悪の組織の作りかた

〜がんばれレッドマン〜

(あくのそしきのつくりかた)
初演日:0/0 作者:八城 悠
 「悪の組織の作りかた 〜がんばれレッドマン〜 」
                                    八城 悠
登場人物
   女王
   将軍
   博士
   伯爵
   ミスター

第零話 「誕生! 悪の組織!」

          怪しげなマークの旗。「世界制服」や「悪の組織の心構え」等が
          書かれた幕が壁に掛かっている。
          どことなく混沌とした雰囲気の漂う会議室といった部屋。
          博士・伯爵が所在無さげにしている。
          それぞれかなり怪しい衣装を纏っている。

 博士 「なあ」
 伯爵 「ん」
 博士 「帰っていいか」
 伯爵 「駄目」
 博士 「いいじゃんか、減るもんじゃないし」
 伯爵 「女王に怒られる」
 博士 「バレやしないって」
 伯爵 「バレるよ」
 博士 「巨人×阪神戦、観てえんだよ」
 伯爵 「駄目」
 博士 「分からず屋」
 伯爵 「僕は野球が嫌いだもん」
 博士 「うわ、汚ね、私情を挟んでやがる」
 伯爵 「どっちが」
 博士 「緊急の会議なんて何だってんだ」
 伯爵 「嫌な予感はするけどね」
 博士 「あーっ、ナイター始まっちまった」
 伯爵 「諦めなって」
 博士 「嫌だ。帰る」
 伯爵 「ちょっと、僕が怒られるよ」
 博士 「じゃあな」

          そこへ扉から将軍が現れる。

 将軍 「全員いるか!」
 博士 「ハイル、ジョーカーッ!」
 将軍 「何をやっておる」
 博士 「オラオラ、女王のお出でだぞ。並べ」
 伯爵 「あいたたた」
博士伯爵「…」
 博士 「女王は?」
 将軍 「まだだ」
 博士 「お前だけ?」
 将軍 「そうだ」
 博士 「なんだよ。気合い入れて損した。ふざけんな、ばーか」
 伯爵 「最低なヒトだ」
 将軍 「何を騒いどる」
 博士 「俺、帰るわ」
 将軍 「理由は」
 博士 「ウチの祖父ちゃんが危篤なんだと」
 将軍 「その人は先月亡くなったろう」
 博士 「そ、それは母方の祖父ちゃんだよ。今度は父方」
 将軍 「お前の親戚は、この季節になるとバタバタ倒れるな」
 博士 「困ったもんだ」
 将軍 「(伯爵に)本当か?」
 伯爵 「ナイターが観たいって」
 博士 「てめえ!」
 伯爵 「へっへーんだ」
 将軍 「うるさいうるさい。今日は重要な会議なのだ。帰っちゃいかん」
 博士 「幹部会議っていっても何やるんだよ」
 将軍 「自分も詳しい事は知らんのだ。女王が緊急だと言うから」
 博士 「そう、その女王だよ。まだ来ないのか」
 将軍 「そろそろお見えになるはずだ」
 博士 「遅い、何やってんだ」
 伯爵 「いつもの通り化粧じゃないの」
 将軍 「口を慎め」

          博士の背後に女王が登場する。

 博士 「安月給でこき使いやがって。化粧で遅れますだ?」
 女王 「…」
将軍伯爵「…」
 博士 「油絵じゃあるまいし、化粧が厚いってんだよな」
 伯爵 「は、博士」
 博士 「ハハハー、お前もそう思うか」
 伯爵 「い、いえ」
 博士 「まったくよぉ、これだから年増は」
 女王 「楽しそうだね、博士」
 博士 「…」
 女王 「何かいい事でもあったのかい」
 博士 「お、おや、女王様。白雪のような柔肌で、今日もピチピチですな」
 女王 「今さっき本音を聞いたばかりだよ」
 博士 「素晴らしいお召し物で」
 女王 「いつもと同じ」
 博士 「女王陛下、ばんざーい」
 女王 「(博士に関節技)厚化粧で悪かったね!」
 博士 「ぐぎがごげ」
 女王 「減俸10%」
 将軍 「お待ちしておりました」
 女王 「うむ。皆、席に着け」
 将博伯「はっ」

