バタフライ
夏の日。昼下がり。狭い部屋。
「カズオ」がうちわで顔を扇ぎながら、仰向けで寝ている。
窓には風鈴。
床には扇風機、携帯電話、アイスの空容器、雑誌なんかがごちゃごちゃ置かれている。


母親の声
(部屋の外から)「カズオー。……カズオ! カズオ!」

カズオ
「うるっせぇなクソババア! なんだよ!」

母親の声
「アンタ、部活行かないの?」

カズオ
「行かねぇよ! 腹痛ぇんだよ!」

母親の声
「アンタ、部活行かないんだったら、ちょっと私、アレ! 買い物行ってくるから! だからアンタ、アレ! アレ! よろしく!」

カズオ
「わっかんねぇよクソババア! なんだよ!?」

母親の声
「あの、ポンタの餌! あと、雨降るかもしんないから今日! 洗濯もん!」

カズオ
「あぁ!?」

母親の声
「お願いね!」

カズオ
「あぁー!?」

母親の声
(犬に)「じゃあ行ってくるからねー、ポンちゃんねー、いい子にしててねー」


犬の甘えるような声。


母親の声
(カズオに)「じゃあ行ってくるから! よろしくねー!」

カズオ
「知らねぇよ! 二度と帰ってくんなクソババア!」


玄関の扉が閉まる音、続いて鍵をかける音。
カズオ、うつ伏せになり、


カズオ
(うつろに)「あっちぃんだよ……」


徐々に眠くなってくる。
風鈴がちりんと鳴る。
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