サンタクロースの休日

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初演日:0/0 作者:梓間ヒサト

【登場人物】
・ニコラス(男)……誰もが知るサンタクロースその人。思い立ったらすぐ実行する行動派だが、どこか抜けていていつも失敗する。しかし持前の楽観的な性格で、どんな困難も受け流してしまう。

・コメット(男)……トナカイ達の中で一番若い。心優しいが心配性な面もあり、且つ気が弱いためにいつもニコラスに振り回されている苦労人。

・ヴィクセン(女)……女トナカイ。気が強く、トナカイ達の中では頼られていると同時に恐れられてもいる。ニコラスの秘書のような存在。

・タカシ(男)……大学一年生。バイトを始めてもうすぐ一年になる。強がりだが本当は気が弱い。五人の中では唯一の常識人でツッコミ役。

・店長(女)……本屋の店長。常に冷静で男っぽい性格。



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  ピンスポット舞台上手
  ニコラス登場

ニコラス 「あーあ、暇だなぁ……。クリスマスが終わって、正月も終わってしまった。そういえば、今年はダッシャーが餅を喉に詰まらせて大変だったなぁ……。日本の餅、なかなか美味かった。来年はおせちに挑戦しようか……」

  ニコラス、ここで観客に気付く

ニコラス 「おやおや、失礼。こんな大衆の目の前で大きな独り言を。……え? なんだって? ダッシャーって誰かって? ふふふ。教えてやろう。ダッシャーというのは、私のソリをひいてくれるトナカイの名前だよ。私には8匹の、部下であり仲間であるトナカイがいる。
      え? トナカイとかソリとか、意味がわからないって? ははは。私のこの格好を見て気付かないのかい?」

  ニコラスかっこつけた決めポーズ

ニコラス 「では教えてやろう! 私の名前はニコラス。あの有名なサンタクロースだ! なに? 胡散臭いって? そんなことを言う奴には、プレゼント届けてやらないぞぉ? ……ははは。冗談さ。今度のクリスマス、楽しみにしていたまえ」

  ニコラス、突然肩を落とし、溜息を吐く

ニコラス 「……はぁーあ。それにしても暇だ。暇すぎる。春が来たばかりの頃はオフシーズンが嬉しかったのだが……やはり休みが長すぎるのはよろしくない」

  そこで顔を上げ

ニコラス   「そうだ! 旅行に行こう! どこがいいかなぁ……。……日本。そうだ日本がいい……! おーい。コメット!」
コメット(声)「はーい」
ニコラス   「コメット、旅行に行かないか?」
コメット(声)「旅行、ですか? どちらに?」
ニコラス   「日本だ!」
コメット(声)「日本?」
ニコラス   「そう、日本。ジャパン!」
コメット(声)「英語にしただけじゃないですか」
ニコラス   「それほどまでに私は浮かれているということだよ。さぁ、思い立ったが吉日。早速出かけよう!」
コメット(声)「え、今から!?」

  ニコラス、歩き出す

ニコラス   「さぁ、行こう!」
コメット(声)「え? えぇ? ちょっと、ニコラス様!」

  ニコラス上手に消える
  ピンスポット消灯
  開幕

  明転
  とある商店街に立つニコラスとコメット

ニコラス 「おー、着いたぞ! 日本! トーキョー!」
コメット 「あぁ、なんて行動力だ……」
ニコラス 「さぁコメット、行こう!」
コメット 「行こうってどこに―」

  そこでコメット、気づく。自分の身体を見下ろす

コメット 「人間の身体だ……」
ニコラス 「そういえば君は初めてだったな」
コメット 「え?」
ニコラス 「私にかかれば、どんなものにでも変身できるのさ! トナカイのままだと不便だからね」
コメット 「変身? ……すごい」
ニコラス 「お? なんだって? もう一回言ってみ?」
コメット 「な、何も言ってません!」

