誰がジャックを殺したか?

(だれがじゃっくをころしたか?)
初演日:2015/2 作者:高平 九
誰がジャックを殺したか?      高平 九

    │キャスト  七名(全員女子)                        
    │ A(ニ年)            部長                  
    │ B(三年)            幽霊部員(二年)            
    │ C(三年)            ジャック(幽霊)            
    │ D(二年)                               
    │                                     
    │   1                                 
    │                                     
    │  部室。                                
    │  パネルを下手に三枚斜めに配置。その前に段ボール箱がおいてあり、「衣装」と
    │  か「小道具」などと書かれている。中央からパネルの裏に出入りができる。 
    │  箱のさらに下手に黒い衣装を着けたジャックの幽霊が体育座りをしている。部員
    │  たちには見えない設定。                        
    │  部屋の中央に、泣いている演劇部員A(ひろみ)。胸に何かを抱きしめている。
    │  他の部員二人B・Cが上手から入ってくる。               
    │                                     
  B │どうしたの?ああ、泣きの稽古か……。あれ、今度のあんたの役って男役で、しかも
    │マッチョじゃなかった? 泣いてるシーンなんかあったっけ……。       
    │                                     
  C │マッチョの男が泣いちゃいけないっての? それ偏見よ。           
    │                                     
  B │あれれ、あんたまだあたしに平凡な主婦の占い師の役とられたこと根にもってるわけ。
    │せこい女。                                
    │                                     
  C │そそそんなこと、ななないもん。                      
    │                                     
  B │あらららら、わわわかりやすいリアクションですこと。ほほほほほ。      
    │                                     
  C │くくくくそー。(とCはDにつかみかかる。子供のようにつかみ合いをするBとC)
    │                                     
  A │わーっ。(と、それを見ていたA、大声で泣き出す。BとCけんかをやめて、Aを見
    │る)                                   
    │                                     
  C │稽古……じゃない? じゃあどうして。                   
    │                                     
  B │あれじゃない、あれ。                           
    │                                     
  C │あれって?                                
    │                                     
  B │あれよ、あれ。                              
    │                                     
  C │……ああ、あれかあ。(BとC妙に納得する)                
    │                                     
  A │わーっ。(と、見ていたA、また大声で泣きだす)              
    │                                     
  C │えーあれじゃないのお? ねえ、何かヒントないのかなあ、          
    │                                     
  B │じゃあ、早押しで勝負だ!(BとC、早押しボタンを小道具の箱の中から持ってくる。
    │                                     
    │   Aしゃくり上げながらも問題を出す。                 
    │                                     
  A │それでは問題です。私の大好きなものが死んじゃいました。それは何でしょう? 
    │                                     
  B │(ピンポーン)                              
    │                                     
  A │はい。赤の方どうぞ。                           
    │                                     
  B │あたし赤なんだ。いつ決まった?                      
    │                                     
  C │さあ。                                  
    │                                     
  A │三秒以内に答えないと不正解です。三、二……。               
    │                                     
  B │…嵐の相葉くん!                             
    │                                     
  A │ブー。死んでません。解答権が移ります。白の方、どうぞ。          
    │                                     
  C │えーと……てんぷら。                           
    │                                     
  A │ブー。惜しい。                              
    │                                     
  B │えー、てんぷらが惜しいの? てんぷらってどうやったら死ぬの?       
    │                                     
  C │揚げたら死ぬんじゃない?                         
    │                                     
  A │残念。二人お立ちの状態で、アタックチャンス!               
    │                                     
  B │ねえ、誰が答えるの?                           
    │                                     
  C │さあ。                                  
    │                                     
  A │青は赤と二役でお願いします。スペシャルヒント……答えはクではじまるものです。
    │                                     
  B │わかった。(ピンポーン)                         
    │                                     
  A │はい。青の方。                              
    │                                     
  B │えーと。ク……くじびき                          
    │                                     
  C │ははは、あんたくじびきがどうやって死ぬのよ                
    │                                     
  B │てんぷらだって同じでしょ。                        
    │                                     
  C │だから、てんぷらは揚げたときに……                    
    │                                     
  A │では、二つ目のスペシャルヒント、……これは何でしょう(と胸から両手を離し掌を
