探偵ものがたり
        探偵ものがたり

 登場人物
    所長
    ようこ
    マスター


 
 喫茶店。特にないもないが、怪しい感じがする。
 所長は、サングラスをして、席に座って新聞を読んでいる。
 ようこが入ってくる。

マスター いらっしゃいませ。
所長  (手招きをする)
ようこ あれ、早いじゃない・・・ですか。
所長  しっ。静かに・・・
ようこ ・・・
所長  誰か、怪しい人を見かけなかったか?
ようこ 怪しいって・・・(目線は所長に・・・)
所長  私は、怪しくない。
ようこ どう見ても怪しい人にしか見えませんけど。
所長  昔っから、こういうスタイルに決まっているんだ。
ようこ そうですか。
所長  そういうものだよ、君。
マスター (水を持ってくる)ご注文は・・・
所長  コーヒー。(指でピースサイン)
ようこ あ、二つで・・・
マスター かしこまりました。(カウンターへ)


ようこ 何で、今日は、ここなんですか?
所長  良いところに気付いた。わからないか?
ようこ わかりません。
所長  では、教えてあげよう。
    探偵というものは、刑事と同じ、足で稼ぐものだ。
ようこ はぁ。
所長  だからだよ。
ようこ は?
所長  事務所にばかりいても、仕事は転がっては来ないのだ。
ようこ そうかもしれませんね。
所長  だから、たまにこうやって外に出て、調査をするわけだ。
ようこ 調査?
所長  そうだ。
ようこ どんな調査なんです?
所長  そんなこともわからないのか?
ようこ ・・・すいません。
所長  あれだ・・・、その・・・、いろいろだ。
ようこ いろいろ・・・ですか。
所長  そう、いろいろだ。人は、顔を見れば、大体何を考えているか、わかるものだ。
ようこ そうなんですか?
所長  で、いろんな人を見ている中で、「あ、今、この人、何か困っているな。」と見えてくる。
    そしたら、さりげなく近づいて、テーブルの上にこの名刺を置いてくるのだ。
ようこ (名刺を見る)エアコン掃除、廃品回収、なんでもします。
    「あなたの町のなんでも屋さん」ってなってますけど。
所長  それで良いのだよ。あからさまに「探偵」と書いて、誰が話に来てくれる。
ようこ なるほど。
所長  人の悩みというものは、複雑なものなんだよ。
ようこ わかるような気がします。
所長  まずは、顔ぶれを・・・(店内を見回す)
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