もっと言うと探偵

(もっというとたんてい)
初演日:0/0 作者:今野浩明
  ホテルの一室
  探偵の左右に彼女さんと従業員がポーズを決めながら並ぶ。
  そして奥に死体の人が立ちうなずいている

探偵:犯人は・・・この中にいる!!!
   (心の声)誰もが憧れる台詞を言いながら決めている私。
    だが、とんでもなく追い詰められているのである。
    何せ・・・犯人なんてまったくわかっていないのである。
    もっと言うと・・・私は、探偵でもなんでもないのだから・・・。
    話は少し前にさかのぼる・・・。

  暗転
  ホテルの一室
  一人で携帯をいじるツアーガイド

ツアーガイド:あー旅行行きたーい。
       旅行好きだからってツアーガイドなんかになるんじゃなかったあ。
       ツアーガイドになれば毎日旅行き放題ジャン。うっわ。キタこれ。
       超天才・・・なんて、考えたあたしのバカ。
       仕事で旅行してもクソ楽しくない。
       待ち時間、めくるめく待ち時間。

  ツアーガイドが動きながらアピールしだす

ツアーガイド:あーつまらん。まったくもってつまらん。
       あー良くしゃべる。今日のあたしは良くしゃべる。

  従業員が部屋に入ってくる
  が、目をそらして隅に逃げる

ツアーガイド:あーちょっと。おかしな人じゃないですからね。
従業員:何も言ってないじゃないですか。
ツアーガイド:顔が言ってます。
従業員:言ってません。
ツアーガイド:言ってますって。顔がうるさいです。
従業員:何ですか。顔がうるさいって。
ツアーガイド:今日だけなんです。私がよくしゃべってるのは。
従業員:知りませんよ。
ツアーガイド:ほんとに今日だけなんです。
従業員:いや別にどっちでも・・・

  電話が鳴る

ツアーガイド:ハイ。もしもーし。
従業員:いや。でんのかい。
ツアーガイド:うんうん。はいはい。あーそんなですか。ははは。
       で、どなた?・・・あ、切れた。

  目があう2人

ツアーガイド:切られました・・・。
従業員:いや、しらんわ!

  電話をしまうツアーガイド

従業員:ツアーガイドの人ですよね。
ツアーガイド:はい!そうです。その通りです。あなたはホテルの人?

  従業員は黒のスーツに白い手袋をしている

従業員:いや、それが・・・

  死体の人と彼女さんが入ってくる

死体の人:それがさあ、そいつときたら、向こうから赤い洗面器を頭に乗せて来るん
     だもん。びっくりしてさあ。
彼女さん:ホンとですか。それ。
死体の人:ああ、君。

  従業員が後ろを見る

死体の人:いや、君だよ。
従業員:はい。なんでしょう?
死体の人:トマトジュースを頼むよ。
従業員:え?
死体の人:ええと、君は?

  彼女さんに聞く

彼女さん:じゃあ、紅茶で。
死体の人:だそうだ。
従業員:はあ。
死体の人:あ、君。ホットかい?アイスかい?
彼女さん:ええと・・・中間で。
死体の人:・・・だそうだ。

  従業員が部屋の外に向かう

死体の人:ああ、君。
従業員:はい!?
死体の人:別に水も頼む。
従業員:かしこまりました。(小声)なんで私。中間ってなんだよ。

  探偵が入ってきて従業員に話しかける

探偵:あのー。
従業員:違います!!!
探偵:何が?

  従業員が怒りながら出て行く

彼女さん:トマトジュースと水ですか?
死体の人:ああ、ちょっとね。薬をね。
彼女さん:どこか悪いんですか?
死体の人:いや、たいしたことじゃないよ。いつものやつなんだ。
彼女さん:そうですか。そういえば、さっきの話の続きって・・・。
死体の人:さっきの話?
彼女さん:あれです。
死体の人:ああ、洗面器の話ね。あれは・・・。

  ツアーガイドが空気を読まず説明を開始する

ツアーガイド:参加者の方ですよねー。
       おはよございます。
       「良いものを食べて良いとこを見尽くす」ツアーへようこそー。
       集合場所はこちらになっています。
       まずですねー待合室でツアーの皆様がそろうまでまだまだ時間がありま
       すので、休憩していてください。
       てか皆さん早く着すぎだと思いますよお。
       やる気満々かっつうの!

   全員が白い目で見る

ツアーガイド:・・・えー全員そろいましたら出発いたしますので。

   ツアーガイドが自分の世界に入る。それ以外の人は動かない

ツアーガイド:(心の声)私はごく普通のツアーのガイドです。
       もっと言うと私は普通じゃないらしいのです。
       私はなぜか人を怒らせたり、変な空気になったりすることが多いんです。
       一体なぜでしょうか?・・・まったく見当がつきません。
       ・・・まあいいか。別に。

  ツアーガイドが人目も気にせず携帯を操作しだす

彼女さん:それであの話ってその後どうなったんですか?
死体の人:ああ、洗面器ね。ふふふ。あれね。だって向こうから洗面器をさあ、
     頭に乗っけて・・・。

 探偵が話しに入ってくる

探偵:どうも。ツアー参加者のかたですよね。
死体の人:ええそうです。あなたも。
探偵:そうです。

 探偵が手に持っている本に目をやる

死体の人:探偵小説?お好きなんですか?
探偵:ええ。昔、そういう仕事してまして。
死体の人:小説家ですか?
探偵:いいえ違いますよ。そっちじゃなくて。
彼女さん:もしかして探偵のほう。
探偵:ええ・・・まあ・・・そんな感じです。でもですね・・・
彼女さん:すごいですね!私、本物の探偵なんて合うの初めてです。
探偵:たいしたこと無いですよ。だって・・・
彼女さん:やっぱり、実際の探偵って、ペット探しとか浮気調査とかが多いんですか。
探偵:まあ、そうですね。ペット探しばかりでしたが、1回ぐらい尾行をしたことも
   ありますよ。
彼女さん:すっごーい。実際にやってる人いるんですね。
探偵:まあ、たいしたこと無いですよ。ははは。

   探偵が自分の世界に入る。他の人は動かない。

探偵:(心の声)もちろん私は探偵じゃない。
    もっと言うと学生のときに探偵事務所の事務手伝いを3日間しただけである。
    でも言えない。もう言えない。
    なぜなら、女性にすっごーいって2回も言われたからだ。

  カップをなれない手つきでもって部屋に入ってくる従業員

死体の人:ああ、君。こっち、こっち。
従業員:はあ・・・。
彼女さん:そういえば、彼がすっごい面白い話知ってるんですよ。
探偵:面白い話?
彼女さん:ええ。洗面器の話です。
探偵:洗面器ですか。
死体の人:ふふふ。ええとですね。向こうから来る男がなぜか洗面器を頭に乗せて
     歩いてきたんです。そこで僕が、何で洗面器を乗せているんですか?って
     聞いたら・・・その男がこう答えたんです。


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