7人の優しくない業界人

(ななにんのやさしくないぎょうかいじん)
初演日:0/0 作者:mugejin
7人の優しくない業界人
<登場人物>
 海道 武雄(かいどう たけお)・・・プロデューサー。
 黒崎 礼美(くろさき あやみ)・・・監督。
 上杉 真 (うえすぎ まこと)・・・俳優。
 江田島 令子・・(えだじま れいこ)女優。
 松永 慎介・・・(まつなが しんすけ)マネージャー。
 奥寺 美奈・・・(おくでら みな)脚本家。
 森 茂子・・・・(もり しげこ)大女優。

海道、黒崎登場

海道 いやぁ、やっと最終選考まで来たね。結構時間かかったね。
黒崎 えぇ。
海道 あのおばちゃんもさぁ、もう少し融通がききゃあ、こんな面倒なことしなくてすんだのにね。
黒崎 そうですね。
海道 でもまぁいい宣伝にはなったか。
黒崎 ・・そうですね。
海道 まさか10万人も集まるとはな。オーディション受験料だけでひともうけできたよ。
黒崎 ・・・。
海道 やっぱキャストの顔ぶれが聞いてるんだよな。ここまで集めるのにどれだけ苦労したか。ねぇクロちゃ
ん?
黒崎 えぇ。
海道 人気急上昇中の若手俳優の上杉真に、大人の色気を漂わせ始めた元アイドル江田島令子。そして芸能界の
ドン森茂子を特別出演に迎え、主役のヒロインにその孫娘、森美鈴が銀幕デビュー!!
黒崎 しーっ!!しーっ!!今それ言ったらまずいですよ!
海道 あ、そうだったそうだった。(辺りを見回し)誰も聞いてないよな。
黒崎 ・・やっぱり気が引けますよ。初めから結果が決まっているオーディションを開くなんて。
海道 仕方ないって。俺だってこんなまわりくどいことせずに、森美鈴を主役にしたかったよ。でも森茂子が
主役はオーディションをした上で公平に決めてくれって言うんだから。とにかくあの人、堅物だからなぁ。
黒崎 立派な人格者って良く聞きますよね。
海道 そう。
黒崎 でも、こんなにあっさり決まっちゃったら、森さん疑いませんかね?
海道 大丈夫だよ。クロちゃんも見たでしょ森美鈴。
黒崎 えぇ。
海道 あれほどの子はそうざらにはいないよ。美人だしプロポーション抜群だし、それに加えて森茂子の孫だよ。
   全員一致になったって不思議じゃないって。
黒崎 まぁ私はいいんですけど、他の審査員たちは納得したんですか?
海道 大丈夫だよ。審査員全員に森美鈴を推薦するよう話つけといたから。
黒崎 で、みんな承知したんですか?
海道 承知したよ。あの子見れば誰も文句言えないよ。
黒崎 本当ですか?
海道 本当だって。
黒崎 ・・江田島令子さんは?
海道 ・・あー彼女ね。うん、承知したよ。
黒崎 本当ですか?
海道 本当だって、クロちゃん疑りぶかいなぁ。
黒崎 元々彼女がこの映画のヒロインだったのにですか?
海道 ・・それ言わないでよ。
黒崎 ヒロイン役を降ろされた上に、その役を大物俳優の孫とはいえ、まだ無名の新人に与えなきゃいけ
ないんですよ。
海道 俺だってさ。別に悪気があってこういうことしたわけじゃないんだから。
黒崎 それはわかってますよ。
海道 森さんに女優目指してる孫がいるなんて知らなかったんだよ。考えてもごらんよ祖父と孫の夢の共演だよ。
こっちの方がお客さん来ちゃうんだよなぁ。
黒崎 わかりますけど、江田島さんの性格を考えると素直に従うとは思えないんですよ。
海道 大丈夫だって。脇に回ったとはいえ彼女の役だって重要なんだよ。その辺もちゃんと説明しといたから。
黒崎 大丈夫かなぁ。
海道 心配性だなぁクロちゃんも。相手はあの森重男とその孫娘だよ。いくら彼女だって彼らに逆らうような無
茶はしないよ。
黒崎 でもあの江田島さんのマネージャーさんはどうなんですか?主役交代を了承する代わりに、この選考会に
審査員として参加させろなんて。結果は決まってるんだから審査員なんかになったってしょうがないじゃないですか。
海道 いや、あれはさぁ。他の候補者で誰かいい子がいたら、引き抜こうと思ってるんだって。
黒崎 なんか変なこと考えてないですかねぇ。
海道 変なことって?
黒崎 例えば・・いきなり別の子を推薦したりとか
海道 そんなことしたって彼に何のメリットもないじゃない。
黒崎 まぁ、そうですけど。
海道 くろちゃんさぁ!君、この映画の監督なんだよ!しかも黒崎礼美と言えば、デビュー作・第二作の恋愛映画を
大ヒットさせた、20代女性の恋愛カリスマなんだよ!
黒崎 だから私は恋愛カリスマなんかじゃないんですよ!付き合った人だって二人しか・・・
海道 しーっ、しーっ!それ言っちゃダメだって!
黒崎 ・・・とにかく恋愛カリスマじゃないですから。
海道 わかったわかった。ま、とにかくさ。自分に自信を持って、今日の最終選考会もさ、こうでーんと構えていてよ。
黒崎 それにもう一つ不安なことがあるんですよ。
海道 くろちゃ〜ん。
黒崎 上杉真です。
海道 彼がなんだって言うの?
黒崎 彼の素行の悪さは有名です。特に女グセ。この前森さんが共演者クビにした話聞きました?
海道 あぁ、あれね。
黒崎 聞けばその共演者、ちょっとメイクの子にちょっかい出しただけで森さんの怒りを買ったそうじゃないで
すか。上杉君なんてそんなの日常茶飯事ですよ。もしですよ。彼が森美鈴にでも手を出したりしたら、映画そのものをつぶされかねません。
海道 いや、そのことならね。心配いらないんだ。
黒崎 え?
海道 俺もそのことは気になってね。出演依頼する時にそこの所を注意しといたんだ。そしたらね・・。
黒崎 えぇ。
海道 ここだけの話なんだけどね・・。真くんね、江田島令子と付き合っているらしいんだ。
黒崎 え!?本当ですか?
海道 だから令子ちゃんと付き合っている限り、他の女にちょっかい出すようなことはしないと約束してくれた
よ。
黒崎 そうですか〜!・・・でもその割にはあの二人、オーディション中やけによそよそしくなかったですか?
海道 もうクロちゃん、わかってないなぁ。二人の仲は秘密に決まってるでしょ。よそよそしいのは演技だよ演
技。
黒崎 じゃあ上杉君については安心ですね。
海道 大丈夫。すべてうまく行くって。

