ある恋の話

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初演日:0/0 作者:ひよこ大福

ある恋の話。



登場人物。

名前や年齢は自由にどうぞ。

ぼく。彼女の恋人。
彼女。ぼくの恋人。
彼。 ぼくと同じ境遇。
先生。病院の先生。性別不問






ぼく 余命三年。それが彼女に下された宣告だった。

ぼく 病の名は、恋煩い。

ぼく この場合、それは文学的な比喩や、恋に悩み苦しむ事を指す言葉ではない。
   それの『症例』が発見されたのは、ほんの数年。
   この病を患った者は、ある感情を内に秘める事によって激しい胸の痛み、動悸の乱れ、
   呼吸不全、食欲や身体機能の低下など、さまざまな症状を併発する。
   そして、それは徐々に重度なものになり、最終的には命を落とす。

ぼく それの引き金となる感情は、恋。
   故にそれは恋の病と呼ばれていた。

ぼく 治療法はまだない。



場面転換



ぼくN コツコツと、病院の独特な消毒液の匂いが鼻に付くと感じながら、僕はその長い廊下を歩いていた。
ぼくN 視界の端には長椅子に座り談笑する老人や、点滴を腕に刺して歩いている青年、慣れない車椅子を操る子供。
   様々な患者が視界に入っては消えていき、僕はある病室に辿り着く。

扉の前に立つ。

ぼく …………(入るのをためらう)
彼女 (ぼくが入ってくるのを待っている)
ぼく (まだためらう)
彼女 ……ねえ。(しびれを切らして扉越しに声をかける)
ぼく えっ?
彼女 いつまで立ってるの? はやく入んなよ
ぼく ……

ドアを開ける。

彼女 やっほ。
ぼく よくわかったね。まだノックもしてなかったのに。
彼女 足音で分かっちゃうよ。というかわからないわけない。私がどれだけこの日を楽しみにしてたか教えてあげよっか?
ぼく そっか。……うん、そうだね。久しぶり、元気だった?
彼女 …………(少し笑った後にむっとする)
ぼく ど、どうしたの?
彼女 駄目。20点。
ぼく は?
彼女 4ヶ月ぶりに会ったんだよ?なのにテンション引くっすぎ。もっとさぁ、喜びを表現してよ。
ぼく ひ、ひさしぶり。元気だった!?
彼女 40点。声が小さい、もっと笑って。
ぼく ひっさしっぶりー!
彼女 ぷっ
ぼく あのなぁ
彼女 あはは、うん。合格。久しぶり!
彼女 っ。会いたかったよ(苦しさを隠しながら)
ぼく ……僕も、あいたかった。

彼女 少し見ないうちに背伸びた?
ぼく そっちは少し会わないうちに髪が伸びたね。今年は切らないの?春になるといつも短くしてたのに。
彼女 ばっさり切るのって結構覚悟いるんだよ?だから今年はもうちょっと伸ばしてみようかなって。
ぼく ふーん。日替わりで髪型変えれるくらい?
彼女 最近は毎日変えてるよ〜 あ、ポニーテール好きだっけ?
ぼく え?うん。好きだよ。
彼女 あらら残念。今日はなにもいじってないんだ。超ストレート
ぼく 別に、どんな髪型でも好きだよ。あ、ツインテールなんて似合う女の子が少ないけど……どう?
彼女 やらない
ぼく 残念。
彼女 でもホント、長いよね。長過ぎる。
ぼく え、髪が?
彼女 違ーう。面会日が4ヶ月に一度って言うのが!一年にたったの3回だよ?年頃のカップルをまるで遠距離恋愛よろしくって感じに引き離してさ。
ぼく それは……うん、そうだね。ホントにそうだ。
彼女 だよね〜、私はこんなに元気なのに病気が酷くなるから絶対に会っちゃ駄目、なんて。
ぼく あはは……
彼女 笑い事じゃないってば、もう春なんだよ?
   桜はめきめきと花を咲かせてるのに私はいつまでここで引きこもってればいいんですかー!って感じ
ぼく うーん……桜、か。そういえばここの桜ももう満開だったね。去年も一昨年も結構遅咲きだった気がするけど……
彼女 ……あ。ねね、一緒に抜け出してお花見でもしよっか?
ぼく だめだよ。大人しくしとかなきゃ。
彼女 ちぇ
ぼく ほら、窓からでも桜は見えるよ
彼女 ……お花見は生で見るものってお父さんが言ってたよ。
ぼく 窓開けてあげるから
彼女 屁理屈だー!

窓を開ける。桜が舞い込む。

ぼく うわ、風つよ……
彼女 あはは、花びらだらけだ。
ぼく もう……(花びらを払う)
ぼく ん、ここ……結構眺めいいね。
彼女 きれいでしょ、この部屋からだと桜並木とか、お花見の景色とかよく見えるんだ
ぼく ふーん……
彼女 あ、花びら肩についてるよ。とったげる(僕に近づこうとする)
ぼく ……!(彼女と距離をとる)
彼女 あ……
ぼく あ、ごめん……いや、いいよ。自分で払うから
彼女 ……(悲しそうな表情)
ぼく ごめん…あまり近づくと……よくないと思って。
彼女 ……それぐらい、平気だよ。
ぼく ……ごめん。
彼女 ……ううん。いいの。
ぼく ………
彼女 ……お花見。
ぼく え?
彼女 来年は、お花見いこっか。
ぼく ……うん。

沈黙。

彼女 あ〜だめだめ。暗いのやめよ。なんかしんみりするのはヤダよ。
ぼく ……うん。
彼女 ねぇ、ここ座りなよ。そんなとこ突っ立ってないで話でもしよ?
ぼく ……そう、だね。うん、どんな話がいい? 
彼女 そうだね〜 最近あった面白い事とか?
ぼく 面白い事、って言われてもな……
彼女 だって私一日中ここに缶詰で娯楽なんて全然ないんだよ?
ぼく そんなに?
彼女 うん。最近の楽しみは日替わりで髪型変えるくらい。
ぼく 楽しそうだ。
彼女 全然。一週間も続ければネタ切れだよ。だから今日が唯一のお楽しみだったの。
ぼく ん〜そうだな。あ。
彼女 なになに?

(自由に雑談。あっても無くてもいいです)

ぼく これは面白い話じゃないんだけど……じゃーん。
彼女 あ! それって……!
ぼく そう。お見舞いのプリン。プッチンじゃなくて中々買えない高級品。
彼女 わ、わ、これ私がずっと食べたいな〜って思ってたプリン!なんで?私食べたいって言ったことないのに!
ぼく 食べたいだろうなってものぐらい分かるよ。付き合い長いんだからさ。ほら。
彼女 うわ〜、ちょっとこれ感動物だよ

ぼく 結構苦労したんだぞ?なんせ夜中から店前に並んで〜
彼女 はやく食べよ食べよ!
ぼく わかったわかった。急かすなって。
彼女 ほら、早く食べさせて。あーん。
ぼく ………
彼女 ?
ぼく いや、出来れば自分で食べて欲しいんだけど。
彼女 私病人で患者さん。君はお見舞いに来てくれた彼氏さん。ならする事は決まってるよね?
ぼく そう言う事を言ってるんじゃなくてさ……また前みたいに
彼女 …………
ぼく またこの前みたいなことになったらって考えたらさ。
彼女 その節はご迷惑おかけしました。
ぼく 笑い事じゃないよ。
彼女 手繋いでキスしただけで……心臓止まっちゃうなんてね。あはは、あの時は流石にショックだったなぁ。
ぼく …………

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