「殺人事件の起きるまで。」
      「殺人事件の起きるまで。」  作:白井 秋

登場人物        (役者の性別−設定年齢)役柄

青木/黒いコートの女  (男−20代後半)桐野のアシスタント/バーガー店の客・・・二役
姫山          (男っぽい女−33歳くらい)桐野の知人
袋田/ヒデ       (トボケた女・茶髪か金髪−22歳)姫山の友人?/暴走族・・・二役
桐野/老女       (女−44歳くらい)ミステリー作家/バーガー店の客・・・二役

第一場
     ミステリー作家桐野ミユキの別荘の部屋の中。下手側にソファ・洋服掛・人形など。
     上手は空いたスペース。上手奥が玄関。下手奥はキッチン、下手手前が各部屋等。
     金曜日の夜。青木が懐中電灯とダンボール箱を持ち、暗い中を懐中電灯を照らしな
     がら下手から上手へ歩いて行く。                 《明 転》
     青木、上手より登場。桐野がソファに座ってクロスワードパズルをしている。

青木 桐野先生、この箱ですか?
桐野 ねえ、食べられるムシって何?
青木 え?イナゴとかですか?
桐野 うえ、気持ち悪い。
青木 あと、蜂の子とか。
桐野 そんなもん、食べるの?
青木 ウチの田舎では普通ですけど?
桐野 チで始まる6文字よ。
青木 チ、チ・・・あ、茶碗蒸し。
桐野 おお、なるほど。
青木 ここに置いていいですか?(箱を桐野のそばに置く)
桐野 ああ、ありがとう、物置、暗かったでしょう。
青木 大丈夫です。これ、集めたんですか?
桐野 ええ、その箱はお祭りとかおもちゃ関係ね。
青木 うわ、このお面、懐かしいなぁ。これは何ですか?
桐野 ああ、水の入ったボンボン。しぼんじゃったの。
青木 これは?
桐野 シャボン玉。
青木 わー、スーパーボールだ。
桐野 人にはガラクタでも、私には大切な資料なのよ。
青木 ガラクタなんて、そんな。こういうの僕も好きですよ。本もスゴクたくさんありますね。
桐野 だから、自宅には置ききれないのよ。
青木 で、仕事の時はこの別荘に来るんですね。
桐野 ええ、主人と娘も、もう慣れっこ。
青木 今度の作品はお祭りが舞台なんですか?
桐野 まだ、わかんない。ただ、お祭りって殺人事件起こりそうでしょ。
青木 お祭りかぁ、しばらく行ってないなぁ。
桐野 麓の村の夏祭り、結構盛大なのよ。毎年、有名人とか来るし。
青木 誰が来るんですか?
桐野 日吉ミミとか。
青木 誰ですか、ソレ?
桐野 ゴージャス松野とか。
青木 桐野先生の方が有名じゃないですか。
桐野 ミステリー作家の顔なんて、みんな知らないわよ。
青木 先生は写真載せてないですもんね。どうしてなんですか?
桐野 まあいいじゃない。青木君、お客様の部屋、準備できてる?
青木 ハイ。お二人ひと部屋でいいんですよね。
桐野 ええ、姫山さんって子と、そのお友達。
青木 わかりました。
桐野 仕事終わってから出るって言ってたから、もうそろそろだと思うけど。
青木 スキーをなさるんですよね。でも天気予報で明日雨って言ってましたけど。
桐野 そう、そしたらじっくり話ができるわね。私は部屋で連載の原稿書いてるから、
   見えたら、お通ししといて。
青木 ハイッ。わかりました。
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