   上杉登場

上杉 ちわーす。
海道 お〜まこと君、お疲れ様〜。
上杉 おつかれっす。
海道 オーディション結構時間かかっちゃったねぇ。ごめんね。
上杉 けど、結構レベル高い子いましたねぇ。僕435番の由美ちゃんが気に入ったんですけど、海道さん誰かい
い子いました?
海道 またまたぁ真くん。
上杉 冗談ですよ。美鈴ちゃんでしょ。わかってますって。
海道 頼むよ。
上杉 でもほんとに由美ちゃんのこと気に入っちゃったんですよ。チョイ役でもいいから使いません?
海道 ・・・。
上杉 ・・・あ、そうだ。食事にでも誘ってみようかな〜。
黒崎 (海道に)・・・あの、全然いつもと変わってないように見えるんですけど。
海道 ・・あの真くん?
上杉 なんですか?
海道 令子ちゃんとはうまく言ってる?
上杉 ・・別れましたよ。
海道・黒崎 えっ!!
黒崎 別れた?
海道 それどういうこと?
上杉 むりやり別れさせられたんですよ。あの松永っていう令子のマネージャーに。
海道 どうして?
上杉 看板に傷つけられちゃ困るそうです。うちが弱小プロダクションだからって、圧力かけるとか言いたい放
題言われましたよ。
海道 じゃあほんとに別れちゃったの?
上杉 ・・・まぁまたいい女見つけますよ。そういうことなんで海道さん。由美ちゃんを僕とからむチョイ役で。頼みますね。
黒崎 ・・海道さんどうするんですか?(脇に海道を連れて行き)
海道 ・・何が?
黒崎 何がじゃないですよ。まずいじゃないですか。これで元の上杉君に戻っちゃったってことでしょ?さっき
の問題はどうなるんですか?
海道 ・・どうしようか?
黒崎 お願いしますよ。
海道 い、いや大丈夫だよ。真君だって馬鹿じゃないんだから。森さんの前だったらきちんとするって。

