ビー玉雨と眠たげな夏
ビー玉雨と眠たげな夏

▼キャスト(□は男性、◯は女性)
◯櫻子
◯はる
□一郎
□千博

 一場

   −舞台は、福島市街地と渡利地域を結ぶ松齢橋から少し下った阿武隈川の河川敷。
    丁寧に置かれたござの上に、櫻子、はる、一郎の三人が寝かされている。
    しばらくして一郎が目を覚ます。隣に横たわる女性二人に驚き、すぐにはける。

    一郎、千博を引っ張ってくる。物陰から女性たちを伺う二人。

一郎  千博さん。千博さん!
千博  そうなんども呼ばなくてもわかってます
一郎  いいや、わかってないね!誰!?この人達!
千博  ですから、慎二さんの後に…
一郎  名前
千博  あ、一郎さん!
一郎  そう、もう慎二じゃないからね
千博  さすがもうなりきってる! …一郎さんの後に… というか一緒に身を投げられた人たちで
一郎  一緒にって… 僕は何も知らないよ!!
千博  ええ、ですが、一郎さんが飛び込んだ後、すぐに…その…おそらく後追いで身投げを
一郎  後追い!?
千博  ええ。まるで心中のように
一郎  え… えー… なんだよ、それ…
千博  まぁ、とにかく!一郎さんは当初の手はず通り、「何も知らぬ、存ぜぬ」でいいですから!
    はい、一郎さんの記憶は?
一郎  阿武隈川の底に置いてきてしまったようです(呆けながら)
千博  うーん。記憶を失ったにしては理性が残りすぎですね
一郎  どうすりゃいいのさ!
千博  もっとこう馬鹿っぽく!
一郎  阿武隈川の底に置いてきてしまったようです(さらに呆けながら)
千博  もう一息!
一郎  阿武隈川の底に置いてきてしまったようです〜 あひょー(さらにさらに呆けながら)
千博  素晴らしい!完璧です。あとは万事僕がうまくやります。
    一郎さんは良い具合のタイミングで目を覚まして、そんで、
    あとは記憶を失ったふりをして、僕にうまく合わせてください。
    さ、ほら寝ててくださいね!
一郎  街の人呼んでくるの?
千博  はい!
一郎  待って待って待って
千博  はい?
一郎  ややこしくなるでしょ!この人達誰って?
千博  ああ! えっとじゃあ…
一郎  まずは、この人達が何者か探ってからじゃないと…
千博  そうですね…
一郎  とにかくバレるわけにはいけないんだ。ね!先生のためにも(小声で)
千博  はい!先生のためにも!
一郎  僕はこういう時どんな感じだった?
千博  え!? 何言ってるんですか!
一郎  馬鹿! 先生がこういう時はどういう感じだったかって!
千博  ああ、そっか… えっと… あれですよ! こういう時は… こう、どっしりと構えて!
一郎  (どっしり構える)
千博  なんかこう! おっきいかんじで!
一郎  (おっきい感じで)とにかく、落ち着いて
千博  はい!
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