雨宿りとトカゲ
雨宿りとトカゲ

登場人物
雲原海斗(くもはら かいと)
露木恵美(つゆき めぐみ)

 土砂降りの雨の中、バス停で雨宿りをしている恵美。
 持っているタオルで軽く体をふいている。
 走りながら海斗がバス停に入ってくる。
 傘代わりに使っていた鞄を置き、体についた雫を払う海斗。
 お互いに気づき、軽く会釈する。

海斗「脳内:大学の帰り道、突然土砂降りの雨に襲われた俺は近くのバス停で
  一時雨宿りをすることにした。するとそこにはおそらく俺と同じ思いをしたので
  あろう一人の女性が持っているタオルで体を拭きながら雨宿りをしていた。
  俺は…運命を感じた!いや、早いと思うかもしれないよ?でも、男ならこういう
  シチュエーション一度は妄想するでしょ?同じ日に同じ場所で女性と
  二人きりで雨宿り。ドラマみたいじゃん!
  で、向こうから話しかけてくれたりなんかして。
  え?そりゃ向こうからに決まってるじゃん。だって俺コミュ障だし。
  で、で、話が弾んで仲良くなって連絡先交換して一緒にご飯食べに行って。
  何年後かに『私たちの出会いは雨宿りからだったね~』
  『そういえばそうだな』
  『あーもう忘れてたでしょ~?』
  『そんなことねーよ。ちゃんと覚えてるって。あの時一緒に雨宿りしたから
  今の俺たちがいるんだよ。それに』
  『それに?』
  『今の俺の心にはもうお前が宿ってるからな』
  『もう!かー君ったら!私、かー君のその意味不明なとこ大好き!』
  『俺もだよ!』
  んふふふふふー。あっ、ちなみに『かー君』は俺の中学時代のあだ名です。
  あぁー!!妄想止まんねぇーー!!
  と、俺の脳内は妄想で暴走してるが現実的にそんな可能性は
  これっぽちもないことも同時に冷静に判断できる。なぜなら男である以前に
  大人ですから」

 再び体の雫を払う海斗
 海斗のほうを見ている恵美

恵美「あの」

驚く海斗

恵美「よかったらこれ使いますか?」

 タオルを差し出す恵美

海斗「え?俺に言ってるんですか?」
恵美「え?」

 小さくうなずく恵美

海斗「脳内:なんだこれは!?今までの人生で一度も経験したことのない状況だ!
  あまりの驚きに『俺に言ってるんですか?』などとわけのわからないことを
  言ってしまった!どうやらタオルを貸してくれるみたいだ。正直使いたい。
  思ったよりも濡れてるし。というよりもこの人ともっとお話がしたい!
  正直タイプだし」
海斗「すみません、じゃあ―。はっ!!」
海斗「脳内:待ったぁ!!易々とタオルを受け取っていいのか?いや一度は断る
   のが大人としてのマナーだ。もし、断ってもまだ勧めてくるのであれば
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