一番ウェディングドレスっぽいものを着てきたのよ」(黒ドレス姿)
けん「……何もかも間違ってる」
姉「それじゃあね。また式本番で会いましょう。(退場)」
けん「あー、ちょっと! えー、どうしよう、警察……?」

(けんちゃん思い悩んでるとき、ビデオ撮影係が入ってくる)

係「新郎様〜」
けん「え? あ、どなたですか?」
係「本日結婚式の撮影を担当しますビデオ係の者です」
けん「あ、ああ。そうなんだ、じゃあ今日はよろしく……」
係「じゃあ、さっそく撮らせてもらいますね〜(ビデオ撮影始める)」
けん「あー。ちょっと待って今それどろじゃなくて……」
係「あーほらほら。笑顔くださ〜い」
けん「い、いまそれどころじゃないんだあ〜(笑顔)」
係「え、何かあったんですか?」
けん「それが〜、不審者が〜……って、ちょっと、ビデオ止めて!
 不審者が入り込んでるの! 式をめちゃくちゃにしようとしてるやつが」
係「えっ。ほんとですか?」
けん「本当だよ。他のスタッフに注意するよう連絡しておいてくれない?
 あやしいやつがいたらすぐに警察に通報するようにって」
係「わかりました……でも、あやしいといっても、具体的にはどんな感じですか?」
けん「う〜ん、見ればわかると思うけどな。見るからに怪しい。怪しいとしか言いようがない感じ」
係「漠然としてますね〜。ただ怪しいといわれても、それじゃ、よくわからな……」
友「けんちゃん、この衣装なんだけど……」(ナース服姿)
けん・係「うわぁ……っ!」
友「え、あ、ごめん、お客さんいたの? あー、ごめん!(退場)」
係「……すぐに警察に通報しますね!」
けん「ちょ、ちょっと待って! 今のは違う!」
係「で、でも見るからに怪しかったですよ?」
けん「違う違う! 今のは怪しくない! …………いや、確かに怪しいけど!
注意してほしい不審者っていうのはまた別! あれよりも怪しいの!」
係「あれよりも怪しいっ!?」
けん「……あ〜、あれよりは怪しくない。でも、注意してほしいのはそっちなの。
 俺と前世で恋人だったとか妄想してるストーカーなんだよ」
係「今の人が?」
けん「だから今の人は違う! 今の人は忘れてくれ!」
係「私だって忘れたいのはやまやまですけど……」
けん「注意してほしいのは、黒服女。長い黒髪で、前世がどうとか喋る人」
係「それは確かに怖いですね。わかりました、すぐスタッフに連絡します」
(ちょっと下がって携帯電話をかける)
(椅子に座り込み愚痴りはじめる新郎。いつの間にか電話を終え、撮影している係)
けん「はあぁ……なんでこんなことになっちゃったのかなぁ……
 一方的にしつこくつきまとわれて。
 俺はあんたと付き合うつもりはないって何度も何度も断ったのに。
 しまいには俺と結婚するとか言ってドレス着てくるし……
 もう勘弁してくれよ……何なんだ、あの女は……」
係「大変落ち込んでおります。以上、これから結婚式に臨む新郎の姿でした」
けん「ちょっ、何とってるんだよ! 」
係「式前の新郎の素の姿を残しておきたかったので」
けん「やめてよ! ここだけ見たら誤解されるだろ!」
係「取り直しますか?」
けん「取り直してよ」
係「かしこまりました。はい、それでは今のお気持ちをどうぞ」
けん「イ、イエーイ! めっちゃハッピー! 今日は本当に幸せな、」
係「はい、ありがとうございました。(ビデオ切る)」
けん「えっ、終わり?」
係「申し訳ございません。テープの時間の長さが限られてるものですから」
けん「あ、そう……」
係「それでは後ほど、また本番でよろしくお願いします」
けん「あ、ちょっと待って。その前に衣装係いない? ほら、丈が……」
係「ああ、確かに少々短いようですね」
けん「そうなんですよ。リハーサルの時はちゃんとあってたのに」
係「リハーサルはいつでした?」
けん「えっと、一週間前」
係「この一週間で、何かありました?」
けん「何かって?」
