エレベータトーク

(えれべーたとーく)
初演日:0/0 作者:ちあききょうこ
「エレベータトーク」

作:ちあききょうこ


【登場人物】

スギウラ(24)    D(デラックス)デパートのエレベーターガール。明るく笑顔を絶やさない接客を心掛けている
ジョウシマ(37)   D社の営業部部長。寡黙だが、仕事のできる男
イシダ(31)     D社の典型的お局OL。噂話が好き。
ウスイ(26)     D社社員。影が薄い。何十年もの使われた人や物の心を読むことができる

ツヨシ(41)     T(ツマブキ)社の若手社長。よき亭主関白
タエコ(48)     ツヨシの妻。D社の社長令嬢。よき控えめな妻

ジョウシマの心    本人よりも欲に忠実であり、背伸びをし、寂しがりや
イシダの心      本人よりも暗く、ヒステリックで何かに怯えている
ツヨシの心      本人の内なる復讐心。新入社員だった頃の風貌
タエコの心      本人の父への服従心。本人よりもかなり子供の様な言動をする

子供         Dデパートで買い物をしに来た子。エレベーターガールが憧れのひとつ
アナウンス      無機質であり、他と干渉しない音声
作業員        エレベーター保守会社の作業員



アナウンス「心にも あらでうき世に ながらへば 恋ひしかるべき 夜半の月かな」

エレベーターに3人の客が乗っている。閑静なクラシックが流れ、少しざわつくフロア内。そこへ停止音が鳴り、ドアが開く。扉から子供がペロペロキャンディを舐めながら入ってくる。スギウラはドアを押さえながら。丁寧な言葉で話す。

スギウラ「何階をご利用ですか?」
子供  「うさちゃんの、ぬいぐるみ」
スギウラ「4階、おもちゃ売り場でございますね」
子供  「(静かにうなずく)」
スギウラ「かしこまりました。上にまいります」

到着音。

スギウラ「4階、おもちゃ売り場でございます…」

扉が開いた瞬間に子供が駆け出していく。同時に2人の客が降りる。入れ替えに会社員の男が入る。
 到着音。ひとり降りていき、さらに上の階へ。

スギウラ 「ジョウシマさん、おはようございます」
ジョウシマ「ああ、おはよう。いつもの7階ね」
スギウラ 「営業部ですね、かしこまりました」

7階への到着音が鳴り、ドアが開く。

スギウラ 「7階、D社オフィスでございます。いってらっしゃいませ」
ジョウシマ「じゃ」

ジョウシマがエレベーターから出ていく。

アナウンス「本日は、デラックスデパートにお越しいただき、誠にありがとうございます。当店は地下1階・食品コーナー、1階・2階・婦人服売り場、3階・紳士服と生活雑貨、4階・おもちゃ売り場です。お食事、休憩の際は5階、レストラン・フードコートをご利用くださいませ」

 OLと会社員が乗り込む。OL、気にも留めずスギウラに話しかける

イシダ 「スギウラさん、お疲れ様」
スギウラ「イシダさん、お疲れ様です」
イシダ 「今日も笑顔が素敵ね」
スギウラ「ありがとうございます」
イシダ 「お昼、まだ食べてないみたいね」
スギウラ「十三時には交代でしたので、もうちょっとしたら、ですね」
イシダ 「あら残念。うちの部長の話で盛り上がろうと思ったのに」
スギウラ「ジョウシマさんがどうしたのですか?」
イシダ 「最近ここの近くにケーキ屋さんできたでしょ?部長が仕事帰りに買って帰るのを見ちゃったのよ」
スギウラ「意外ですね」
イシダ 「でしょ?女関係には手を出さずにスイーツよ?花より団子ってことなのかしらね」
スギウラ「疲れたから甘いもの欲しさに買って帰るだけだと思いますけど…」
 
エレベーターが止まり、5階からジョウシマと一組の夫婦が乗り込む。

イシダ  「部長!お疲れ様です」
ジョウシマ「ああ、お疲れ」
イシダ  「今日は帰りに買うんですか?ケーキ」
ジョウシマ「何の話だ」
イシダ  「買わないんですか?」
ジョウシマ「イシダくん、また変な噂を立ててもらっちゃ困るな」

 スギウラ、不満そうな夫婦を気にする。ジョウシマも横目に気にする。まだ何か言いたげなイシダが慌てて黙る。

スギウラ「…お客様、何階をご利用ですか?」
ツヨシ 「(不満そうに)…1階」
スギウラ「かしこまりました」
ツヨシ 「(小さい声で)ふん、営業中に無駄口など職務怠慢も甚だしい」
タエコ 「(小さい声で)ツヨシさん、プライベートでお仕事の話はやめましょうよ」
ツヨシ 「タエコ、きみの父さんの会社だぞ。僕は喝を入れたくなるがね」

 その場にいた社員、凍り付く。

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