生類憐みの令

(しょうるいあわれみのれい)
初演日:2012/8 作者:長谷川芳輝
 サイドストーリー「生類憐みの令」

 カエ…カ トヨ…ト 玉川…玉 徳川綱吉…綱 柳沢吉保…吉 逆子の神…神

 舞台中央に鎮座している逆子の神。キョンシーのように『しばしのお付き合いお願いします』と書かれた紙を付けている。
 それに気づかずに、徳川綱吉と柳沢吉保が話している。カエは端で面を下げている。

 吉 綱吉さま。今年こそは子宝に恵まれて良き年になります。まずは祝いましょう。
 綱 子宝って、わし二日前に63になったんだよ。もう無理だよ。
 吉 何を仰いますか。今まで何をしてきたと言うのです?
 綱 処刑。
 吉 犬のため、動物のために尽くしたのです。今年こそは。
 綱 生類憐みの令から24年間流罪にしたり、さらし首にしたり犬のために尽くしてきたのに、子供なんて生まれやしない。
 吉 …隆光の奴はなんと?
 綱 真言宗の僧、隆光はわしが子をもうけないのは前世の罪が邪魔をしているから、と言っておった。
 吉 何をしておる、そこの娘。隆光役はおぬしであろうに。
 カ え?私は短い仕事で高額なお給金がもらえるとあって来ただけですが。
 吉 それをアルバイトと言うのではないか。
 カ アルバイト?それじゃ時代が。鎖国…。
 綱 何のためにこの場を借りていると思うておるのじゃ。
 カ それは何のためですか。
 吉 うるせえ!口出しするな。
 カ このクソ豚め。側用人だからって調子乗りおってからに。(他には聞こえない)
 綱 わざわざお主のような娘を雇っているのは、こうやってフザけたいからじゃ!
 吉 こんな姿は見せられないんだよ。
 カ ああ、むかつく。綱吉目当てであったのに、吉保がちらついてうざったらしい。(他には聞こえない)
 綱 さあ、では配役を決めようぞ。わしはわしのまま。娘は隆光。それでは行くぞ。
 吉 私は、何を?
 綱 外野。
 吉 …。
 カ よっしゃあ!何だか知らないけどもスッキリするぜ。
 綱 何だ?不服か。
 吉 いいえ。精一杯やらせていただきます。
 綱 それじゃあ打ち合わせじゃ。

 綱吉とカエは打ち合わせ。吉保は残される。神が紙を捨てて動き出す。
 打ち合わせの最中にカエは短剣を懐から取り出し振りかぶる。
 その短剣を神が取り、吉保に軽く刺す。
 吉保の悲鳴。驚くカエ。短剣をうまく使って東大寺法華堂執金剛神像のように固まる。

 綱 吉保。わしはそういう演技が一番嫌いなんだ。
 吉 これ、本気なんです。
 カ 私が殺したいのは綱吉なのに。しかし何だかスッキリとしている。うん、悪くない。
 綱 まあよい。それでは始めるぞ。
 カ 綱吉さま。あなたが子をもうけないのは前世の罪が邪魔をしているのです。
 綱 前世の罪などどうしろと言うのだ。
 カ 確か綱吉さまは戌年ですよね。
 綱 そうじゃ。
 カ そうだな。じゃあ。
 吉 じゃあって何だ!怪しいぞ。
 カ 犬を厚くもてなせば、必ずやいいことが起こるでしょう。逆に犬に辛く当たれば、あなたは死にます。
 吉 だまされるな綱吉。それから24年間無駄な日々を過ごすことになるぞ。
 綱 それでは犬を見ては舌なめずり。近寄ってはよーしよしよし。「耳の裏をかかれるのが気持ちいいんですよねぇ」とか言いつつ犬を厚くもてなせばよいのか。
 吉 そんなわけないだろう。気持ちが悪いぞ。
 カ その通り。
 吉 綱吉、馬鹿。
 綱 うるせえな貴様は。そんな風に思っておったのか。
 吉 世間一般の意見を述べただけであって私はそんな風には微塵も思っておりません。
 綱 途中でわしを呼び捨てにして馬鹿と言いおったな。

 そんなこんなの間にカエは足元から饅頭を取り出す。
 
 カ いいではありませんか、お二人とも。遊びではございませぬか。ここに美味しいお饅頭がございます。これを食べて仲直りといきましょう。
 綱 光圀のようなことを言うのだな。
 
 綱吉と吉保は饅頭を食べようとするが、神がまたもや動き出す。
 神はバク転するかのような態勢をとる。準備もする。
 カエは綱吉たちを気にかけながらもチラチラと神も気にする。
 いよいよバク転するかと思うところで神は阿波踊り。

 カ しないんかーい!
 綱 え、何?

 綱吉と吉保が神の方を向いたら、神は饅頭に向かい、パクリと。

 カ な、何をやっているのよ。それは毒入り

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