ノクチルカ・シンチランス 2
[ノクチルカ・シンチランスⅡ]for "persona blanca" by Takashi Shirakami

〜男として女としてこの世を生きることに苦悩している全ての魂に〜


【登場人物】
①ラブドール・・・・・・・
②A(男・タコ)・・・・・・
③B(サメ)・・・・・・・・
④C(クラゲ・海馬)・・・・


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    観客に適当な暗さで光束の集中したライトを配って置く。
    青いフィルタを付けるか?数は多いほど良い。
    「観るためにお使い下さい」とだけ言って置く。
    

    音楽が始まる。
    ゆっくりと客席が闇に墜ち、波の音が空間を包む。
    額にライトを付け、顔を隠した男が
    まるで人間が入っているかのような包みを
    入れたトランクを運んできて開き、
    包みを舞台に横たえる。
    


 「これでお別れだ。
  お前には随分いい思いをさせてもらったけれど
  僕は部長の娘と結婚する事になったんだ。
  もう、お前と暮らすわけには行かない。
  許してくれ。」

    男去る。

    波の音大きくなり、包みが次第に揺れて、波に攫われる。
    波音満ちて空間を水で覆う。
    くぐもった波音がゆっくりと遠ざかって行く。
    包みは今、ヘリウムの魚が何匹か泳いでいる海の中。
    

    サメ(A)が現れて包みをつっつく。
    サメ、紐を解くと女性とおぼしき身体が現れる。
    それは男性に愛されるために作られた等身大の人形=ラブドール。
    サメ、ラブドールの周りをグルグルと回ってからお尻に噛みつく。
    どうやら美味しくは無かった様子…

サメ
 「ぺっぺっ!お前は人間じゃないな…非道い味だ!何で出来てる…?」
ラブドール
 「私の肌と肉はシリコン・エラストマー…
  内部の骨格はステンレスとFRPで出来ているの。」
サメ
 「何で高分子化合物が…人間の振りをしているんだ。」
ラブドール
 「人間の男性が私を愛してくれるように…抱きしめてくれるように。」

    サメ、じろじろと眺めながら立ち泳ぎで周りを一周して

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