恋ヶ島

(こいがしま)
初演日:2014/5 作者:山崎 勇
    恋ヶ島     
              山崎 勇
          

登場人物               
               
お光:佐渡の籐兵衛の娘
吾作:柏崎の船頭
袖浜籐兵衛:佐渡、小木の大網元
多恵:村娘。お光の幼馴染
勘吉:吾作の仕事仲間(声だけ)



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プロローグ
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ト:SE静かな波の音。吾作下手から何か船道具を持って登場。
吾作:おお、いい風になった・・・。空もこんなに晴れて。
ト:座って、しばらく作業をする。
勘吉:(下手から声のみ)吾作さん、もう、準備はできましたか。船頭さんが
 来なけりゃ船は出せませんぜ。風が変わらないうちにいきましょう。
吾作:もう少し待ってくれ。長旅だから万が一が無いようにしておかないと。
ト:吾作、しばらく作業。 しばらくして、ふっと海を見る吾作
吾作:今日は佐渡が良く見えるな・・・・
ト:ゆっくり暗転。
あわせて回想つなぎBGM(笛)
完全暗転したらBGMとまり。
ト:激しい嵐の音と波しぶきの音FI。背景見えるか見えないか位の深い青。
 スポットあたらずシルエットのみ。
吾作:おい、帆は大丈夫か六助、ああ、しっかりトモにつないどけ。
 何?櫂が流された? 何とかなる、あきらめるんじゃねえ。
 水汲み出せ、これも使って汲み出すんだ! 嵐SE少し静まる
 (しばらくして)皆、すまねえ。この俺が、船出そうなんて言った
 ばっかりに、こんな所まで流されちまった。 確かに時化続きで
 船出せなかった。でも積荷が腐っちまっても、無理なもんは無理
 だったんだ。皆、本当にすまん。
 だが、こんなとんまな俺でも、まだ信じてくれるなら、一緒に助かろう。
 ・・・・ああ!空が、北の空があかるい。そうだ!佐渡に向かうんだ。
 ・・・いや、南はダメだ。嵐が酷すぎる。遠くても北は波は静かだ。
 絶対、助かる。ロク、トメ、あきらめるな。絶対に・・・
ト:波と嵐の音はげしくなり。一層強くなる嵐の音。木の折れるすざましい音。
船が転覆。水に落ちる音。悲鳴。
暗転。SEフェードアウト。吾作暗中上手はけ。 少しして佐渡のSE(ツバメ?)。
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第一場 袖浜籐兵衛
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ト:全照、籐兵衛上手から登場
籐兵衛:いつまで着替えるのに手間取ってるんだよ、全く。 
 おーい、お光ー。
お光:もう少し
ト:しばらくいらついて
籐兵衛:これじゃ、御奉行様の屋敷に昼までに着けないぞ。
 いつまでかかってるんだ。
お光:(声だけ)わかったから待ってよ、おとっつさん。
籐兵衛:なんでまたそんなに遅いんだ。
ト:お光上手から登場
籐兵衛:おお、やっと来たか。
お光:だって、出しなに正吉が熱を出して。
籐兵衛:なに、またか。全く、お前が甘やかしすぎるからだ。
お光:そんな事ないわよ。大体、今年は春から天気がおかしくて、
 正吉も喉やられちゃって
籐兵衛:ああ、わかったわかった。とにかく急ぐぞ。今を時めく
 大久保様のお屋敷に伺うんだから。
お光:わかってるわ。 
籐兵衛:今日は、ご奉公が決まる大事な顔見せの日なんだ。
 生半可な気持ちで行くんじゃねえぞ。
お光:もう、朝から何度も
籐兵衛:いや、何度でも言うぞ。 大久保様はこの佐渡全体を取り締まる
 金山奉行だ。しかも、徳川様の懐刀(ふところがたな)だった切れ者だ。
お光:でもあたしは奥女中に行くんでしょ。直(じか)にお殿様に
 お目見えする事なんて無いんじゃない。
籐兵衛:そりゃそうだ。そうに決まってるけど、兎に角、万が一にも
 粗相があっちゃならねえ。
お光:粗相粗相と言わないでよ。 心配になってくるじゃない。 大体この
 ご奉公だって、おとっつあんが急に持ってきた話だし、あたしにも心の
 準備ってものが
籐兵衛:なに甘っちょろい事言ってるんだ!
 北山から金(きん)が出てからこのかた、島全体が金の景気で大騒ぎだ。
 真野の勘兵衛やら両津の作兵衛やら色んな家の奴らが娘をお奉行の
 お傍にあげようとやっきになってる。でも、お前のように5つの年から、
 芸事や習い事をしてきた娘はいねえ。今が、ウチの願ってもねえ機会なんだ。
お光:でも、武家のお嬢様も来られると聞いているし、あたしみたいな網元の娘が
