シュレディンガーの推理
シュレディンガーの推理

ユウト 作家
アイ  編集者
シノ  探偵




    
ユウトとアイ、席を挟んで座っている
    
ユウト 「書く……書く、それが作家の仕事、書く、書く、最もPCなら叩く、か? 書くという行為はつらい、スランプがの時は特に。自分の中の、形にならない思いを吐き出すから当然だ。書いても書いてもつまらない言葉しか浮かばない、それは苦しい…もっと苦しいのは、書きたくないものを書くこと。自分の作品を書くのは楽しかった、少なくとも昔は、でも仕事になれば、制約は増える。思い通りにかけないのは当たり前。仕方がない、そう、仕方がないことだ」
   シノ、セリフ中にイン、ユウトの隣で止まる
シノ  「それでいいの、ホントに」
ユウト 「良いも何も、そうするしかない」
シノ  「君がそう思うなら、それでいいんだけどね。ただ」
ユウト 「ただ?」
シノ  「なんでだろ、気に入らないな」

   照明が強くなる
アイ 「ゆうとくん」
ユウト「……」
アイ 「おーい」
ユウト「……」
アイ 「おーい、お茶」
   アイがカップを持ち上げる
ユウト「聞いてるよ」
イ  「なんで無視するの」
ユウト「集中してて」
アイ 「そう」
    十数秒の沈黙
ユウト、PCを叩き続ける
アイ 「ユウトくんてさ」
ユウト「なに」
アイ 「作家としては一流だけど、なんというか」
ユウト「変人?」
アイ 「だよね」
ユウト「……………………違うよ」
アイ 「え?」
ユウト「超、一流」
ア  「え、そっち」
ユウト「書けないだろ、凡人じゃ」
アイ 「ちょっと」
ユウト、ゆっくりとPCを叩くのをやめる
ユウト「……なら、変人でいい」
  アイ、一瞬ユウトを見る
アイ 「あーやだやだ作家って」
ユウト、無言でPCを叩く、アイは黙って紅茶を飲む
アイ 「どう」
ユウト「どうって」
アイ 「進んでる?」
ユウト「そう見える?」
アイ 「ううん」
ユウト「………………」
アイ 「ま、伸び悩んでるしね、最近」
ユウト「去年の?」
アイ 「初版はぼちぼちだけど、あとがね」
ユウト「文庫は?」
アイ 「厳しいかも、二版もでるかどうか」
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