Working for Peanuts
(夜のオフィス。先輩社員(以下A)と後輩社員(以下B)が、机を並べて残業をしている。)
(A、ちらりと時計を見て伸びをしながら)

A「うーん……ちょっと休憩するか」
B「あ、はい」
A「……悪いね、残業付き合わせちゃって」
B「あ、いえ、全然大丈夫です」
A「でもやっと週末だな……」
B「そうですねー」
A「休みはどっか行くの?」
B「いやー、家で映画でも観てようかなーって。天気も悪いみたいだし」
A「ああ、そっか。……映画好きなの?」
B「いや、全然観ないですね。なので、逆に、久々に観てみようかなって」
A「ああ、なるほどね」
B「何か、オススメとかあります? ○○さんの」
A「いやー、俺も別にそんなたくさん観てるわけじゃないからな……あ、でも、久々に映画観るんだったら、あれがいいよ」
B「何ですか?」
A「昔観た映画で、何となく覚えてるやつ。ちっちゃい頃に観た映画とかでさ、内容覚えてないけど、「面白かった」っていう記憶だけ、こう、漠然と残ってるの、あるじゃん」
B「あー、ありますね」
A「そういうのを改めて観ると、色々発見があって面白い」
B「なるほど……あー、私、あれ好きでした。昔、洋画劇場で観た……あのー、あれ」
A「何?」
B「あのー……あー、全っ然出てこない」
A「ははは」
B「あのー……あの人が出てる映画なんですよ……」
A「誰?」
B「あー……誰だっけな……あのー……名前がー……」
A「有名な人?」
B「有名です有名です。あー、顔は浮かんでるのに……」
A「あるある、そういうの。やばいね、もう老化が始まってんじゃないの」
B「えー? やだなー……あのー……」
A「うん」
B「……」
A「……」
B「……あ、ピーナッツ!」
A「……ん?」
B「ピーナッツ!」
A「……うん?」
B「ピーナッツ、みたいな名前の俳優です!」
A「……え?」
B「そうそう、ピーナッツ! そう、ピーナッツ!」
A「うん、それはもうわかったから。……誰?」
B「えーとね、全体的に、ピーナッツバターみたいな名前なんですよ!」
A「ちょっと待て、勝手にバターにすんな。えー? 誰だ? ピーナッツバター?」
B「そうですそうです、ピーナッツバターさんです! で、その人が出てる……」
A「待て待て待て待て、全然俺わかってない。ピーナッツバターみたいな名前の俳優?」
B「はい、そうです」
A「……全っ然わかんねえ」
B「あのー……あれです。ちょっと待ってください」
A「うん、待つよ」
B「……そう、ピーナッツバター」
A「だからそれはわかったって! 待ち損じゃねえか!」
B「でも、そんな感じの名前としか言いようがないんですもん」
A「えー? ピーナッツバター……ピーナッツ……ええ?」
B「で、その人が出てた……」
A「待てっつうんだよ。ピーナッツ……?」
B「バター」
A「バターっていうのが余計わかんないんだよな」
B「あの、正確には、バターじゃなくて」
A「うん」
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