消えたシンデレラ
「消えたシンデレラ」

   キャスト     
              竹田ひかる
              使者(セバスチャン)
              お妃

      部屋の中。下手手前に使者が立っている。下手奥より竹田が風呂上がりらしく
      タオルを首にかけ、手に缶ビールを持って入ってくる。

竹田 ふー、あったまった。風呂上がりはビールに限るっと。

      缶ビールをあけ、飲もうとして使者に気付く。

竹田 わーっ!やだ!誰?どっから?いつ?警察呼ぶよ。
使者 使者でございます。そこのドアからでございます。七分五十二秒前からでござい
   ます。警察は必要ございません。他に何かご質問は?
竹田 なにもの?
使者 ですから、使者でございます。
竹田 なにそれ?
使者 王子さまからのお使いの者でございます。
竹田 は?
使者 王子さまより仰せつかりました。
竹田 何を?
使者 ガラスの靴をお忘れになったシンデレラ姫をお探しせよと。
竹田 シンデレラ?何言ってんの?ここ、私のウチだよ。
使者 はい、ですから、あなたをお迎えに参りました。
竹田 私?なにかの間違いでしょ?
使者 な、なんと、このわたくしが間違っておると!
竹田 だ、だって、私、シンデレラなんかじゃないもん。
使者 ちゃんと、見ておりました。
竹田 見た?
使者 ガラスの靴がピッタリでございました。
竹田 ガラスの靴?
使者 はい。
竹田 もしかして、あの靴屋にあった宣伝用のガラスの靴?
使者 はい。わたくしが置いておきました。
竹田 あれは、友達が履いてみろっていうから、つい。
使者 確かにピッタリでございました。
竹田 だって、サイズが23センチの人なら誰でもピッタリでしょう。
使者 ピッタリでございました。
竹田 ピッタリなら誰でもいいの?
使者 わたくしはガラスの靴がピッタリあう方をお探しするよう仰せつかったのです。
竹田 でも、私はシンデレラなんかじゃないって。そう、私は竹田ひかるっていうの。
使者 わたくしは、セバスチャンでございます。
竹田 あ、ヨロシク。っじゃなくて!見るからに違うでしょ。
使者 女性はお化粧をなさってドレスをまとえば別人のようになるものです。どうせ、ウチ
   の王子さまにはわかりませんって。
竹田 ドレスなんか、持ってないよ。
使者 ちゃんとご用意してございます。このわたくしにぬかりはございません。
竹田 やだ、ドレスなんか。
使者 ワガママな方だ。
竹田 ヒラヒラしたの、嫌いなの。もう、出てってよ。
使者 あなたをお連れしなければ、わたくしは縛り首です。
竹田 私は関係ないよ。
使者 な、なんと。わたくしが縛り首になってもかまわないと。
竹田 や、それは…
使者 ああ、あの太いロープがわたくしの首にかかり、人々が見つめる中、ロープはわた
   くしの首を徐々に締め付け…
竹田 あーっ。もう、やめて。
1/6

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム