伊右衛門ラブ!!



伊右衛門  眠らない夜の多い現代。
      草木も眠る丑三つ時……とはいかないが、
      夜も更ければ、人通りの少ない薄暗い道のひとつやふたつはあるわけで……。
      それ即ち、某(それがし)のような現世に縛られた退屈な身でも、
      楽しみを得られるというもの……。
      命を獲るわけではござらぬ。
      ただすこぅし、脅かしてやるだけでござるよ……。



美由紀   「あー、今日も残業疲れたなぁ……。
       この時期は仕方ないけどしんどいなぁ……」

       (携帯の通知音)

美由紀   「ん? 携帯……あー、恵理が更新してるってことは、男が変わったな。
       お気楽で羨ましいですねー……っと……」

       (何かを蹴ってしまい重い音がする)

美由紀   「あれ、何か蹴っちゃったな。ゴミにしては大きい気が……」

伊右衛門  「そこな娘」

美由紀   「え、何? 今の時代劇口調の台詞は??」

伊右衛門  「某の……(ものすごーく怖がらせようという気満々で)
       首を返せええええええええええええええええええ!!!!!」

美由紀   「首? ……あっそっか、首蹴っ飛ばしちゃったんだ」

伊右衛門  「えっ?」

美由紀   「痛くなかった?」

伊右衛門  「いや、その、痛くはござらぬが……」

美由紀   「ごめんね、ちょっと汚れちゃったかな」 

伊右衛門  「いやそれはその、某元々綺麗な出で立ちとは言えぬ故……」

美由紀   「(首を拾い上げて)はい、首どうぞ。
       簡単に落としちゃだめだよ、大事なものなんだからさ」

伊右衛門  「あ、これは、かたじけない。……ではなくて!!」

美由紀   「え?」

伊右衛門  「そなた何故斯様に平然としておるのだ。
       怖がらないのでござるか?」

美由紀   「怖い? なんで?」

伊右衛門  「そっ、某はっ、首を落として……」

美由紀   「忘れ物って、誰でもしちゃうものじゃない。
       まぁさすがに首を忘れるってなかなかないけどさ。
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