          女王を中心に、それぞれ席に着く。
          下手側に将軍・伯爵、上手側に博士・空席。

 女王 「起立」
  皆 「ハイル、ジョーカー!」
 女王 「着席」
 博士 「女王、女王。(隣の席を指して)コイツは?」
 女王 「退職した」
  皆 「…」
 女王 「そんな君達に新しい仲間を紹介する」

          手をパンパンと叩く。
          荘厳な音楽とともに一人の男(ミスター)が入ってくる。

 将博伯「だ、だっせー」
 女王 「世界征服の為にヘッドハンティングしてきた」
ミスター「片山といいま」
 女王 「こらこら。ココは悪の秘密組織なんだ。皆、コードネームで呼び合うのは、
     これ常識」
ミスター「そうなんですか」
 将軍 「して、貴公のコードネームは」
ミスター「まだ決まっていないんですよ」
 女王 「何言ってんだい。さっき教えただろ」
ミスター「え。アレがコードネームなんですか」
 女王 「そうだよ」
 博士 「何てんだい」
ミスター「…です」
 将博伯「え」
ミスター「ミ、ミスターです!」
  皆 「…」
 将博伯「かっこいい〜」
 女王 「でしょ」
 将軍 「女王の案でありますか」
 女王 「うん」
 博士 「どことなく気品が感じられますな」
 伯爵 「流石だなぁ」
ミスター「あの、私は、役職といいますか、どういう立場なんですか」
 女王 「アタイの次だよ」
ミスター「え、でも、だって」
 将軍 「我々、四天王に序列などない」
ミスター「してんのう?」
 博士 「ふん。一番偉そうなくせして」
 将軍 「なんだと」
 女王 「自己紹介がまだだったね。アタイの事は女王とお呼び。はい」
ミスター「じょ、女王」
 将軍 「何を照れておるかぁ」
ミスター「いたっ」
 女王 「彼は将軍。軍事長官だよ」
 将軍 「将軍である。よろしく」
 博士 「な、偉そうだろ」
 将軍 「黙れ」
 博士 「俺は博士。マッドサイエンティストだ」
ミスター「マッド、ですか」
 博士 「マッドだ」
ミスター「はあ」
 伯爵 「僕は伯爵。貴族だ」
ミスター「貴族? 貴族って――」
 伯爵 「貴族だ」
ミスター「そ、そうですか」
 女王 「ま、新しい仲間と共に頑張ってくれたまえ。起立」
 将博伯「ハイル、ジョーカー!」
ミスター「?」
 女王 「着席」
 博士 「慣れだ慣れ」

