夢のアルカディア
『夢のアルカディア』


脚本・小川英之



【登場人物】
ヒロシ
ナギサ
テル
タケル
エリカ
シズカ
アキラ







       舞台、薄暗い。
       夜鳴き虫の声が聞こえる。
       そこへ、シズカが走ってくる。
       それを待ち伏せていたアキラ、現れる。

アキラ  逃げたって無駄だぜ。

       と、アキラの刀がシズカを仕留めるかに見えたが、シズカ、辛うじてそれを避ける。

シズカ  アンタもしつこいね。
アキラ  当たり前だ。国家反逆罪を犯した犯人を、帝国親衛隊のこのアキラ様が逃がしてくれるとでも思ったのか?
シズカ  女のほうは撒いたと思ってたのに、何てことだろうね。
アキラ  撒いたんじゃない。別のところへ行っただけだ。
シズカ  あら、そうなの…。

       シズカとアキラ、再び刀の応酬。

アキラ  どこまで逃げたって一緒だ。何れ捕まるんだからな。
シズカ  さあ、どうかしらね。どこまでも、いつまでも逃げ通してみせるわ。
アキラ  そんなことはさせない。帝国を甘く見るなよ!
シズカ  帝国?ふん、帝国なんか、何れ無くなるんだから。

       刀を交わす、二人。

アキラ  そうやって帝国の民衆を惑わすのはやめるんだ。
シズカ  民衆を惑わす?違うわ!帝国でしょ、民衆を惑わして今まで真実を隠してきたのは。三百年もの長い間、戦争を繰り返して民衆に長い辛苦を耐えさせたのは帝国
     政府じゃない。
アキラ  お前等に何が分る。帝国には…、この星にはこの星の秩序があるんだ。別の星から来た人間が、帝国の民衆に変な幻想や願望を持たせるのは、国と民衆の統治に
     とって邪魔でしかないんだ。この星はこの星の人間の物だ。お前等の思い通りにさせて堪るか。
シズカ  国は民衆のための物でしょ、だったら…。
アキラ  お前等に何を言っても無駄だってことだな。
シズカ  ……。

       アキラの打ち下す刀を払いのけるシズカ。

アキラ  すでにお前は包囲されている。今ならまだ間に合う。大人しく、縛につけ。
シズカ  嫌なこった…。
アキラ  じゃないと、お前に唆された民衆が処刑台に送られるんだぞ!
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