籐兵衛:そんな事はねえ。大体、この佐渡は昔から流人の島だったから、
 そもそも島に来るのを嫌がるお女中方ばっかりだ。だけど、お前は生粋の島の娘だ。 
 島の事何でも知っている。何かと御奉行様の屋敷で重宝されるだろう。
お光:そうだけど
籐兵衛:なあに、お奉行様にお仕えすると言っても、たかが奥女中だ。
お光:でも、
籐兵衛:口答えするんじゃねえ!おめえは、越後に轟く袖浜籐兵衛の娘なんだ
 武家の娘じゃなくてもしっかり勤まるって所を見せてやれ。
お光:・・・はい。
籐兵衛:まあ、俺がいるんだ。大船に乗ったつもりでいろ。
 ・・・後はだ。あさってからお良が来るから、ちゃんと家の中の
 支度を終わらせておくんだぞ。 正吉の看病もしてやっといてくれ。 
 お富も大分年だし、リツは気がきかねえから、お前がちゃんと見てやるんだ。
お光:ええ。 
籐兵衛:それで、お良の部屋だが、東の角部屋をあけておくんだ。
お光:・・・角部屋?
籐兵衛:ああ、もう誰も使ってねえからな。 あそこが一番日当たりがいいし、
 袖浜の籐兵衛の所に後添えに来るのに、手狭な部屋をあてがう訳には行かんからな。
お光:・・・でも、おとっつあん。 あの部屋は
籐兵衛:・・・・なんだお光。 俺のする事に文句があるのか?
お光:でも、角部屋はおっかさんの
籐兵衛:でもたぁなんだ、でもたぁ。親の言う事に口答えするか!
・・・なんだ、なんか不満でもあるのか。 お浜はもうとっくに死んだんだ。 
 仕方がねえだろう!いつまでもウジウジしてるな・・(光の顔色を見て)
 ああ、こうしちゃいられねえ。 約束に遅れちまう。急ぐぞ。
お光:・・・(うなづくだけ)。
籐兵衛:なんだよ。まったく。 返事もしやがらねえ。
ト:ぶつぶつ言いながら下手に籐兵衛はける。お光、不服そうについていく。
 一瞬暗転。 
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第二場 秘密の崖
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ト:少ししてSEとび。すぐ全照。海に面した高い崖。お光、下手から怒りをこめて登場。
 しばらく、歩き回り。 海を見ても怒りが収まらない。
 小石を投げる。
お光:えい、や、
ト:ちゃぼん、という水音。繰り返してだんだん大きくなる。(3回) 
 めちゃくちゃ大きい石を持ち上げようとする。
 しかし持ち上げきれずにバランスくずす。お光悲鳴。
 上手からつかつかと出てきて助け起こす吾作。とび音 FO
吾作:あぶねえぜ。 もうちょっとで崖から真っ逆さまだ。
ト:お光、息をついて
吾作:ちょっと、石が大きかったかな。小木の海を埋め立てる
 つもりかと思ったぜ。
お光:(ちょっとむかついて)ずっと見てたんですか?
吾作:ああ、その影で寝てたんでね。
お光:影に隠れて見てたなんて、ずいぶんいい趣味ですね。
吾作:いや、あんまり凄い勢いだったから、声掛けそびれてさ。
 しかし、きれいな身なりのお嬢さんにしては、ずいぶん荒っぽいじゃねえか。 
お光:ええ、ええ、ちょっと事情がございましてね!
 ところで、あまりお見かけしない顔ですが、お前さんは?
吾作:俺はこの前から良蔵さん所にやっかいになってる、柏崎の吾作ってもんだ。
お光:ああ、おとっつあんが言ってた船頭さんね。 もう、体は大丈夫なの。
 小木の浜に流れ着いた時はあやうく死にかけてたって聞いたけど。
吾作:ああ、おかげさんでもうかなりいいよ。 海の男がいつまでもごろごろ
 してられねえ。 今日は天気も良いから試しにこまで上がってきたのさ。
 ところで、あんたは?たしか、この近くは網本の籐兵衛さんの地所だったな。
 籐兵衛さんの娘さんか?
お光:知らないわ。あんな分らず屋。(話そうと意を決して)
 酷いのよ!この前も急にあたしの奉公先を決めて来たとか言って。
 いつもいつも、勝手に話決めてきて、二言目には親には口答えする
 もんじゃねえ、だし。 大体、あたしはたらい舟で貝取ったり、
 ハモのお寺で学問に言ったり、体が弱い弟の看病をしなけりゃならないの。
 だから奉公になんか行っていられないの。場所はここから八里もある相川だし。
 それによ。今日はいきなり後添えを決めて、来週からウチに来るから
 準備しておけだって。今更あんな人、おっかさんなんて呼べないわよ。
 もう、いい加減にしてよ・・・・
ト:しばらくして、お光われに返って。
お光:あ・・・その・・・ごめんなさい。
吾作:いや

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