係「そうですね、たとえば、牛乳を大量に摂取したですとか。
 あるいは、先週からバスケを始めたですとか」
けん「……ちょっと待って。俺の身長が伸びたっていいたいの? 一週間で?」
係「まぁ、これはこれでいいんじゃないですか? お似合いですよ」
けん「こんなの似合うって言われても嬉しくないよ」
係「まるで、足が短くないように見えますよ」
けん「……嬉しくないよ。いいから俺の持ってきてもらって」
係「かしこまりました」
けん「頼むよ? こんな恰好で花嫁の親族の前に出れないから」
係「そうですね、こんな裾では……親族の方々に"足元"を見られてしまいますね」
けん「……別にうまくないよ」
係「あっ、すみません、最初からもう一度いいですか?」
さっきの私のセリフ、記録に残しておきたいんで」
けん「だからもういいよ、それは。別にたいしてうまくないよ。
 それより早くズボンのすそを……」
(係の携帯電話が鳴る)
係「はい、もしもし」
けん「…………(ええ〜)」
係「はい。……はい? ああ、なるほど、困りましたね。
 このままでは結婚式めちゃくちゃになってしまいますね。
 あ、はい。わかりました。新郎には秘密にしておくんですね。
 はい。適当にごまかしておきます。はい、失礼します。(電話切る)
 それでは、また後ほど本番にて……」
けん「ちょっ、ちょっと待って! な、なに? なんかあったの?」
係「はい? いえ、別に何も? 万事順調です」
けん「だって、さっき電話でなんか言ってたろ。秘密とか、めちゃくちゃとか」
係「おお、新郎様は鋭いですね。このような気のきく男性と結婚できて、
しんぷさまはきっと幸せでしょうね……それでは、また後ほど」
けん「ちょっと待って! ごまかすなって! 何があったのっ?」
係「ええ、大変言いにくいのですが……あ、待ってください。ビデオ回しますね」
けん「なんで」
係「大変言いにくいのですが……シンプが逃亡しました」
けん「えええっ!」
係「今のお気持ちをどうぞ」
けん「たっ、大変じゃん!」
係「もう少し詳しいお気持ちをどうぞ」
けん「まるで悪い夢を見てるようで、まさかこんな……って、いつまでとってんだよ!」
係「まぁ、ご安心ください。すぐに代わりの者を手配しますので」
けん「かっ、代わりの者じゃだめだろ! なんで代わりの人と結婚しなきゃいけないんだよ!」
係「え? ああ、違いますよ。逃げたのは新婦じゃなくて、神父です」
けん「だから新婦だろ?」
係「えー、違います、神父、あの、カミチチ、カミのチチのほう」
けん「神のチチ? いや、香はそこまでチチ大きくないけど……」
係「……(けんをビンタ)
 違います。カミチチ……神様の父親のほうです」
けん「神様の父親? 神、父……あ、ああ、そっち?」
係「はい。神、あの、ゴッド、ゴッドファーザーのほうです」
けん「ゴッドファーザーじゃ意味変わってきちゃうだろ……
 ふぅ、そっちの神父のほうか、なんだ、びっくりした……いや! それはそれで大変じゃん!」
係「いえいえ、大丈夫ですよ。そこらへんの男性に神父服着せて代役にすれば
 どうせ、そこらへんの素人気づいたりいたしませんから」
けん「それ、俺の前で言っちゃダメだろ……!」
係「神父本人もそれくらいに適当だったらよろしかったのですが……
 生真面目で、変に思いつめるタイプでして。
 今回が結婚式初仕事ということで、プレッシャーに耐えかねたようです」
けん「プレッシャー?」
係「きちんと仕事がこなせるか? 正しい選択なのか? 二人を幸せにできるか?といった……」
けん「それはこっちの新婦が心配することだろ。いいよ、そこまで考えてもらわなくて。
 普通に、愛し合うと誓いますかーって言ってもらって、誓いのキスをーって言って、
 それだけでいいよ! でも、それないとキスできねえじゃん! 困るよ!」
係「ははは、エロエロですね」
けん「エロエロじゃねえよ! キスしないと結婚式にならないだろ! 
