じゃじゃ馬ラプンツェルの冒険
語り手    「僭越ながらわたくし、この物語の語り手を務めさせていただきます。
        皆様よろしくお願い申し上げます。
        えー、昔々ある所に、子どもに恵まれない夫婦がおりました。
        夫婦は毎日、神様に子どもをさずけてくださいと祈り続けていたところ、
        やっと奥さんに赤ちゃんがやどり、二人はそれはそれは喜んでおりました」

ラプンツェル 「ほうほう。そんで?」

語り手    「……ゴホン。えー、夫婦の家の隣には広大なラプンツェルの畑があり、」

ラプンツェル 「ねぇねぇ、ラプンツェルって私の名前なんだけど。
        てか、私が埋まってるの? 私がいっぱい? クローン?
        ああ! それともバラバラ殺人?」

語り手    「ちょちょちょちょ! 一気に物騒な話にしないでください! これ一応童話ですからね!?」

ラプンツェル 「だってさぁ、ラプンツェルの畑なんて言ったってさぁ〜
        野菜なの? 果物なの? 穀物なの? なんなの? ってなるじゃん。
        日本人には馴染みなさすぎだもん」

語り手    「確かに!
        あー、ラプンツェルと申しますのは、和名をノヂシャと申す野菜でございまして、
        レタスと訳されることが多いので混同しがちなのですが、
        厳密に言うとレタスではなく……」

ラプンツェル 「ねぇ」

語り手    「はい」

ラプンツェル 「説明長い」

語り手    「……」

ラプンツェル 「大体これって童話なんでしょ? 元は子どもが読む話よね?
        なのになんでそんなにわかりにくいわけ?」

語り手    「そう申されましても……」

ラプンツェル 「まだ主人公の私はおろか、登場人物がしゃべってもいないじゃない」

王子     「あ、僕のことなら気にしなくていいよラプンツェル。
        ちゃんと待ってるから大丈夫さ。
        たとえ君の名が、きゅうりでも大根でもおたんこ茄子でもドテカボチャでも
        僕は君を愛してるから!」

ラプンツェル 「おい最後二つ悪口だろ王子てめぇ」

王子     「ノン! 僕は君がどんな姿でも愛してるって伝えたいんだよ」

ラプンツェル 「……なんなんだろーなこの蹴り飛ばしたくなる衝動は」

語り手    「あの、進めてよろしいでしょうか」

王子     「ああ、失敬。ラプンツェルを愛する気持ちが少し暴走してしまったようだ」

ラプンツェル 「早くしてね、出番まってんだから」

語り手    「は、はい。
        えー、夫婦の家の裏には広大なラプンツェルの畑がありました。
        それを眺めていた奥さんは、どうしても食べたくて仕方がなくなり、
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