          ミスター、空席に座る。

 女王 「さて集まってもらったのは他でもないよ。新番組『赤い彗星レッドマン』の
     プロデューサーから、正式にオファーがあった」
 将軍 「むむ」
 博士 「まさか」
 女王 「そのまさか。アタイ達、悪の秘密組織ジョーカーは、レッドマンの敵役(か
     たきやく)に選ばれたのだっ!」
 四天王「えーっ!」
 伯爵 「嫌だ、いい笑いものだ」
 女王 「泣くんじゃない。これで組織がメジャーになるんだよ」
ミスター「あの、私達は秘密組織なのでは」
 女王 「経営が苦しくてね。やるしかないんだ」
 博士 「不景気だからな」
 将軍 「では我々は正義のヒーローと戦わねばならんのですか」
 女王 「そういうこと」
 伯爵 「ウチみたいな中小企業がどうして」
 女王 「世界征服を公約に掲げる悪の秘密組織ってのが局にウケたらしくてさ」
 博士 「確かに今やそんな事を叫んでるのはウチぐらいだ」
 将軍 「こういう昔ながらの組織も少なくなったからな」
 女王 「日本の美しい伝統を守るためにも、今回はチャンスなのだよ」
 博士 「伝説のショッカーみたいになれるかもな」
 将軍 「うむ。日本中にジョーカー旋風を巻き起こそうではないか」
 女王 「起立」
 四天王「ハイル、ジョーカー!(ミスター、ちょっと遅れる)」
 女王 「着席」
ミスター「世界征服って、あれ本気だったんですね」
 将軍 「当然である」
 女王 「1回目のタイトルは『誕生! 赤い彗星レッドマン』」
 博士 「ベタだなぁ」
 伯爵 「そんなもんでしょ」
 女王 「まずは主人公のレッドマンを造らなくちゃいけない」
 将軍 「我々が、ですか」
 女王 「そう」
 伯爵 「そこからやるの?」
 女王 「うん」
 博士 「改造人間かよ」
ミスター「って事は、博士が造るんですよね。凄いなあ」
 女王 「そゆこと」
 博士 「俺ぇ?」
 将軍 「当然だろ」
 伯爵 「博士なんだから」
 博士 「無理無理無理」
 女王 「無理じゃない」
 将軍 「普段から役立たずなんだ、こういう時くらい活躍しろ」
 伯爵 「そうだそうだ」
ミスター「貴方なら出来ます。類まれなる科学力でヒーローの敵を創り出す超悪役。
     いわば影の主人公じゃないですか」
 博士 「そうなの?」
 女王 「そう。だって、アタイは女王とは名ばかり」
 将軍 「自分はただの戦闘隊長」
 伯爵 「僕は陽気な作戦参謀」
ミスター「私は…何でしょう」
 博士 「俺は悪魔のサイエンティスト」
 伯爵 「くぁっくいぃ〜っ」
 博士 「そう?」
 女王 「ボーナスも付けちゃおう」
 博士 「よ〜っしゃ! 俺に任せろ、ジャンジャンいこう」
 伯爵 「単細胞め」
 博士 「(ミスターの手をひいて)じゃ、チャッチャッとやっちまおう」
ミスター「え?」
 博士 「ほら、覚悟を決めろ」
ミスター「え? え?」
 女王 「ちょっと。何処行くの」
 博士 「コイツを改造するんじゃないの?」
 女王 「どうして幹部を改造しなくちゃいけないのさ」
 博士 「なんだ。悪い悪い。お前、キャラが薄いからさ。こういう時の為にいるのか
     と思った」
ミスター「…」
 将軍 「となるといったい誰を」
 女王 「局のプロデューサーが、若手芸人を拉致して監禁してる。ソイツ」
 将軍 「え」
 伯爵 「マズいでしょ、それは」
 女王 「いつもの事だから大丈夫って言ってたよ」
 伯爵 「芸能界って怖いなあ」
 博士 「確か仮面ライダーはバッタと人間だったよな」
 将軍 「だと思うが」
 博士 「そいつは何とまぜればいいんだ」
 女王 「それだよ。それを今から決めるんだ」
ミスター「今から、ですか?」
 伯爵 「駄目だ、この番組」
ミスター「つまりタイトルしか決まってないんですね」
 女王 「そうとも言う」
 将軍 「そうだ、滅茶苦茶弱いのを合体させるのだ」
 博士 「例えば?」
 将軍 「うーむ、ノミとかダニとか」
 伯爵 「あっはっはっ。そりゃいいや、ノミでいこう」
 女王 「馬鹿、弱くしてどうすんだよ」
ミスター「そうした方が勝てるんじゃないですか」
 女王 「アンタ達、何か勘違いしてないかい?」
 四天王「は?」
 女王 「アタイ達は、勝っちゃいけないんだよ」
 四天王「え」
 女王 「今までの組織もそうだっただろ」
 将軍 「しかしそれはヒーローが強すぎたからでは」
 女王 「わざとだよ。わざと」
ミスター「どうしてそんな事を」
 女王 「アタイ達の目的は、いかに格好よくヒーローに負けるかにあるんだ。勝っ
     ちゃったら局に怒られるぞ」
 伯爵 「でも僕達の目的は世界征服でしょ」
 女王 「勿論さ。だけど知っての通り、今のアタイ達にはそれを実現する資金が無
     い。だからココで我慢してギャラを貰うのさ」
 将軍 「そのギャラを元手に、今度こそ世界征服をする訳ですな」
 女王 「さすが将軍。飲み込みが早い」
ミスター「となると一つ問題があります。レッドマンは本気で襲ってくるのですか」
 女王 「うん。彼は何も知らない」
ミスター「私達って、その彼と戦うんですよね。何も知らない本気の彼と」
 伯爵 「しかも勝っちゃいけない。つまり100%の負け」
 将軍 「歴代悪の組織の幹部は皆殺されている」
 四天王「女王〜」
 女王 「えーい、情けない声を出すな」
 伯爵 「死にたくないよ」
 女王 「大丈夫だよ。映像的に上手く誤魔化してくれるから」
 将軍 「どういう事です」
 女王 「局が総力をあげて騙してくれるんだ」
 博士 「どうやって」
 女王 「仮面ライダーを思い出してみな。ライダーキックは、只のキックなのに敵は
     爆発してただろ」
ミスター「そういえば」
 女王 「あれはスタッフの仕掛け。あの隙に皆脱出してるんだよ」
 博士 「だからかぁ。子どもながらに変だと思ってたんだ」
 伯爵 「長年の疑問の意外な真実」
 将軍 「つまり我々ジョーカーが壊滅するのは表面上で、実質被害はゼロと」
ミスター「持ちつ持たれつってやつですか」
 博士 「ヤラセだろ、ヤラセ」
 女王 「レッドマンと視聴者を対象にした、大掛かりなドッキリだと思えばいい」
 将軍 「ではレッドマンは、そこそこ格好よく弱くもない奴にしなくては」
 伯爵 「難しい設定だね」
 女王 「いいかい、アタイ達が負けても格好がつくようなヒーローだからね」
 四天王「ハイル、ジョーカー!」
 女王 「よし」