 早く見つけないと! どこに逃げたの?!」
係「この近くかとは思います。オランダから来たばかりで、まだ土地勘もないので」
けん「あ、オランダ人なの? とにかく早く見つけてよ!」
係「かしこまりました。(ビデオつけて自分に向ける)
 これより取材班は消えた神父の謎に迫ります。はたして神父はどこへ消えたのか?
 結婚式は無事開催できるのか? 正解はCMのあとで」
けん「もういい! 俺が自分で探す!」
(けんちゃん退場)
係「あら、いっちゃった。せっかちな人ですねー……あ」
友「(おそるおそる登場)あ、どうも」
係「あ、はい、えっと、あなたは?」
友「俺はけんちゃんの友達です」
係「あ、ああ、そうでしたか。私、今日のビデオ撮影係です」
友「あー、そうなんだ。あれ、けんちゃんは?」
係「神父を探しにいきました」
友「しんぷを? 」
係「ええ、キスがしたいとかなんとか騒ぎながら」
友「ええ〜、なんだそれ、エロエロだな」
係「エロエロですよね〜」
友「あっ、あんた、式場の係りの人? なら、今まで結婚式出たことあるよね?」
係「はい、もちろん」
友「ちょうどよかった。俺、式って初めてでさー。
 何もかもわからないから、ちょっと教えてほしいんだけど」
係「いくら何もわからないからって、さすがにその衣装はちょっと……」
友「え、あ、これは違うよ。これは二次会の服。
 教えてほしいのはさ、友人スピーチ。俺、今日やんなきゃいけないんだよ
 ただ俺、そんなんやるの初めてだからさ〜。
 ちょっとリハーサルしてみるから、聞いてて。(原稿とりだす)
 ええっと……けんちゃんっ。ご結婚、おでめっ……うわっ、いきなり噛んじゃった!
 これ、緊張するな! けんちゃん。結婚、おでめ……おでっ……」
(神父が入ってくる)
神父「NOO!」
友「え、誰?」
神父「あっ、悪魔よ! 去れ! (十字架をかかげる)」
友「え? いや、悪魔じゃないよ。どっちかっていうと、白衣の天使だよ」
係「あ、神父さん! どこに逃げてたんですか!」
神父「ああっ、中目黒さん! 見逃してくださーい。私には無理です」
友「え、どうしたの?」
係「この人、今日の式の神父なんですけど、直前になって逃げやがったんですよ」
神父「だって……人の前に出るの緊張する。心臓ばくばく。頭まっしろ。
 オランダ帰りたい……やっぱりチューリップ畑でチューリップ育てる人になればよかった」
係「そんなこと言わないで。あなたしかできないんですから」
神父「そう言われても……」
係「どうしても無理なら、そこらへんの人に頼むから、身ぐるみおいていってください」
神父「ええ〜。おいはぎみたいなこと言われた……」
友「神父なんて決まったセリフ言うだけなんだから楽なもんじゃん。
 俺の友人スピーチのほうが絶対大変だよ」
神父「そんなことないですよ。友人ならみんな温かい目で見てくれるじゃないですか」
友「そんなことないよ。俺、どっちか選べるなら神父やりたいよ」
係「あー、じゃあ、二人の役、交替したらどうですか?」
友「えー。俺がこの神父服着るの?」
神父「えー。じゃあ私がこのナース服着るんですか?
嫌です。こんな格好……死んだほうがましです」
友「え?」
係「まぁ、そりゃそうですよね」
友「ええっ?」
係「いま、ちょっと練習してみたらどうですか?」
神父「あ、はい……なっ、汝、汝、サオリは、えっと、夫、夫、」
友「ちょっと待って。花嫁の名前はカオリ。サオリじゃなくて」
神父「カ、カオリ? カ、カオリは、サオリを夫とし、」
係「かおりとさおりがくっついてどうすんですか。夫は健二」
神父「健二、健二はカオリをサオリとし、」
友「香りがさおりになっちゃった!」
係「カオリを妻とし!」
神父「かっ、カオリは、カオリを、カオリとし……!」

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