生徒会長選挙はホニャララの件


    生徒会長選挙はホニャララの件


    〈登場人物〉

  山倉アスカ…男勝りで豪放な演劇部のムードメーカー。
  江川マリ…学校きっての才女。演劇部副部長。
  若菜シンジ…単純・短絡だが根は真面目な演劇部部長。アスカとは幼馴染。
  小林レイ…過激な文学少女。感情を見せない皮肉屋。
  星野ヒカリ…無垢な一年生。演劇部に入ったことを少し後悔している。

    役名はわかりやすいイメージにすぎません(笑)ので変更推奨


  生徒たちのかすかな喧騒が聞こえる。

  幕。

  無人の舞台。

アナウンス「…それでは、新生徒会長、山倉アスカさんの挨拶です」

  アスカ、舞台袖を気にしながらぎこちない足取りで登場。

アスカ「…えー(声が上ずる)…コホン、…えー、このたびー、新しいー、生徒会長をさせられることになりましたー…あ、いや、新しい生徒会長になりましたー、山倉アスカですぅ…。あの…その…あー、すいません、ちょっと打ち合わせを」

  アスカ、袖に戻る。

アスカ(声)「…やっぱ無理。無理だって。…そんなこと言ったってさあ。…わかりましたよ、言いますよ。言えばいいんでしょ、言えば!」

  アスカ、再登場。

アスカ「…あー、失礼しました。改めまして、このたび新しい生徒会長に選ばれました…いや、選ばれちゃいないな、えー、なりました、山倉アスカです」

  まばらな拍手。

アスカ「あ、どうも。…えー、それでですね、みなさんに何でこんなことになっちゃったのかってことをお話しなくてはならないと思うんですが…あー、うーん…すいません、ちょ、ちょっと失礼」

  アスカ、足早に袖へ戻る。

アスカ(声)「…いや無理!絶対無理!そんな雰囲気じゃない!…雰囲気変えろ?どうやって!」

  アスカ、笑顔で小走りに登場。

アスカ「みなさんこんにちは!新生徒会長、みんなの山倉アスカでーす!あのね、生徒会長に就任するにあたって、みんなに話しておかなきゃならないことがあるんだ。…ごめん、ちょっと待っててね」

  アスカ、真顔に戻って袖へ。

アスカ(声)「…どうすんのよ、この空気!修復不可能じゃないの!…わかった、わかりましたよ!…まったく、何であたしが…ええ、やりますよ。やればいいんでしょ!やってやろうじゃないの!」

  アスカ、悲壮な表情で登場。

アスカ「…たびたびすいませんでした。慣れてないもので…大丈夫です。大丈夫。今度はちゃんとやります。…本当は、あたしなんかがここにいちゃいけないんです。マリ、いや、江川さんとか、小林さんとか、山本くんじゃなきゃいけないんです。…だってあたし、立候補なんかしてないんですから。そうでしょ?おかしいでしょ絶対!…あ、すいません、取り乱しました。…正直、混乱してます。でも、それはみなさんも同じだと思います。いえ、きっとみなさんの方がもっと混乱していると思います。だから、説明しなきゃいけないと思います。説明責任って奴です。ただ…自信がありません。どれだけ言葉を並べても、わかってもらえる気がしません。だから……これから……芝居をします!」

  ざわざわ。

アスカ「お願いします、先生!あたしたちに時間を下さい!もしだめだと言うなら、あたし、この場で生徒会長を辞任します!…ありがとうございます!…そんなもの見たくない、かったるいという人は、席を立ってもらってかまいません。でも、たとえたった一人しか残らなくても、あたしたちは、やります!言葉だけでは伝わらないものがある、そう信じているから。理屈だけでは心は動かない、そう信じているから。なぜなら、あたしたちは……演劇部だから!」

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