  コメット顔を背けて

コメット 「すぐ調子に乗るんだから……」
ニコラス 「ん? 何か言ったかい?」
コメット 「なんでもありません!」
ニコラス 「そうか。ま、練習すれば自分でもできるようになるさ」
コメット 「そうなんですか!? 僕がんばります!」
ニコラス 「うん。よし、じゃあ行こう」
コメット 「あ、ニコラス様。目的地は決めていらっしゃるのですか?」
ニコラス 「目的地?」
コメット 「はい。ここは東京ですよね。やっぱり東京タワーですか? それともお台場ですか? あ、浅草も定番ですよね! 竹下通り! ……は、僕達には合わないか」
ニコラス 「君はなんでそんなに東京に詳しいんだ……」
コメット 「あぁ、東京! 一度行ってみたいと思ってたんですよね。(辺りを見回して)東京タワーはどこですか?」
ニコラス 「見えないよ」
コメット 「え、見えない? ここ、東京ですよね?」
ニコラス 「そうだ」
コメット 「東京なのに東京タワーが見えないなんて、そんなわけ、」
ニコラス 「東京タワーが見えない場所だってあるさ。ここは遠すぎる」
コメット 「遠すぎる? ……そういえば、なんだか東京らしくない景色ですね。なんというか……静か、ですね」
ニコラス 「あぁ、落ち着いていていい雰囲気だろう! フィンランドみたいで親近感が湧くなぁ」
コメット 「全然違いますよ!」
ニコラス 「そうか? まぁ、言われてみればそうだな」
コメット 「言われる前に気付いてくださいよ! ……で、ここはどこなんですか?」
ニコラス 「東京」
コメット 「東京のどこですか!」
ニコラス 「多摩だよ」
コメット 「タマ? なんですか、それは。猫の名前ですか?」
ニコラス 「だから場所の名前だって。多摩地域!」
コメット 「僕がまだ知らない東京の地域があったなんて……」
ニコラス 「君は東京の全てを知っているつもりだったのかね? というか多摩地区を知らないなんてモグリだろう? 東京の半分近い面積を締める地域だぞ?」
コメット 「なんてこった……」
ニコラス 「おいおいコメット。そろそろ気を取り直してくれないか?」
コメット 「はい……」
ニコラス 「僕達は今迷子なんだよ?」
コメット 「え……」
ニコラス 「はぁーあ、一体ここはどこなんだか!」
コメット 「……なんてこった」
ニコラス 「あ! 三多摩でサンタ迷子、なんつってー」
コメット 「……もう帰りたい……」
ニコラス 「え? 帰りたいって? 今着いたばかりじゃないか」
コメット 「だってどうするんですかぁ。迷子なんでしょう? 観光地ならともかく、人いないじゃないですか!」
ニコラス 「まぁまぁ、落ち着きたまえ。ほらコメット、あそこに本屋がある」
コメット 「本屋?」
ニコラス 「あそこで地図を買ってこようじゃないか」
コメット 「……なるほど! さすがニコラス様です」
ニコラス 「だろう? ほらほら、もっと言ってくれ!」
コメット 「さぁ、行きましょう」

  コメット、ニコラスを無視して歩き出す

ニコラス 「え? ちょっと!? コメット! 無視!? シカト!? あ、鹿だけに?」

  コメット、最後の言葉に反応して立ち止まり、振り返る

コメット 「僕は鹿じゃなくてトナカイです!」

  また歩き出すコメット、それを慌てて追うニコラス

ニコラス 「コメット! ちょ、待ってくれ。私が悪かったから!」

  暗転

  明転
  書店店内

タカシ  「……あー、何ですか、このお札」
ニコラス 「お金だよ」
タカシ  「明らかに日本の通貨ではないんですけど……」
コメット 「ユーロです」
タカシ  「ユーロ? あなた方、どっから来たんですか。変な……いえ、変わった格好されてますけど……」
ニコラス 「フィンランドだ」
タカシ  「フィンランド? あの北欧の?」
ニコラス 「そうだ。私はかの有名なサンタクロー―」
コメット 「(ニコラスの口を塞ぎながら)あぁ、気にしないでください。この人ちょっと虚言癖があるんです」
タカシ  「は、はぁ……」
ニコラス 「ちょっとコメット。上司に対して酷くないかい?」
コメット 「で、ユーロはここでは使えないんですか?」
ニコラス 「え? 無視? シカト? やっぱり鹿だかうぐぐ―」
コメット 「(ニコラスの口を塞ぎながら)僕達、これが全財産なんです」
タカシ  「全財産? これが? 観光に来たんじゃないんですか?」
コメット 「観光に来ました」
タカシ  「……まぁ、はい。とにかく両替してもらわないと、うちではどうしようもないです」
コメット 「両替?」
ニコラス 「コメット……そろそろ手、放して。口と鼻同時に塞がない」
コメット 「あ、忘れてました。すみません」
ニコラス 「忘れないでおくれよ。あとちょっとで殺人だよ?」
タカシ  「あの……お取込み中すみません。とにかく、両替に行ってください。確か、銀行とか郵便局でできますよ」
コメット 「あ、はい! ありがとうございます!」
ニコラス 「……両替か」
コメット 「どうかしましたか?」
ニコラス 「為替レートって今いくらだったっけ?」
コメット 「為替レート?」

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