   松永、令子登場

松永 皆さんお待たせしました。・・・おや?まだ始まってないんですか?
海道 あ、もうすぐ始まるから、まぁ座ってて。
松永 いよいよ最終選考ですね。ついに10万人の頂点が決まるわけですよ。一体誰がこの栄冠を手にするのか?
いやぁ手に汗握りますなぁ!
海道 松永ちゃぁん。それきついなぁ。
松永 は?何がですか?
海道 ・・令子ちゃんの役だっていい役でしょ?
松永 えぇ。主役程ではないですけどね。
黒崎 ・・・。
海道 もう、誰かなんか言ってやってよ。

   間

海道 ・・さて、これで森さん以外は全員そろったのかな?・・あ、脚本家の奥寺さんがまだ来てないんだな。
松永 ・・・どうでしたか、上杉君。オーディションを見ての感想は?
上杉 ・・感想って?
松永 いや、君のことだからさぁ。また誰か気に入った子でもできたかなと。そう思ったんだけどねぇ。
上杉 ・・・良くわかりましたね。
令子 !!
松永 あ、やっぱり。できたんだ。相変わらずお盛んですなぁ。まぁ手を出すなら素人のうちにお願いしますよ。
この前のようなことは二度とないようにね。
海道 ・・・クロちゃん、奥寺さん遅いね!
黒崎 ・・・。
令子 海道さん
海道 ん?
令子 彼女良さそうじゃないですか、森美鈴さん。
海道 そう?いやぁそう言ってくれると私もうれしいよ。
令子 かわいいし。若いし。素直そうだし。私よりずっと向いてますよあの役には。正直言って私、あの役やり
たくありませんでしたから。ちょうどいい代役が見つかってほっとしましたよ。ほんとにありがとうございました。
上杉 ・・・。
海道 ・・・クロちゃん、奥寺さんどうしたのかなぁ!?
黒崎 ・・・。
海道 ねぇクロちゃん!?
黒崎 ・・・もしかすると、また道に迷ってるんじゃないですか?
海道 それはないだろ。ここ、オーディション会場と同じビルだよ。
黒崎 でも今日だって、駅前にあるこのビルの場所がわからなくて電話かけてきたくらいですよ。
海道 田舎者はこれだからなぁ。・・・俺探しに行ってくるよ。
黒崎 あ、私探してきます。
海道 いや、俺が行くよ。クロちゃんはここにいて。
黒崎 いえ、私が行きますって。
海道 俺行くって。
黒崎 私が行きます!
海道 ・・じゃあ一緒に行こうか。
黒崎 ・・そうですね。

   二人仲良く退場しようとする。そこに奥寺登場

奥寺 すみません。遅くなりまして。
海道 あ、奥寺さん。よかったよかった。
黒崎 今から探しに行こうと思ってたんですよ。
奥寺 すみません、ご心配をおかけしました。ちょっと外を散歩してたら帰れなくなっちゃって。パトカーでこ
こまで送ってもらったんです。
黒崎 どこまで散歩したんですか?
奥寺 東京に来れたのがうれしくて、つい。
海道 まぁ無理ないよ。田舎で書いてた脚本がいきなり賞とっちゃって、いきなり映画に採用されちゃって、
いきなりオーディションの審査に呼ばれちゃって。いきなりづくしだもんねぇ。
奥寺 本当に東京は面白そうなところがいっぱいありますねぇ。
黒崎 東京には一度も来たことないんですか?
奥寺 えぇ一度も。
黒崎 その割にはなまりとかありませんね。
奥寺 一応標準語の勉強したんですよ。
黒崎 うわぁ勉強家なんですね。
奥寺 いえいえ。でもまだまだ勉強しなければいけないことはいっぱいあります。特にこの芸能界のことは。私
びっくりしちゃいました。オーディションというのは必ず先に合格者を選んでからするものなんですね。
黒崎 はい?

   海道、黒崎を制す

奥寺 まだ今一つ理解できないんですけど、少しずつ理解していきたいと思ってます。
海道 そうです。これからも芸能界のさまざまなルールを知ることになりますよ。
黒崎 海道さん、また一つ問題作りましたね・・。
海道 さ、席はあちらです。では皆さんそろったところで森さんをお呼びして参ります。

   海道退場しかけたところで、森登場

海道 あ、森先生!

   全員起立する。遅れる奥寺

海道 申し訳ありません。お迎えに参りませんで。
森  あんまり遅いからもう始まっちゃってるかと思ったわ。
海道 まさか。森先生がいなきゃ撮影だって始められませんよ、はっはっはっは・・。

   愛想笑いをする一同。遅れる奥寺

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