月下夢幻譚
三嘉(みよし)
環(たまき)
庚(かのえ)
伊織(いおり)
紫乃(しの)


    〜幕〜

         月夜、ぼんやりと提燈の明かり
        ゆっくりと紫乃が歩いている

朧月夜の夢語り
移ろい紡いだ想いの糸
たぐり寄せたは幻か
現の果てに消ゆるとも
燃えて尚鮮やかに
君想う

         OPM

≪第一幕≫

         所、伊織の家
         質素な作りの家屋である
         戸をたたく音

三嘉  もしもし、どなたかいらっしゃいませんか。
伊織  はい、どちら様で?

         FI 伊織・三嘉登場
         三嘉は旅装束である

三嘉  いや、誠に申し訳ない。こんな夜遅くに。
伊織  いえいえ。ささ、どうぞお坊様。たいしたおもてなしはできませんが…。
三嘉  いやいや、結構。一晩宿をお借りさせてもらうだけで十分。あなたは、と…。
伊織  伊織と申します。
三嘉  伊織さんはここにお一人で?
伊織  …え?いえ、そういうわけでもありませんが…。
三嘉  おや?何か?
伊織  いえ、別に。それよりお坊様はどちらから?
三嘉  各地を転々としているもので。
伊織  修行中、ということですか?
三嘉  え?あ、まぁ、そんなところでしょうか…。
伊織  あ、申し訳ありません。私ったらつい…。お疲れでしょう?こんなところですが今晩はゆっくりとお休みください。
三嘉  ありがとうございます。
伊織  では…。

         伊織退場
         それを確認して急に盗人のように部屋の中を探り始める三嘉
         しかし何もないとわかると座り込んで

三嘉  かーっ、何にもねぇ!とんだはずれくじ引いちまった。やっぱり三軒先のあの家にしておくんだった。俺も勘が鈍ったもんだ。
         
         三嘉再び這いずりまわって漁り始める

三嘉  ちっ、小銭か。ま、無いよりはましか。

       すかさず懐へ隠す

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