死神と演出家
「死神と演出家」
作:なりた龍翔

ジャンル:コント
時間:5〜10分(概算)
出演人数:2(男2)
出演キャラクター数:2(男2)

キャラクター
・死神(恐らく男):年齢不詳。フード付きのローブを纏っている。
・演出家(男):60代。演出家歴40年のベテラン。


1
某日・夜。演出家の自宅・書斎部屋。上手にデスクと椅子、下手に本棚がある。演出家がスリッパを履いて椅子に座り、その前で死神が床に正座している。その傍には大鎌。
演出家「いやさぁ、別に怒ってるわけじゃないんだよ?」
死神「はい…」
演出家「たださぁ、俺の魂刈りに来た死神が、そんな弱気でどうすんのって話をしてるわけよ。」
死神「はい…」
演出家「君さぁ、自分で言ってたけどさぁ、今まで一度も魂刈れたことないんでしょ?」
死神「はい…」
演出家「分かる?自分で。何が足りてないかちゃんと把握してる?」
死神「あ、いや……ちょっと、その……じ、自分では、わ、分からない、です……」
演出家「あぁそう。じゃちょっと立って一回。」
死神「え?」
演出家「ほら立って立って。(死神を立たせる)あぁそれも持って。(床に置いてあった大鎌を持たせる)で、そこに立って。(少し離れたところに立たせる)」
死神「こ、ここですか?」
演出家「そうそう。(履いていたスリッパをそれぞれ手に持ち)じゃあ今から俺が合図出すから、そしたらさっきと同じように俺に話しかけて。いい?」
死神「あ、わ、分かりました。」
演出家「じゃいくよ。よーい、ハイ!(スリッパ同士を叩いて合図を出す)」
死神「(弱々しい声で)……あ、し、失礼します〜。(演出家に近寄る)」
演出家「……(無言で死神を見ている)」
死神「……あ、や、夜分遅くにすみません〜。わ、わ、わたくし、あの世から参りました、し、死神という者でございまして〜。」
演出家「……(無言で死神を見ている)」
死神「……あ、あの、そ、それでですね。きゅ、急な話で大変恐縮なんですけれども、その〜……魂の方刈らせていただいてもよろしいでsy」
演出家「いいわけねぇだろ!(最後まで聞かず死神の頭をスリッパで叩く)」
死神「あっ!(怯む)」
演出家「いいわけ(叩く)ねぇだろ(叩く)へなちょこが!(叩く)」
死神「す、すみません!」
演出家「ほら帰れ。帰れよ早く!帰れっつってんだろうがこのへなちょこ死神がよぉぉぉ!!」
死神「ひいぃぃ!!(座り込んで怯える)」
間。
演出家「……ハイ。(スリッパ同士を叩いて合図を出す)って言われたらどうすんの?」
死神「あっ演技だったんですね!?よかった…」
演出家「いやよかったじゃなくてさ。もう駄目。ぜんっっっぜんなってない。」
死神「はぁ…」
演出家「俺もう舞台の演出始めて40年になるけどさ、君みたいな覇気のない役者初めて見たよ。」
死神「あっ役者じゃないです…死神なんで。」
演出家「(無視)もう見てらんない。しょうがないから、俺が今から稽古付けてあげるよ。」
死神「け、稽古?」
演出家「そう。君が立派な死神と呼べるレベルになるまで指導してやるから。」
死神「あ、そしたら魂刈ってもよろしいでしょうか?」
演出家「調子に乗んじゃねえ。(死神の頭をスリッパで叩く)ダメだっつってんだろ。」
死神「す、すみません。」
演出家「えーっと、まずねぇ、前説が長い。」
死神「いや前説じゃないです……挨拶なんで。」
演出家「(無視)あんな本題の前にダラダラ喋ってたらお客さん寝ちゃうでしょ。だから簡潔にまとめよう。」
死神「簡潔?」
演出家「『死神だ、お前の魂貰い受ける』。これでいこう。」
死神「はぁ。」
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