    │広げてBとCに見せる。そこには大きな大きな蜘蛛の死骸。二人それを覗き込み、一
    │瞬凍る)                                 
    │                                     
 BC │ジャックが死んだ!(BC二人正面に向かって叫ぶ。小暗転)         
    │                                     
    │   2                                 
    │                                     
    │  同じ部室。ABCの三人の演劇部員が舞台中央ですすり泣いている。Aが大事そ
    │  うに小さな箱を膝にのせて、BCはそれを見ながら泣いている。箱にはマジック
    │  で「ジャック」と書いてある。                     
    │  部長が上手から入ってくる。                      
    │                                     
 部長 │ごめーん。進路説明会が長引いて、ショートホームルームの担任の話が長くてさ、そ
    │れから掃除をサボろうとしてつかまったもんだから、あとさ……        
    │                                     
ABC │しくしく……                               
    │                                     
 部長 │なんだ、まだ三人しか来てないのかあ。十五分もかかって言い訳こしらえて来たのに
    │なあ。そんしたあ。                            
    │                                     
ABC │しくしく……                               
    │                                     
 部長 │えへん。部長として言わせてもらうと、もう四時十分前だっていうのに、なぜ着がえ
    │てもいないの。あたしがいないと何もできないわけ。             
    │                                     
ABC │しくしく……                               
    │                                     
 部長 │……さあさあ着替えて!、着替えて!                    
    │                                     
ABC │しくしく……                               
    │                                     
 部長 │ぼんやりしてると、顧問の山田先生が来ちゃうよ。教員矢の如しっていうでしょ。
    │                                     
ABC │しくしく……(え?)                           
    │                                     
 A  │……それはあ、光陰矢の如しですう(三人とも泣き笑いになる)        
    │                                     
  部長 │え? 光陰? そそそうよ。わわわかってるわよ。わわわざとに決まってるじゃない。
    │教員矢の如しって面白くない?                       
    │                                     
 B  │……だからさあ、いちばんのバカを部長にするのは反対だったのよ。      
    │                                     
 部長 │だれがいちばんのバカですって。                      
    │                                     
 B  │そんなのひとりしかいないでしょ。                     
    │                                     
 部長 │バカをバカって言うひとがバカなんだって。バカが言ってたもん。       
    │                                     
ABC │え!                                   
    │                                     
 部長 │ちがった。言ってたのはパパ。                       
    │                                     
 B  │やっぱり親子二代でバカなんだ(みんな笑う)                
    │                                     
 部長 │……あんたまだあたしに部長選挙で負けたこと根に持ってるわけ。ちっちゃい女ねえ。
    │                                     
 B  │そそそんなこと、ななない。                        
    │                                     
 部長 │あらららら、わわわかりやすいリアクションですこと。ほほほほほ。      
    │                                     
  B │くくくくそー。(部長とB子供のようにつかみあいのけんか。C・Dが仲裁しようと
    │するが納まらない)                            
    │                                     
  A │わーっ。Aが大声で泣き出す。部長とB、そしてC・Dも彼女を見る。     
    │                                     
 部長 │何?どうしたの?……ここは私にまかせてあんたたちは早く着替えて。     
    │                                     
 C  │でも……                                 
    │                                     
 部長 │いいから、こういうときこそ部長の出番。                  
    │                                     
 C  │……じゃあ、お願い。(二人はパネルの後ろに入る)             
    │                                     
 部長 │それで?どうしたの?                           
    │                                     
 A  │ジャックが……                              
    │                                     
 部長 │……死んだのね。                             
    │                                     
 A  │わあー!                                 
    │                                     
 部長 │そう、あんたそんなにジャックが好きだったんだ。でも、大丈夫。彼はすぐによみが
    │えるよ。                                 
    │                                     
 A  │無理ですよ。もう動かないんです。                     
    │                                     
 部長 │そんなことないって、あんたがまだ知らないだけよ。彼は不死身なんだから。  
    │                                     
 A  │そうなんですか。ジャックってそんなに強いんですか。            
    │                                     
 部長 │強いのなんのって、無敵よ。デイヴィ・ジョーンズにも負けない。       
    │                                     
 A  │部長……もしかしてそのジャックって……                  
    │                                     
 部長 │……そう。ジャック・スパロウ。ああ、ジョニー・デップ様。『カリブの海賊』の『ワ
    │ールド・エンド』で、ジャックは死者の国からよみがえるのよ。今夜、レンタルして
    │見てみなさい。                              

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