滅びる世界に花束を
滅びる世界に花束を




キャスト

花屋





幕が開く。場所は花屋。カウンターの傍に花屋。女、登場。


花屋 ・・・・・いらっしゃいませ。
女 大きくて、綺麗な花束を一つ。
花屋 何の花を入れればいいですか?
女 えっ・・・と。おまかせしてもいいですか?
花屋 わかりました。


花屋、袖に引っ込む。少しして、大きな花束を抱えて戻ってくる。


花屋 これでよろしいですか?
女 ありがとうございます。(花束を見つめて)綺麗・・・。
花屋 お気に召したようでよかったです。
女 えぇ。あ、おいくらですか?
花屋 結構ですよ。
女 え、でも。
花屋 今お金を払っていただいても使う機会なんてありませんから。
女 ・・・いえ、お払いします。おいくらですか?
花屋 ・・・・・○○円になります。
女 (カウンターに金を置く)はい。
花屋 毎度ありがとうございました。・・・お客さん、早くお帰りになった方がいいんじゃありませんか?
女 え?
花屋 時間、あと少ししかありませんよ?早く花束を渡す方のところへいった方がいいんじゃありませんか?
女 これ、人に渡すわけじゃないんですよ。
花屋 じゃあ、ご自分の?
女 いいえ。
花屋 じゃあ、どこかに捨てるおつもりですか?
女 こんな綺麗な花束を捨てるなんて事しませんよ。・・・これは、世界にあげるんです。
花屋 世界に?
女 えぇ。もうすぐ滅びるこの世界に。
花屋 弔いの花束、ですか。
女 まぁ、そんなところです。
花屋 お客さん、おかしな人ですね。
女 どうしてですか?
花屋 滅びる世界に花束を、なんて。
女 放っておいてくださいよ。それにそういうお花屋さんだって、十分おかしな人ですよ?
花屋 そうですか?
女 えぇ。だってこんな日に普通にお花屋さんをやってるんですから。
花屋 そうですかねぇ?
女 そうですよ。ところで、お花屋さんは今日一緒にいたい方、いらっしゃらないんですか?奥さんとか、恋人とか。
花屋 いませんよ。
女 じゃあ、ご家族は?
花屋 両親はとっくに死んでます。兄弟もいません。
女 そうなんですか。
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