雨色クリスマス

(あめいろくりすます)
初演日:0/0 作者:早川ふう
雨色クリスマス/早川ふう/45分/【2:1】

【登場人物紹介】


斉藤 美和 (さいとう みわ)
31歳女性。会社員。内向的な性格だが社交的になろうと努力はするタイプ。
千秋と幼馴染。学生時代、恭梧とも親交があった。少し子供っぽいところがある。

千秋 拡 (ちあき ひろむ)
31歳男性。バーテンダー。成人と同時にカミングアウトした俗に言うオネエ。
女装はしていないが、女言葉で話す。美和と幼馴染。恭梧とは学生時代から親友。

井上 恭梧 (いのうえ きょうご)
31歳男性。会社員。昔から爽やかな印象が変わらない。少し頼りないが、真面目で優しい。
千秋とは学生時代から親友で美和とも親交があった。


【配役表】


♀ 美和・・・
♂ 千秋・・・
♂ 恭梧・・・


少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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(クリスマス。ビルの地下にある、小さなバー。
 店内に客はひとり。恭梧が座ってウィスキーを飲んでいる。
 外の様子を見に行っていたバーテンダーの千秋が戻ってくる。)


千秋   「恭梧〜、本格的に降ってきちゃったわよ〜。
      この分じゃ電車も止まっちゃうかもしれないわ」

恭梧   「まぁ、帰れなくても問題はないさ。
      けど雨かぁ、せめて雪なら雰囲気もあるのにな」

千秋   「あら、アタシと二人で素敵なクリスマスを過ごす?」

恭梧   「雪が降ったとしても、お前とじゃムリ」

千秋   「そうよねぇ〜」

恭梧   「来るときに街頭販売の女の子がいてさ、
      サンタの衣装が寒そうだったんだよなぁ……濡れてないといいけど」

千秋   「書き入れ時だっていうのに、ケーキ屋さんがかわいそうよね。
      せっかく若い女の子にそんな衣装まで着せてるってのに、
      ケーキは売れない上に時給だけ持ってかれるんじゃ」

恭梧   「相変わらず女に厳しいな」

千秋   「それで?
      なぁに、もしかしてそのミス・サンタに一目惚れでもしたの?」

恭梧   「お前はいつもそういう方向に持っていくんだから……」

千秋   「恭梧がまた恋ができるといいなって心配してるだけよ」

恭梧   「そいつはどーも。
      だが、残念ながらただの世間話の延長だ」

千秋   「あらそう」

恭梧   「千秋こそ、最近どうなんだ?恋人とか」

千秋   「ひ・み・つ!」

恭梧   「何だよそれ。別に他に客もいないんだから話してくれたっていいだろ」

千秋   「そうねぇ……、恋はいつでもしてるわよ」

恭梧   「へぇ。千秋の好みってどんなタイプ?」

千秋   「年はまぁどうでもいいけど、
      手取り足取りアタシが教えてあげられるようなコがいいわね〜」

恭梧   「何も知らない無垢なコドモに強引に迫ったりするなよ?」

千秋   「そんなことしないわよ。
      可愛い子は見てるだけで充分だから。
      そうそう、駅のあっち側でチキンの街頭販売してた男の子、
      すごーく可愛かったのよ〜」

恭梧   「なんだ、街頭販売のサンタに一目惚れって、自分のことだったんじゃないか」

千秋   「あらやだバレちゃったぁ。
      もうねぇ、”チキンじゃなくて、あなたが欲しい!”
      ……って言いそうになっちゃった」

恭梧   「思いとどまったのはエライと思うぞ」

千秋   「そのかわりに、チキン1パック買っちゃって、
      胸焼けしながら食べたけどね」

恭梧   「ははは……!」


(そのとき、ドアが開き、女性客が入ってくる)


千秋   「いらっしゃいませ」

美和   「すっかり濡れちゃったあ。
      ちーちゃーん、雨宿りさせて〜!」

千秋   「はいはい。ほら、このタオル使いなさい。
      あ、そのコートかけておくから脱いじゃってね」

美和   「あ、お客さんいたんだ、ごめん」

千秋   「いいから、謝る前にちゃんと拭きなさい、風邪ひくわよ」

恭梧   「ちーちゃん、ねぇ……。
      なんだお前、女と付き合ってたのか?」

千秋   「え?
      冗談はよしてよ。腐れ縁なだけなんだから」

美和   「……あれ、もしかして、井上くん?」

恭梧   「あ、はい、井上だけど……」

美和   「わあっ、変わってないなぁ!
      10年以上経ってるけど、ほんっと変わってない!」

恭梧   「えっ…?」

千秋   「やぁね、これだから男って!
      覚えてないの?このコも同じクラスだったじゃないの。
      赤い眼鏡かけてショートカットだった、斉藤美和よ、アタシの幼馴染の!」

恭梧   「え、斉藤!?」

美和   「うん、斉藤です、久しぶり井上くん!」

恭梧   「斉藤かぁ、綺麗になったんだな!言われるまでわからなかった!」

美和   「お世辞なんかいらないよ」

恭梧   「いやいや、ホントに!
      あ、斉藤も千秋の店の常連なのか?」

美和   「あー、うーん……」

千秋   「このコはここ半年くらいよ。
      大体月イチくらいでしか来ないし、あんたと時間帯もずれてたからね」

恭梧   「へぇ。あ、他にも同級生って来てたりする?」

千秋   「まさか。田舎から何人こっちに出てきてるか知らないけど、
      アタシがここでお店やってるって、家族にだって言ってないんだから」

美和   「私も知らなかったの。
      偶然、知り合いに連れてこられて……。
      そしたらちーちゃんのお店だったからびっくりしちゃって。
      同じ東京にいるなら連絡くらいくれればいいのに、薄情だよねぇ」

恭梧   「そりゃ薄情だ」

千秋   「はいはいゴメンなさいね、アタシが悪ぅございましたっ」

恭梧   「俺は職場がこの近くなんだ。
      だから開店したときにどんな店かなって覗いたんだよね。
      そしたらこいつの店だっていうし、それから結構通ってるんだ」

美和   「そうなんだ……」

恭梧   「懐かしいなぁ。
      千秋の店に通ってずいぶん経つけど、まさか斉藤とも会えるなんて嬉しいよ。
      あ、そういえば学生時代、いつも本読んでたよな?」

美和   「よく覚えてるね……」

千秋   「文学少女って言えば聞こえはいいけど、このコの本好きは度を越してるから問題よぉ?」

美和   「いいじゃん別に!」

恭梧   「どんな本が好きなんだ?」

美和   「えっ……うーん、色々だよ。
      推理小説とかも好きだし、ファンタジーも、恋愛も……。
      結構何でも読むけど、物語が多いかな、うん」

恭梧   「ってことは家にいっぱい本があったりする?」

美和   「うん、まぁ」

恭梧   「どれくらい?」

美和   「……」

千秋   「ふふふ」

恭梧   「どうかした?」

美和   「……二千から先は、数えてないの」

恭梧   「二千!??!?!」

千秋   「本棚にしまえる量を超えちゃったら普通処分するでしょう?
      でもこのコ、新しい本棚を置くために広い部屋に引っ越したのよ!」

美和   「だって本って捨てられないよ。
      また読みたくなるし、一度読んだらオシマイってできないもん」


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