          一同、ひとしきり考え込む。
          博士、耳にコードを差し込む。

 将軍 「やはり強いのはライオンやトラではないか」
 女王 「ダメダメ。調達するのに金がいる」
 将軍 「では野生のクマでも捕まえるか」
 伯爵 「誰が」
ミスター「改造したら、私達はそいつと戦うんですよ」
 将軍 「よし、やめよう」
 伯爵 「レッドマンという事は、赤が関係しなくちゃダメなのかな」
 女王 「出来れば」
ミスター「はい」
 女王 「はい、ミスター」
ミスター「トマト」
 博士 「あー、バカバカ!」
 伯爵 「そりゃビタミンは豊富だけどさ」
 将軍 「もう少し格好良く」
 女王 「他に意見は」
 将軍 「タコ」
 伯爵 「カニ」
ミスター「水生生物もどうかと思いますよ」
 博士 「よーし、それでいい! ガンガンいけ!」
  皆 「え」
 女王 「どういうことだい」
 博士 「え、あ、現代社会を鑑みるに、常識にとらわれず自由に発想する事も大切で
     はなかろうかと」
  皆 「(拍手)」
 女王 「うん。博士の言う事ももっともだね」
 博士 「バーロゥ。こんなこと真面目にやってられるかっての」
ミスター「え」
 博士 「なんでもない」
 将軍 「こうして考えると赤い生き物などあまりおらんな」
ミスター「赤毛のアンとか」
 女王 「ヒトだろ」
 伯爵 「赤ずきんとか」
 女王 「それもヒト」
 将軍 「赤ちゃんとか」
 女王 「ヒトだろーがっ!」
 博士 「よーし、そうだ! ナイスナイス!」
  皆 「?」
 博士 「よくやった! しぇげなべいべ〜っ!」
 女王 「どうした博士」
 博士 「え」
ミスター「何かいいアイディアでも浮かびましたか」
 博士 「アイディア?」
 伯爵 「赤い生き物だよ」
 博士 「ああ、うん、それね。もちろん」
 将軍 「何だ」
 博士 「えーと、赤…赤トンボ」
  皆 「…」
 博士 「えーとね」
 女王 「いいかもしんない」
 博士 「へ」
 将軍 「真っ赤なトンボの改造人間」
 伯爵 「虹色メガネで悪を討つ」
ミスター「赤い彗星 レッドマン」
 女王 「いい! それだ!」
 伯爵 「夕日が似合いそうだね」

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